取り扱う商品の価格次第で決まる収益システム
前項では不動産は現物投資の一種と説明しましたが、実際に存在する資産に投資することを現物投資と呼びます。現物投資には、金(ゴールド)やプラチナなどの貴金属から、小麦やトウモロコシなどの食料品、原油などの生活必需品まで、ありとあらゆるものが含まれています。商品投資などとも呼ばれます。
現物投資の対象となるものは、不動産や金のようにそのもの自体の量が限られていて、なおかつ腐ることなく長期保有が可能で大幅に値崩れしないものと、小麦やトウモロコシのように天候によって収穫高が変化し、それによって価格も大きく変動するものとの2種類があります。前者はインフレヘッジのための資産として買われることが多いですし、後者は値動きによって利益を上げるための投機的な売買の対象となることが多いです。
景気がどうであれ、確実に金利と元本を回収できる債券投資や、投資先の会社の企業努力次第で高率の配当金が得られる株式投資と異なり、現物投資は、そのもの自体が値上がりしないと利益が出ないため、市況を読むことのできるプロでない限り、初心者はあまり手を出すべきではありません。
現物投資における主要なプレイヤーは業界のプロフェッショナルたちです。彼らは特に食料品において、先物投資と呼ばれる手法で利益を上げています。
先物投資とは、例えば半年後や1年後において、その商品を購入または売却することを約束し、なおかつそのときの価格をあらかじめ決めておくことです。購入の約束をした場合、約束の期日が来たときに商品が約定価格よりも値上がりしていれば、即売却して利益を上げることができます。
逆に商品が約定価格よりも値下がりしていれば、市場価格よりも高い価格で購入しなければなりませんから損失となります。売却の約束をしていたときには、この逆となります。
本来の目的は「相場に翻弄されない」こと
先物取引は、もともとは企業が原材料や資源を購入するときに、相場に翻弄されないために考え出されたものでした。
例えば、コンビニやスーパーに食パンを卸している製パン会社は、商品の価格を簡単に変えることができません。しかし、原材料である小麦の価格は収穫量に左右されるため、昨年は100万円だった小麦価格が、今年は不作で150万円になるということも起こります製品の価格を変えられないのに、原料価格が1.5倍になってしまうと利幅が大きく圧縮されてしまいます。
そのため、あらかじめ今年の小麦を例えば120万円で購入する約束を、小麦業者との間で交わしておくのです。市場の小麦価格は100万円から150万円の幅で上がったり下がったりするかもしれませんが、常に120万円で購入する約束をしておけば、小麦相場に経営が翻弄されることはなくなります。
プロの業者間での取引に使われるため、商品投資、先物投資においては信用取引も多く使われています。信用取引とは、例えば100万円の現金で1000万円の購入注文をすることです。業者間取引においては、売掛金や買掛金による取引が普通ですから、今は手元に100万円しかないが、決済の日までに1000万円が用意できるという事態も想定されます。そのために信用取引がつくられました。
しかし、信用取引の仕組みは少ない賭け金で大きな勝負をするといった投機的な投資にも使うことができます。例えば100万円の現金で1000万円の先物取引をしておいても、その商品が購入期日に値上がりしていて利益が出てしまえば、実際には1000万円の現金を用意する必要がありません。
なおかつ、信用取引では大きな利益を生み出すことができます。例えば、10%の利益が出たときに、手持ちの1000万円だけを投資していたのであれば利益は10万円ですが、信用取引で1000万円の投資をしていれば、利益は100万円です。
こうして信用取引は投機的な取引を好む投資家にも使われるようになりました。一般的に、「レバレッジ」などと書いてあれば、それは信用取引のことです。
しかし、信用取引は投資がうまくいっている間はいいのですが、失敗すると手持ちの現金以上の損失が発生して、借金を抱えることもあります。例えば損失が10%であれば、1000万円の信用取引でも手持ちの現金100万円を失うだけで済みますが、損失が15%であれば、100万円を失うだけでなく、さらに50万円を追加で返済しなければなりません。
レバレッジを利かせた信用取引は、初心者は、よほどの自信がない限り行うべきではあ
りません。