株価は、経済の拡大とともに徐々に上昇していきます。やはり株式投資は「長期投資」で見る必要があるのですが、今回はその理由を数字とともに見ていきます。

長期投資を前提にすれば投資リスクは大幅に減少する

株式投資の基本は「長期投資」です。なぜなら株価というものは、長期的な視点で見れば、世界経済の拡大とともに徐々に上昇していくからです。ですから、「長期投資」を前提とした場合には、購入時よりも売却時に株価が下落している可能性はかなり低くなるでしょう。

 

下記の図表1はアメリカの代表的な株価指数であるダウ平均株価(ダウ工業株30種平均)の推移です。ダウ平均株価自体は1896年に12銘柄で始まったものの、ここでは30銘柄に増えた1928年以降のみを掲載しました。

 

【図表1 ダウ平均株価の推移】

 

1928年から2014年の86年間の歴史の中で、ダウ平均株価は240ドルから1万6000ドルへと約67倍に成長しています。短期的に見れば、ブラックマンデーやリーマン・ショックなどによる急落も経験していますが、長期的に見ると、時間とともに株価が上昇していることが誰の目にも明らかです。この株価の上昇は、アメリカ経済の発展に比例していることは言うまでもありません。

 

仮定の話ですが、もしあなたが、あるいはあなたのお父様が、20年前の1994年にダウ平均株価の指数に連動するインデックスファンド(投資信託)を1万ドル購入していたとしたら、今頃どうなっていたでしょうか。当時の為替レートは現在と同じく1ドル=100円前後だったので100万円で購入したとしましょう。

 

1994年4月のダウ平均株価は約3600ドルで、2014年4月のダウ平均株価は約1万6000ドルですから、20年間で約4.5倍になった計算になります。ということは、当時、1万ドルで購入したファンドは4.5万ドルになっているので、売却した場合は450万円で、差し引き350万円の利益が出ます。

 

20年間のあいだには、リーマン・ショックも含めて2度の大きな株価下落がありましたが、長期的な投資によってそのリスクは防がれているといえるでしょう。20年間で4.5倍とは、複利計算でいうと、年率8%くらいの計算で増えたことになります(単利計算では17.5%)。当時の日本の20年長期国債の金利はおよそ4%程度でしたから、2倍お得だったことになります。

 

もちろん、これは結果論であり、リスクのない国債の年率4%のほうが、株価リスクと為替リスクのあるダウ平均株価連動ファンドの年率8%よりも「投資」として優れているとの見方もあるでしょう。どちらを選ぶかは個人の自由ですが、理解していただきたいのは、リスクをとればリターンが大きくなる可能性が高まることです。

実際に日経平均株価の長期推移を見てみると・・・

次に、下記の図表2の日経平均株価の1949年から現在までの長期的推移を見てみましょう。

 

【図表2 日経平均株価の推移】

 

日経平均株価は、80年代後半のバブル(史上最高値3万8957円)と、その崩壊があったために、いささか変動幅が大きくなっていますが、それでもバブル発生前の80年代前半、つまり30年前から投資を続けていた人にとっては長期的には価格が上昇していることが分かります。

 

ただし、80年代後半から90年代にかけて日経平均株価の指数連動ファンドを購入した人たちにとっては、現在の株価はまだまだ納得のいく水準ではないでしょう。しかし、さらに長期的な視点で考えれば、今後、日本経済が成長すれば、日経平均株価はさらに上昇すると思われます。30年以上のスパンで見れば、購入時の価格よりも株価が上昇している局面は誰にでも必ず訪れているはずです。

 

つまり、長期投資を前提に考えてみれば、株式投資のリスクは大幅に減少するのです。なぜならば、人類が衰退しているのでない限り、経済というものは成長するのが資本主義においては基本であり、経済が成長しているのであれば株価は上がっていくものだからです。

本連載は、2014年7月29日刊行の書籍『インフレ時代の投資入門』から抜粋したものです。その後の税制改正等、最新の内容には対応していない可能性もございますので、あらかじめご了承ください。

インフレ時代の投資入門

インフレ時代の投資入門

杉浦 和也・前野 達志

幻冬舎メディアコンサルティング

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