成熟した個人投資家がほとんどいない「日本株式市場」
株価というものは、10年以下の短期間で見ると、上がったり下がったりを繰り返しているように見えます。しかし、30年以上の長期間で見ると、漸次上昇しているものです。
日本では90年代末の金融改革(金融ビッグバン)まで、個人の株式投資はあまり活発に行われてきませんでした。現在のように手数料の安いネット証券もなく、個人投資家は一部の富裕層に限られ、なおかつインターネットがなかったために情報も少なかったためです。いってみれば投資家教育も投資リテラシーの涵養もほとんど行われてこなかったのです。
また、日本の企業は株式持ち合い制度といって、投資のためではなく、業界のしがらみやしきたりで他社の株を保有することが慣例化していました。企業の資金調達の手段としては株式や社債の発行による直接金融ではなく、銀行からの融資という間接金融が主体で、メインバンク制度と呼ばれる銀行とのなれあいも幅を利かせていました。
このような状況下では、投資市場が育たなかったのです。バブルによる株高とその崩壊後の低迷は、日本には成熟した個人投資家がほとんど存在せず、短期的な利益を狙ったりブームに乗っかったりするだけの投機的な投資家によって市場が荒らされていることを示しています。
日本の株式市場に魅力がないことは、証券取引所における外国会社の上場数を見ても分かります。まっとうな投資家がいないと見られている日本の証券取引所から外国の会社は逃げ出していくばかりです。昔から金融シティであるロンドンやニューヨークに負けるのは仕方がないとしても、最近では同じアジアのシンガポールにも大きく負けています。
また、日本の場合は、前述のようにリーマン・ショック後に通貨供給量を絞ったせいでデフレになり、名目GDPが抑えられてしまったというミスもありました。インフレになればそれに伴って株価も上がりますが、20年以上続くデフレのせいで、株価が上がらないという不幸もあったのです。
いずれにせよ、日本の株式市場は先進国とは思えないほど値動きが激しいことで知られています。その理由としてあげられるのが、日本の将来を真面目に考えている長期投資家が少ないことです。
短期売買で市場が荒され、長期投資が難しい環境に
実は、近年、日本の株式市場では外国人投資家の保有比率がかなり増えています。かつては安定した株主であった銀行が経営再建をするなかで、リスク資産である株式を次々に手放していき、ヘッジファンドをはじめとする外国人投資家がその株を安値で買いあさっていったのです。
現在、日本の株式の保有トップは外国人投資家であり、その次に年金基金や保険をはじめとする国内機関投資家となっています。なお、どんなに多いといっても外国人投資家の保有シェアは30%に満たない程度ですが、毎日の売買高においてはそのシェアの6割以上を外国人投資家が占めています。
つまり、株価が上昇局面であろうとも下降局面であろうとも、短期的な売買を繰り返して絶対リターンを狙う外国のヘッジファンドによって、日本の株式市場が荒らされているのです。また、売買シェアの2割に上る国内の個人投資家も、デイトレードをはじめとする短期売買にやっきになっています。
国の長期安定成長に繋がる成熟した投資家の存在
株とは本来、短期的な値動きの利ざやを狙うものではなく、長期的な企業の成長に投資して、その成功に応じた益をいただくものです。しかし、現状の日本の株式市場は、先物などで激しく売買を繰り返すグローバル・ヘッジファンド、コンピュータを駆使して超高速売買を繰り返すHFT(High Frequency Trading)業者などにもてあそばれています。
日本株式市場は、国内に成熟した投資家を育てることで、アメリカやユーロ圏のように長期的な安定成長を取り戻すことができます。今こそ、国内の機関投資家、個人投資家は長期投資に目を向けるべきときです。