近年話題になっているFXは、レバレッジを利かせることで、少ない資金で大きな利益を出せる一方、リスクも大きくなります。ここでは、ハイリスク・ハイリターンのFXを中心に外貨投資について解説します。

預金にも潜む為替リスク

投資といえば、よく耳にするのがFX(Foreign eXchange)です。FXとは外国為替証拠金取引のことで、外貨投資の一種です。要は、外国の通貨を購入してその値動きによって利益を得ようとするものです。


通貨というものは、株式や債券のように利回りがあるものではありませんので、不動産や金(ゴールド)のような現物投資に近くなります。しかし、外国通貨とはお金でもあるので、その通貨で銀行に預金(外貨預金)をしたり外国の債券を買ったりすることで金利がつくこともあります。


外貨投資のなかでも外貨預金は、まるで銀行の定期預金のように安全なものであるかのようなイメージを持たれていることが多いです。名称に「預金」が入っているので無理もないのですが、実際のところ外貨預金には、円定期預金や日本国債のような安全・安心度はありません。なぜならば、為替リスクが存在するからです。


外貨預金、もしくは外国の国債は、その通貨の中だけで見れば元本が保証されていますし金利も高いように見えます。しかし、満期が来たときに購入時よりも円高になっていれば、円通貨に戻したときに金額が減ってしまいます。


例えば1ドル=100円のときに、100万円を1万ドルに換えて、外貨定期預金にしたとしましょう。金利は毎年2%ですから、円のまま定期預金にしておくよりはよほどいいと思ったからです。5年後に満期が来たときに、1万ドルは1万1000ドルに増えていました。しかし、為替のほうは1ドル=80円の円高になっていたのです。ということは、1万1000ドルを円に戻すと88万円にしかなりません。金利2%の定期預金で運用していたはずなのに、なぜか100万円が88万円に減ってしまったのです。


このように、外貨預金の為替リスクは、多少の金利差を吹き飛ばしてしまうくらい値動きが大きいときもあります。もちろん、逆に1ドル=110円の円安になっていれば、121万円と大きく増えて戻ってくることになりますが、5年後に円高になっているか円安になっているかは予想できません。通貨は発行量も多いですし、そのときどきの世界情勢によっても変化するので、不確定要素が多すぎるのです。


それでも、国の政策によってある程度は予想できます。例えば、現在の日本のように通貨発行量を大幅に増やしてインフレ目標に向けて舵をきっている場合、当然、通貨安になることが予想されます。実際に、日銀の異次元緩和以来、1ドル=85円だった為替相場が1ドル=120円へと大幅な円安になっています。円安を見越して外貨預金や外国の債券を購入した人は結構な利益を得たことでしょう。

信用取引は手持ちの範囲内で

このように、外国為替を使った投資を行うことを外貨投資といい、そのための手段として有名なのがFXです。FXは外国為替証拠金取引というように、わずかな証拠金だけでレバレッジを利かせた信用取引ができることが特徴です。そのため、手持ちの現金の少ないギャンブラーが投機目的で押し寄せて、活況を呈したことがありました。


しかし、すでに述べたように信用取引はギャンブル的な要素があって、リスクの大きな投資になります。もし、外貨投資を始めたいというのであれば、レバレッジを利かせずに手持ちの現金の範囲内で投資することをお勧めします。


ちなみに、たとえ国内の銀行であっても、外貨預金には預金保険機構による保険が利きません。ということは、もし銀行が破綻した場合、元本が1000万円以下であっても外貨預金は保全されない可能性もあります。

本連載は、2014年7月29日刊行の書籍『インフレ時代の投資入門』から抜粋したものです。その後の税制改正等、最新の内容には対応していない可能性もございますので、あらかじめご了承ください。

インフレ時代の投資入門

インフレ時代の投資入門

杉浦 和也・前野 達志

幻冬舎メディアコンサルティング

仮に今、あなたに1000万円の預金があるとしましょう。安倍内閣が掲げるインフレ目標2%が今後毎年達成された場合、その預金の価値は毎年2%、つまり20万円ずつ目減りしていくことになります。預金の金利はもちろんつきますが、現…

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