新型コロナウイルスの感染拡大によって景気後退が叫ばれ、先行き不透明感が増すなか、日本経済はどうなるか、不動産はどう動くのかに注目が集まっている。本連載は、多くの現場に立ち会ってきた「不動産のプロ」である牧野知弘氏の著書『不動産で知る日本のこれから』(祥伝社新書)より一部を抜粋し、不動産を通して日本経済を知るヒントをお届けします。

墓ビルがスラム化してお化け屋敷に?

さて一見すると良いことずくめの墓ビルであるが、実は多くの問題を抱えている。墓地は土地の中に収容されるスタイルであることから、土地が永遠に存続する限りにおいては墓としても永久に存続していくことが前提となる。ところが建物内に収まっている墓ビルは、当たり前のことだが、建物は「永久不滅」でないということを考えなくてはならない。

 

牧野知弘著『不動産で知る日本のこれから』(祥伝社新書)
牧野知弘著『不動産で知る日本のこれから』(祥伝社新書)

墓ビルは建物内を自動化して収容力を高めている。中には1棟で1万基もの収容力を持つビルまであるという。1基100万円だとして1万基で100億円にもなるのだから、おいしいビジネスともいえる。だがこれらも「満杯」になった後はひたすら「管理」していくことが必要になる。一般的には管理費などを徴求する形をとっているが、さて管理費はいつまで取ることができるのだろうか。最初に永代供養としてまとまった費用を徴求できたとしても墓守は永遠である。

 

建物は「有限」であることから、当然のことだが大規模修繕も必要になる。50年、60年先には「建て替え」も必要となるかもしれない。そのときこうした費用はどこから出ていくのだろうか。墓ビルに対しては宗教法人施設の敷地内限定とする、あるいは宗教法人が一定以上関与する法人の所有に限定するなど、規制を施す自治体もあるが、どのようにして建物を維持管理していくのか、まだ不透明な部分も多いのが実態だ。

 

維持費用が途絶え、誰も管理せず、放置されるような墓ビルが将来都内のあちこちに出現したらどうなるのだろうか。墓ビルが「スラム化」してお化け屋敷になるなどという笑えない話にもなりかねないのだ。永遠に存続することができない器に「永久に存在するはずの」お墓を管理していくことの矛盾に、まだ多くの墓ビルが気づいていないのだ。

 

牧野 知弘

オラガ総研 代表取締役

 

不動産で知る日本のこれから

不動産で知る日本のこれから

牧野 知弘

祥伝社新書

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