「新橋」マッカーサー道路が分断したオジサンの街の明暗

新型コロナウイルスの感染拡大によって景気後退が叫ばれ、先行き不透明感が増すなか、日本経済はどうなるか、不動産はどう動くのかに注目が集まっている。本連載は、多くの現場に立ち会ってきた「不動産のプロ」である牧野知弘氏の著書『不動産で知る日本のこれから』(祥伝社新書)より一部を抜粋し、不動産を通して日本経済を知るヒントをお届けします。

新橋は酔っ払いおじさんだけではない

先日、事務所を新橋から有楽町に移した。事務所を拡張しようとして8年間すごしてきた新橋界隈で探したのだが、適当な物件が見つからず、やむなく隣駅の有楽町に移ることになったのだ。

 

新橋はお気に入りの街だった。出張の多い私にとって新橋は、交通の要衝。JR山手線、京浜東北線、上野東京ラインに横須賀線。東京メトロ銀座線。都営地下鉄浅草線、駅名こそ違えど大江戸線に三田線。そしてお台場方面に向かう新交通ゆりかもめ。新幹線に乗るなら東京へも品川にも、まじで近い。羽田空港へは、都営地下鉄浅草線から京浜急行に繫がって乗り換えなし。成田空港だって東京駅から成田エクスプレスでゴーだ。

 

大企業相手の取引をするなら大手町や有楽町まで、すぐ。官庁の集結する霞が関には天気の良い日なら歩いていける。弁護士事務所や会計事務所に御用ならば隣町の虎ノ門へ。

 

マッカーサー道路が新橋の街を南北に分断した。
マッカーサー道路が新橋の街を南北に分断した。

 

ちょっと気の利いたビジネスランチやディナーを楽しみたいなら、汐留の高級ホテル群へ。二次会は銀座にお任せ。銀座はちょっとリッチなお買い物にも超便利。つまりどこに行くにもほぼ徒歩圏というのが、「抜群の利便性」を誇る新橋の強みなのだ。

 

新橋というと、酔っぱらいのおじさんたちがテレビカメラの前でふにゃらけた発言をして顰蹙を買う定番の映像をメディアが繰り返し放送するためか、街としてきちんとした評価がされてこなかったように見える。

 

だがこの街に8年間事務所を構えて思うのは、新橋の「街」としての見事なまでの完成度だ。おじさんたちが集まる飲み屋街の街という印象が強い新橋。この街にある企業はみんな中小企業ばかりかといえば、実は新橋は大中小の企業が見事にミックスされた街なのだ。

 

同じようにおじさんたちが集まる街として、名高いのが同じ山手線沿線でいえば、神田や五反田の名が挙がるが、神田や五反田はほとんどが中小企業で構成される街であるのに対して、新橋は駅周辺はともかくとして西新橋や虎ノ門界隈にかけて意外と大企業の看板が目につく。

 

そのせいなのか、新橋の飲み屋に足を踏み入れると気づくのは飲んだくれているおじさんたちに意外に秩序があることだ。パリッとしたスーツを着こなしたおじさんが、嬉しそうにコップ酒をあおる。その隣りで中小企業のサラリーマンと思 おぼ しきおじさんたちが楽しそうに競馬の予想で大議論をしている。大声をあげて騒ぐ愚か者がいるのは飲み屋街の日常風景だが、殴り合いや警察沙汰になるような事件は、少なくとも8年間界隈を飲み歩いた私は、ほとんど目にしたことがなかった。

 

また、「おじさんだけ」の街というレッテルが貼られた新橋だが、どうもそんなようには見えなかったのは、おそらく私だけではないはずだ。

オラガ総研 株式会社 代表取締役

1959年、アメリカ生まれ。東京大学経済学部卒。ボストンコンサルティンググループを経て、三井不動産に勤務。2006年、J-REIT(不動産投資信託)の日本コマーシャル投資法人を上場。現在は、オラガ総研株式会社代表取締役としてホテルや不動産のアドバイザリーのほか、市場調査や講演活動を展開。主な著書に『空き家問題』『民泊ビジネス』『業界だけが知っている「家・土地」バブル崩壊』など多数。

著者紹介

連載不動産の動きを観察すれば、日本経済がわかる

不動産で知る日本のこれから

不動産で知る日本のこれから

牧野 知弘

祥伝社新書

極地的な上昇を示す地域がある一方で、地方の地価は下がり続けている。高倍率で瞬時に売れるマンションがある一方で、金を出さねば売れない物件もある。いったい日本はどうなっているのか。 「不動産のプロ」であり、多くの…

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