築地は大失敗?「ネズミは駆除ではなく…」ベテランの金言

新型コロナウイルスの感染拡大によって景気後退が叫ばれ、先行き不透明感が増すなか、日本経済はどうなるか、不動産はどう動くのかに注目が集まっている。本連載は、多くの現場に立ち会ってきた「不動産のプロ」である牧野知弘氏の著書『不動産で知る日本のこれから』(祥伝社新書)より一部を抜粋し、不動産を通して日本経済を知るヒントをお届けします。

築地市場のネズミ捕獲大作戦は失敗

豊洲新市場がオープンした。2016年8月に小池百合子都知事が、新市場の土壌汚染問題を理由にオープンを延期して以来、実に2年の時を費やしてのお目見えだ。これに合わせて築地市場もその役割を終える。

 

さて新市場がオープンするにあたり、築地から豊洲への大引っ越し事業が行なわれた。東京都の説明によれば、約900の事業者が引っ越しを行ない、2トントラックで5300台分、市場内での運搬車であるターレットやフォークリフト2600台もその対象になったという。

 

わずか4日間という短い日程で、すべての業者が引っ越す大作戦が展開されることになった。さて、人や荷物が引っ越していく築地で置き去りにされる運命にあるのが、市場に残ったネズミたちだ。築地市場にどのくらいのネズミが生息していたかは明らかではないが、おそらく数万匹とみられる。

 

ネズミの引っ越し先は築地のお隣の繁華街・銀座なのか。
ネズミの引っ越し先は築地のお隣の繁華街・銀座なのか。

 

ネズミにとって市場は格好の住処だ。魚の切り落としや油脂、水産加工品、果実の切れ端など大量に出るごみは、ネズミたちに十分満足できる生活環境を提供してきた。特に市場に多いとされるのがドブネズミで、彼らは水に強く、水を大量に使う市場でも生きていける、という。その住処が奪われるネズミたちが市場の引っ越しとともに、大量に築地から移動を始めることが危惧されたのだ。

 

これに対して、市場側も、出ていくネズミたちをせん滅しようと躍起になった。計4回にわたって4万枚の粘着シート、大量の殺鼠剤の散布、捕獲籠や配管内の防鼠ブラシなどあの手この手を尽くして、市場からネズミを出さない作戦を繰り広げたのだ。

 

市場を抜け出したネズミたちが、築地やその隣りにある日本を代表する繁華街・銀座に逃げ込む可能性が高いからだ。

 

ネズミは予知能力が高いといわれる。昔から、沈没する船では出航前に船内にいたネズミたちが逃げ出すといわれた。映画『タイタニック』でも満足顔で船に乗り込む乗客たちをしり目に、大量のネズミたちがロープをつたって船から逃げ出すシーンがある。

 

また、地震が起こる前に、ネズミが動揺して逃げるまわることも知られている。市場の移転を予知したネズミたちはすでに移動を開始していたのかもしれない。築地市場にいるネズミを一網打尽にできたかといえば、担当者の意気込みとは裏腹に、おそらくそれは無理難題というものだろう。

オラガ総研 株式会社 代表取締役

1959年、アメリカ生まれ。東京大学経済学部卒。ボストンコンサルティンググループを経て、三井不動産に勤務。2006年、J-REIT(不動産投資信託)の日本コマーシャル投資法人を上場。現在は、オラガ総研株式会社代表取締役としてホテルや不動産のアドバイザリーのほか、市場調査や講演活動を展開。主な著書に『空き家問題』『民泊ビジネス』『業界だけが知っている「家・土地」バブル崩壊』など多数。

著者紹介

連載不動産の動きを観察すれば、日本経済がわかる

不動産で知る日本のこれから

不動産で知る日本のこれから

牧野 知弘

祥伝社新書

極地的な上昇を示す地域がある一方で、地方の地価は下がり続けている。高倍率で瞬時に売れるマンションがある一方で、金を出さねば売れない物件もある。いったい日本はどうなっているのか。 「不動産のプロ」であり、多くの…

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