どこの街に住むかの選択は、仕事やプライベートに大きな影響を与える。さらに家賃が家計支出の大きなウェイトを占めることを考えると、居住地は資産形成までも左右するといえる。総合的に考えて住みやすい街はどこなのだろうか? 20代後半から30代前半の単身会社員の住み心地を考えていこう。今回取り上げるのは、小田急電鉄小田原線「喜多見」。

世田谷区だけど、家賃水準は狛江市を下回る

駅周辺の家賃水準をみていきましょう。駅から徒歩10分圏内の1Kの平均家賃は5.11万4円、11分を超えると4.91万円(図表1)。同条件の東京都世田谷区の家賃水準は、駅10分圏内で7.02万円、11分を超えると6.34万円。「喜多見」駅周辺の平均家賃は、世田谷区の水準よりもかなりリーズナブルといえるでしょう。

 

出所:公益社団法人全国宅地建物取引業協会連合 会調べ(6月17日時点) ※単位は万円
[図表1]「喜多見」駅周辺の平均家賃 出所:公益社団法人全国宅地建物取引業協会連合
会調べ(6月17日時点)
※単位は万円

 

厚生労働省が発表している「賃金構造基本統計調査」によると、都内勤務の男性会社員の平均月給は、25~29歳で27.5万円、30~34歳で34.1万円です(図表2)。企業規模によって平均給与は異なりますが、そこから住民税や所得税などを差し引いた手取り額の1/3以内を適正家賃と考えると、都内勤務20代後半は6.9万円、都内勤務30代前半は8.5万円です。

 

出所:厚生労働省「賃金構造基本統計調査 」 ※10名以上の企業対象 ※数値は所定内給与額 ※単位は万円
[図表2]20代後半、30代前半の平均月給 出所:厚生労働省「賃金構造基本統計調査 」
※10名以上の企業対象
※数値は所定内給与額
※単位は万円

 

 

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「喜多見」駅周辺は、20代会社員でも十分に検討できる家賃水準です。大手ポータルサイトで検索すると、20代適正家賃内で駅チカ10分圏内の単身者向け物件の数は豊富。築年数は30年前後のものが多く、築5年程度の築浅物件は少なめ。新築の供給数の多いエリアではないので、築年数にこだわる場合は、選択肢が限られる傾向にあります。

 

交通面はどうでしょうか。「喜多見」から「新宿」は、各駅停車で30分。途中「成城学園前」で通勤急行に乗り換えると17分です(所要時間は平日8時に「喜多見」駅を出発した場合の目安)。小田急小田原線の混雑率は160%弱。複々線化とダイヤ改正で、その数値は著しく減少しています。しかし速達列車になるほど混雑率は高めで、かなりの圧迫感を覚える場合もあります。

 

買い物環境ははどうでしょうか。駅周辺には「サミットストア」「業務スーパー」などスーパーのほか、大手ドラッグストアチェーンもあります。日常品を揃えるのに必要最低限の充実度。南口を出た先に走る世田谷通りに出れば、「ヤマダ電気」や「ニトリ」もあり重宝するでしょう。

 

飲食店はどうでしょうか。駅周辺にはファストフード店が1店、牛丼店が1店、定食店が1店。世田谷通りに出ると、ファミレスや回転ずしのチェーン店があります。選択肢は多くないので、外食がメインの人は少々不満を感じるポイントかもしれません。

 

高級住宅地の隣で世田谷区というブランドを持ちあわせていながら、影の薄い「喜多見」。住まいを問われると、思わず「成城」と言ってしまうのもうなづける立地です。とはいえ、家賃水準は十分魅力的。隣の「狛江」駅の徒歩10分圏内1Kの平均家賃は5.78万円と、「世田谷区」でありながら「狛江市」の水準を下回るという逆転現象が起きています。住む街のブランドに何ら価値を感じない人であれば、天国のような住み心地なのではないでしょうか。

 

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