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東京株式市場は、3月16日を底値に急速なリバウンド局面となったが、リターン・リバーサル、ハイ・ボラティリティなど、一般的に相場反転時に有効と言われる手法が必ずしも機能していない。これは、新型コロナウイルスによる社会・経済の構造的変化を映したものではないか。世のなかが変わるとすれば、投資も既存の経験則に囚われることなく、発想を転換する必要がありそうだ。
急速なリバウンド:一般的な手法は上手く機能せず
現在までのところ、2020年におけるTOPIXの高値日は1月20日、安値日は3月16日である。その後のリバウンドで、6月8日までにTOPIXは31.9%上昇し、下げ幅の77.7%を回復した。下落時も、戻り局面も、そのスピードの速さは歴史に残るものだろう。下げ相場の要因が現代人の多くが経験したことのない世界に広がる感染症であり、反発も過去に例のない規模での財政・金融政策が背景のため、どうやら従来の常識はあまり役に立たないらしい。
その象徴が、リターン・リバーサルが機能しないことに示されている。一般に大幅下落後の市場では、株価反転期において、売り叩かれた業種・銘柄のリバウンドがマーケットを先導するケースは少なくない。その場合、東証業種別指数に関し、グラフ上の横軸に下落期の騰落率、縦軸に反発期の騰落率をとると、一次回帰直線は右方下がりとなるはずだ。足下のマーケットでは、辛うじて一次回帰直線には傾きがあるものの、決定係数(R2)は0.17に過ぎず、統計上の相関関係は認められない(図表1)。
同様のことがボラティリティにも言える。株価の急速な上昇局面では、高いボラティリティの業種・銘柄が先導する例が多く見られ、同じくグラフ上の横軸にボラティリティ、縦軸に騰落率を置くと、一次回帰直線は右肩上がりになる傾向がある。しかし、今回のケースでは、一次回帰直線には傾きがなく、R2は0.02と完全無相関を示す状況だ(図表2)。つまり、高いボラティリティのリスクを採っても、必ずしも好いリターンを得ることができていないわけだ。
市場の動き:「ポスト・コロナ」の社会・経済の変化を映す?
リターン・リバーサルや高ボラティリティが機能しなかった背景には、新型コロナウイルスにより、社会及び経済が大きく変化する可能性がある。つまり、コロナ前とコロナ後では違う世のなかになることを市場が織り込んでいるのだろう。一言で表現すれば、「リアルからバーチャルへの転換」である。この流れに乗っている業種や銘柄の物色が継続している結果、流れに乗れない業種・銘柄は従来の基準で割安と評価されても放置されているのではないか。
もちろん、人が生きる社会である以上、全てが「バーチャル」に置き換わることはない。ただし、従来から在宅ワークや遠隔診療・遠隔授業は技術的には確立されていたものの、社会にそれを受け入れる準備が整っていなかった。それが、新型コロナウイルスにより、否応なく社会の側が適応を迫られているである。
こうした環境の激変は、投資に関する発想の転換を迫るものではないか。業種や銘柄の選別に当たっては、従来の常識に囚われない柔軟性が求められそうだ。
※当レポートの閲覧に当たっては【ご注意】をご参照ください(見当たらない場合は関連記事『発想の転換を迫るマーケット』を参照)。
(2020年6月12日)
市川 眞一
ピクテ投信投資顧問株式会社 シニア・フェロー
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