新型コロナウイルスの感染拡大によって景気後退が叫ばれ、先行き不透明感が増すなか、日本経済はどうなるか、不動産はどう動くのかに注目が集まっている。本連載は、多くの現場に立ち会ってきた「不動産のプロ」である牧野知弘氏の著書『不動産で知る日本のこれから』(祥伝社新書)より一部を抜粋し、不動産を通して日本経済を知るヒントをお届けします。

会社でのデスクワークは消えてなくなる

彼らが好んで買う都心のマンションは、いかほどのモノだろうか。不動産経済研究所の発表によれば、2019年の東京都区部において供給された新築マンションの平均価格は7286万円。1㎡あたりにすれば112万円だ。つまり62.5㎡の住戸面積で7000万円を超える。62.5㎡といえば2LDKクラス。この狭いマンションでは夫婦と、子供はせめて1人程度が暮らすのがやっとであろう。この部屋が将来にわたって資産価値を保ち続けると、彼らは信じているのだろうか。

 

そうまでして彼らは「会社ファースト」の人生選択を行なっているが、その根底には会社には朝9時に出勤して午後5時になれば帰宅する、という昭和時代の「働き方」がベースになっている。いっぽうで今、人々の働き方は、何も政府が提唱する「働き方改革」を待つまでもなく、大きくその形態が変わりつつあるのだ。

 

Windows95の登場は人々の働き方に多大な影響をもたらした。社員一人一人の机の上にパソコンが設置され、ネットで世界中と繫 つながりながら仕事を行なうスタイルは、まさに革命的といってよい「働き方改革」であった。そしてこれからの社会では通信モバイルの発達やAI技術の進化によって、会社における多くの業務形態がふたたび大きく変わるであろうことが容易に予測できる。

 

会社でのデスクワークは、そのほとんどがこうした新しい技術進歩によって代替され、人々の働き方に大きな影響を与えることになる。この革命は会社の構造そのものを変えるほどのインパクトを与えることになるのだ。

 

 

つまり、多くの会社が経理や財務、総務、人事といったスタッフ機能を持たなくなり、一部の職種を除いてオフィスに社員が集まるという形態が急速になくなっていくだろう。

 

私の知り合いが経営するあるソフトウェア会社は社員が30名ほどだが、基本的に社員の働くスペースがない会社だ。仕事のほとんどが通信で結ばれ、それぞれが自分の能力の範囲で仕事をするので、社員が一緒の事務所に集って机を並べるということがないのだそうだ。その結果、社員の住所は全国に広範に散らばっていて、中には一度も顔を合わせたことのない社員まで出現しているという。

 

今では社員一人一人に机1つを与えないフリーアドレス制を導入する会社が増えているが、この会社はそこを通り越して、社員間を繫げるのはネット上のみにして、各社員が好きなときに好きなスタイルで仕事をするビジネス形態へと進化しているのだ。

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不動産で知る日本のこれから

不動産で知る日本のこれから

牧野 知弘

祥伝社新書

極地的な上昇を示す地域がある一方で、地方の地価は下がり続けている。高倍率で瞬時に売れるマンションがある一方で、金を出さねば売れない物件もある。いったい日本はどうなっているのか。 「不動産のプロ」であり、多くの…

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