新型コロナウイルスの感染拡大によって景気後退が叫ばれ、先行き不透明感が増すなか、日本経済はどうなるか、不動産はどう動くのかに注目が集まっている。本連載は、多くの現場に立ち会ってきた「不動産のプロ」である牧野知弘氏の著書『不動産で知る日本のこれから』(祥伝社新書)より一部を抜粋し、不動産を通して日本経済を知るヒントをお届けします。

2030年、東京の「集客力」は限界を迎える

東京の住宅事情は、ここ20年ほどの間にずいぶん変わった。その原因は、人々のライフスタイルの変化と、都心部での住宅供給力のアップだ。

 

男女雇用機会均等法の改正による夫婦共働きの進展は、住宅マーケットにおいては世帯における住宅購買力を一気に高める効果があった。これまでの主流だった専業主婦世帯では、住宅ローンは夫が返済するもの。夫の収入の範囲内でしかローンは組みようがなかった。だがこれに妻の収入が加わることによって、今まででは考えられなかった高額の住宅ローンが組めるようになった。

 

また、1990年代の後半以降、超円高などを原因として産業構造が変化。東京の湾岸部にあった工場や倉庫などが次々に撤退したことで、デベロッパーやゼネコンがこうした土地にタワーマンションなどを建設分譲、都心部における住宅の供給力を大幅に高めることができるようになった。

 

まもなく東京で「街間格差」時代が到来する。
まもなく東京で「街間格差」時代が到来する。

 

夫婦共働き世帯では、夫婦ともに会社に通勤しやすい街に住むのが最優先課題。住宅選びで最も重視されるのは、住環境というよりも交通利便性ということになった。郊外住宅地の人気は薄れ、代わってJRなどの主要路線のターミナル駅が人気を呼ぶようになった。

 

元号が改まり、東京は五輪という宴を迎える。ではこうした状況は五輪後も続いていくのだろうか。このことに答えるためには、これからの東京の不動産をめぐる環境がどのように変化するのかを見極める必要がある。

 

人が集まる街は不動産が上がる。これは不動産を業としている人ならば誰しもが実感することだ。

 

だが、東京都の発表によれば東京都の人口はおおむね2025年ごろがピークでその後は減少を始めるという。都区部に限ってみても2030年頃から人口は減少する。エリアにもよるが、これまで一方的に人を集めてきた東京の「集客力」はそろそろ限界を迎える。その原因は住民の高齢化だ。

 

東京都の高齢者人口推計によれば、2017年9月15日の時点での都区部における65歳以上の高齢者人口は201万1000人と初めて200万人の大台を超えた。この数値は20年前の約1.7倍に及ぶ。しかもこのうち75歳以上の後期高齢者の人口は101万人。なんと高齢者の半数以上が75歳以上の後期高齢者だ。

 

時間軸を、あと10年から20年先へと引き伸ばしてみよう。都区部において大量の相続が発生することが容易に予測できる。そして相続人の多くはすでに家を所有している世代。親の家に住む人もいるだろうが、これを賃貸や売却に出す人が多いはずだ。

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