「蛇口からうっすらと赤茶色の水が」医療現場…建物も限界?

東京大学を卒業した杉山宗志氏は、福島県いわき市を中心に展開する「ときわ会グループ」にて、病院の事務方として働いている。医療現場の現状に大きな注目が集まるなか、現場からの声を聞いた。※「医師×お金」の総特集。GGO For Doctorはコチラ

40年、30年超えの病院を襲う「経年劣化」の諸問題

少しずつジメジメした日が多くなり、梅雨に突入し始めていることを感じます。緊急事態宣言も解除され、少しずつ外出の機会も増えていますが、季節の変わり目で体調を崩さないよう、十分に注意していただきたいと思います。

 

さて、病院の運営にまつわるテーマということで、今回は、病院の建物に関することを紹介します。

 

筆者が勤務する病院は、もともとは市立の病院でした。現在の病院は、増改築が繰り返された結果、中央棟、手術棟、北棟、透析センターと、大きく4つの建物にわかれた構成になっています。

 

透析センターは9年前(東日本大震災直後)に建てられたものですが、最も古い中央棟は築44年を迎えようとしており、手術棟も40年超、北棟も30年超の建物です。かなり年季が入っています。ちなみに「減価償却資産の耐用年数等に関する省令」で定めている耐用年数は、(鉄骨)鉄筋コンクリート造の病院用で39年です。これだけの年数ですので、様々なところでガタがきています。

 

十分にメンテナンスができていなかったことも原因の1つです。建物の外壁や配管の手入れを、隠れた場所だからと後回しにしていると、結果的に患者さんにも関わる不具合が出てきてしまいます。建物管理の専門家がいるわけではありません。手探りで、何とか上手く使っていくしかありません。

 

特に手を焼いているのは、雨漏りや水道から出る赤錆、空調の効きの悪さなどです。毎年、夏にかかる時期には雨漏りが心配です。院内のあちこちから雨漏りの報告が上がるようになります。

 

足の悪い患者さんが多く、滑らないよう配慮しなければなりませんし、車椅子での移動にも支障があります。雨漏りから広がる天井のカビも問題です。病院建築の天井裏には様々な配管が通っていることも相まって、所々でカビが生えてしまいます。衛生上良くないですし、患者さんはベッドで横になっていることが多く天井を見る時間が長くなるため、どうしても目に入ります。すぐに補修等の対応をしますが、対症療法的に済ませるしかない状況です。

 

また、赤錆の問題もあります。配管が古くなってしまい、蛇口からうっすらと赤茶色になった水が出てきてしまうことがあります。検査をして問題がないことは念入りに確認していますが、決して良い状態とはいえません。清潔感にも直結します。一部の配管を取り替えれば済むという話ではなく、大掛かりな工事が必要なものです。

 

空調が効かない部屋も散見されます。経年劣化で効率が落ちてきているだけでなく、部屋の用途が変わってしまい、既存の空調では不十分になってしまったなどの理由も挙げられます。体温調節が難しい患者さんもいますので、後回しにはできない問題です。

 

身体と一緒で病院にもガタが来る
身体と一緒で病院にもガタがくる

建て替えに数十億必要…環境改善の手段はないのか

こういった状況を定期的に現場で確認するために、院内ラウンドと称し、院長や看護部長、総務課長が中心となり、院内巡回を毎週行うことを、1年ほど前に始めました。大掛かりな工事等を想定した確認と合わせ、患者さんにとって少しでも良い環境にするため、小さなことでも何かできることはないか、改善できる業務はないかと、探し回る場でもあります。

 

雰囲気の改善に大きく役立つことの一つは、窓の掃除です。些細で当然なことと思われるでしょうが、院内ラウンドを開始する前までは、汚れたまま放置されてしまうことが多かったのです。

 

掃除が入り見違えるように雰囲気が良くなると、患者さんからも良くなったとの声がすぐに届きました。病院のすぐ脇には池があり、周囲には植物も多いため、すぐに汚れてしまいます。綺麗な状態を保ちたいのですが、病院全体の窓をすべて掃除するには350万円ほどかかってしまいます。印象に大きく影響を与えそうな窓を選び、時期をわけて行うよう計画しています。

 

ラウンドする度に新たな発見がありますが、現場のスタッフは目の前の患者さんの対応に追われてしまい、手を加えた方が良い部分でも環境化し、そのままにしてしまっていることが多いようです。患者さんの目線に立ち、環境を観察する眼を、スタッフ全体で地道に磨いていくことが課題です。このような眼は、感染症予防の観点からも有用なはずです。

 

小さな取り組みは継続しつつ、どうしても考える必要があるのは建て替えの話です。現在のところ、建て替えるとなると、百億とまではかからないにせよ、数十億は必要との試算です。やりくりをどうするか、悩みは尽きません。小さな取り組みを積み重ね、建て替えていく際の課題を集める期間として、現状を捉えています。

 

地域に必要とされる医療を実現するために、診療のスタイルを変えていくことは必須です。部屋の使い方が大きく変わることやメンテナンスのため大きく手をかけなければならない場面は当然出てくるものとし、完成させることなく移り変わっていくことを前提とした設計の与条件を考えていくことになりそうです。

 

 

杉山 宗志

ときわ会グループ

 

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ときわ会グループ 

静岡県伊豆出身。静岡県立韮山高等学校、東京大学工学部建築学科卒業、同大学院工学系研究科建築学専攻修士課程終了。東京大学エグゼクティブ・マネジメント・プログラム修了。東京大学在学中は運動会剣道部に所属。現在は福島県いわき市を中心に医療、介護、教育を軸に事業展開する『ときわ会』にて勤務。

著者紹介

医療と社会の間に生じる諸問題をガバナンスという視点から研究し、その成果を社会に発信していく特定非営利活動法人「医療ガバナンス研究所」による学会。「官でない公」を体現する次世代の研究者の育成を目的とし、全国の医療従事者が会員として名を連ねている。

著者紹介

連載医療従事者が本音で語る「日本社会」の現状~GGO For Doctor

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