日本では年間約130万人の方が亡くなっています。つまり相続税の課税対象になろうが、なかろうが、130万通りの相続が発生しているのです。お金が絡むと、人はとんでもない行動にでるもの。トラブルに巻き込まれないためにも、実際のトラブル事例から対策を学ぶことが大切です。今回は、編集部に届いた事例のなかから、再婚に絡む相続の事例をご紹介。円満相続税理士法人の橘慶太税理士に解説いただきました。

両親は理想の夫婦だったが…母の急逝で父は抜け殻に

「理想の夫婦、でしたね」

 

自分の親について、40代のA子さんはこう語ります。ずっと経営者になるのが夢だったA子さんの父は、30歳を前に脱サラ。365日、休まずに働いたといいます。そんな父を支えたのが、母でした。

 

「びっくりしたわよ。突然『会社を辞めて起業する』と宣言したと思ったら、『だから結婚してほしい』なんていってくるもんだから」と、当時を振り返り、大笑いする母。結局、母は父からのプロポーズを受け入れて結婚。以来、二人三脚でがんばってきました。

 

母は主に会社の総務や経理を担当。一方で、A子さんの「お母さん」としても、日々奮闘してました。「親として、手を抜いたところを見たところがない」とA子さん。毎日完璧なお弁当を作ってくれたり、苦手だった数学を丁寧に教えてくれたり……。会社も忙しいはずなのに、色々と気にかけてくれる母を、A子さんは心から尊敬していました。

 

「家庭に仕事を持ち込むのはNG」がモットーだった父は、家では常にひょうきんな姿を見せてくれ、母とA子さんを笑わせてくれました。もちろん、小さな夫婦喧嘩はあったものの、父と母の姿で思い浮かぶのは、常に笑顔のふたりだといいます。

 

そんな幸せな家族でしたが、今から10年前、突然の悲劇が訪れます。母に大きな腫瘍が見つかり、手遅れだというのです。当時を振り返り、「最期まで、自分のことよりも残される家族の心配ばかりしていた母のことが忘れられない」とA子さん。まだ60代という若さでこの世を去ってしまいました。

 

「心配だったのは、父です。それまで、仕事でも家庭でも、常に父と母は一緒でしたから。母が亡くなったあとの、父の落胆ぶりは、言葉にできないものでした」

 

何をしてても上の空。いつもひょうきんで、周囲を笑わせていた父から、笑顔が消えてしまいました。会社の経営からも退き、自宅に引きこりがちになってしまったのです。

 

 

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※本記事は、編集部に届いた相続に関する経験談をもとに構成しています。個人情報保護の観点で、家族構成や居住地などを変えています。

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