日本では年間約130万人の方が亡くなっています。つまり相続税の課税対象になろうが、なかろうが、130万通りの相続が発生しているのです。お金が絡むと、人はとんでもない行動にでるもの。トラブルに巻き込まれないためにも、実際のトラブル事例から対策を学ぶことが大切です。今回は、編集部に届いた事例のなかから、遺言書にまつわる相続トラブル事例をご紹介。円満相続税理士法人の橘慶太税理士に解説いただきました。

長男は妻から「相続の煩わしさ」を聞いて……

[登場人物]
Aさん…父。長男のBさん家族と同居している
Bさん…長男。父のAさんと同居している
C子さん…長女。既婚
D子さん…次女。既婚
Eさん…次男。既婚

 

都内在住、40代のBさん。3年前に母を亡くしたのを機に、家族で実家に戻り、父と同居するようになりました。当初、父と妻が仲良くやっていけるか、心配だったというBさん。しかしそんな思いも杞憂に終わり、母を亡くして落ち込んでいた父も、すっかり元気に。楽しい同居生活が続いていました。

 

そんなBさんは、長女C子さん、次女D子さん、次男Eさんの4人きょうだいの長男。きょうだいは昔から仲が良く……ということはなく、子どもの頃から喧嘩が絶えなかったといいます。

 

原因は、「お兄ちゃんのほうがケーキが大きくてズルい!」とか「お母さん、Eばかり甘やかしてズルい!」とか、とても些細なこと。4人とも年が近いこともあり、どこかお互いをライバル視するところがあったのでしょう。絶対、ほかのきょうだいに負けたくないと、事あるごとに衝突していたのです。

 

大人になってからも、きょうだいが集まれば、口喧嘩がはじまりました。「自分のほうがいい会社で働いている」とか、「自分のほうがいい家に住んでいる」とか、ほかのきょうだいより優れている、というひと言から、徐々にヒートアップ。最終的に大喧嘩となるというのがお決まりのパターンでした。

 

そのため、お互いが結婚し家庭をもつようになってからは、お盆とお正月に顔を合わせる程度といった、必要最低限の付き合いしかしないようになったといいます。

 

そんなある日のこと。Bさんの妻の父が亡くなりました。妻の実家は地方にあるため、Bさん家族だけ葬儀で帰省。妻だけを残して、Bさんと子どもたちはひと足先に東京の自宅に戻りました。

 

葬儀から1週間後、帰宅したBさんの妻はげっそりしていました。

 

Bさん「おかえり。大変だったね」

 

Bさん妻「別に葬儀やらで大変だったわけじゃないのよ、聞いてよ!」

 

Bさんの妻は堰を切ったかのように、話し出しました。大変だったのはBさんの父の相続のこと。Bさんの妻は3人きょうだい。遺産分割をどうするのか、話が揉めに揉めたというのです。

 

Bさん妻「まだどう分けるか、決まってないのよ。だから今月末、また実家のほうに戻るわね、ごめんなさい」

 

Bさん「でも、きょうだいの仲、良かっただろう?」

 

Bさん妻「人って、お金で変わるのよ。よくいわれることだけど、今回のことでよくわかったわ」

 

Bさん「そんなもんかね」

 

Bさん妻「あなたのきょうだい、仲良くないんだから、今のうちにちゃんとしておいたほうがいいわよ」

 

Bさん「でも遺産なんて、この家くらいだぞ、きっと」

 

Bさん妻「甘いわ。うちだって、遺産額なんて大したことないのよ。でも1円でも自分のものにって……。とにかく遺産が多いとか、少ないとか、関係ないの」

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※本記事は、編集部に届いた相続に関する経験談をもとに構成しています。個人情報保護の観点で、家族構成や居住地などを変えています。

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