日本では年間約130万人の方が亡くなっています。つまり相続税の課税対象になろうが、なかろうが、130万通りの相続が発生しているのです。お金が絡むと、人はとんでもない行動にでるもの。トラブルに巻き込まれないためにも、実際のトラブル事例から対策を学ぶことが大切です。今回は、編集部に届いた事例のなかから、遺言書にまつわるトラブルについて、相続を専門とする円満相続税理士法人の桑田悠子税理士が解説します。

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入退院を繰り返す父に、長男が心配を募らせる

<登場人物>

高橋元也…父

高橋一也…元也の長男。元也と実家で同居している

高橋次也…元也の次男

長谷川和美…元也の長女

※氏名はすべて仮名です。

 

家族はかけがえのないもの、絶対的に信頼できるもの。多くの人はそう思っているでしょう。しかし相続となると、それが幻想だったと言わざるを得ないような状況に陥る場合があります。

 

高橋一也さん(仮名)もそのひとり。高橋さんは、三人兄妹の長男。下に2つ離れた弟と、さらに3つ離れた妹がいます。幼少の頃は、近所でも仲の良い兄妹で有名でしたが、それぞれが結婚し、家庭を持ったころからでしょうか。それぞれ家庭の事情というものがあります。子供の頃には感じなかった距離を感じるようになったといいます。

 

「お互い家庭をもってから、顔を合わす機会が減ってしまって。会うのは、盆と正月くらいになってしまいました」

 

そんな一也さんには最近、ちょっとした気がかりがあるといいます。父の元也さんの体調がすぐれず、入退院を繰り返しているのです。万が一のことを考えるのは不謹慎だと分かっています。しかし、そのときのことを考えると、気持ちが重くなるといいます。

 

「もし父が亡くなったら……絶対、兄妹同士、揉めると思うんです。遺産で大きいのは父と同居している実家です。もし分けるとなると、私たちの住むところはなくなってしまいます」

 

次也さんは理解してくれると思うと一也さん。しかし問題は長女の和美さん。親は何につけても兄妹平等がポリシーでしたが、和美さんは少しでも自分の取り分を多くしようと喚き散らすこともしばしば。相続が発生したら、実家は売って、そのうえで自分の取り分を少しでも多くしようと画策するに違いないのです。欲が強く、我がまま……和美さんの性格は昔から変わらないのです。

 

仲のいい家族であっても相続の時に揉める、そんな話も耳にしたことがありました。だからこそ、父には遺言書を準備しておいてほしい、そう考えるようになったのです。しかし生きている父に、万が一のことがあったらなど、言いづらいものです。

 

一也さんが悶々としているのを、父の元也さんは悟ったのでしょうか。ある日、「一也には言っておきたいことある」と父が言いました。

 

「最近は体が効かなくなってきたから、万が一のことを考えて遺言書を作っておいた。母さんの引き出し(仏壇の引き出し)に入れておいたから、そこに記されている通り、兄妹で遺産を分けなさい」

 

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※本記事は、編集部に届いた相続に関する経験談をもとに構成しています。個人情報保護の観点で、家族構成や居住地などを変えています。

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