母の相続を機に「兄と妹」に争いが勃発
【登場人物】
・父Aさん(数年前に他界)
・母B子さん
・長男Cさん(兄)
・長女D子さん(妹)
【父Aさんの相続時の遺産分割】
母B子さん:5000万円+自宅
長男Cさん:4000万円
長女D子さん:1000万円
【母B子さんの遺産の内訳】
・自宅(評価額3000万円)
・貯金(4,000万円)
父Aさんは数年前に他界し、その際の遺産相続は母B子さんが取り持ったことでスムーズに進みました。しかし、母B子さんが亡くなった今、長男Cさんと長女D子さんの間には不穏な空気が流れてしまっています。一度も実家を出たことのない長男Cさんと、就職と同時に家を出て、今や家庭を持つキャリアウーマンの長女D子さん。元々仲良しというわけではないにしろ、喧嘩は少ない兄妹でした。
しかし、長女D子さんの「実家はともかく、貯金はすべて私が相続する」という言葉をきっかけに、二人は真っ向から対立してしまいます。
長男の主張:「親の面倒を見たのは、兄であるわたし」
「父はまさに『昭和のビジネスマン』という感じの人で、一緒に遊んだ記憶はほとんどありません。ただ、ひたむきに仕事をする背中には憧れていました」
そんな父を支える母のことも尊敬していたそうです。また、父は大会社の重役を長年勤めていて、お金に不自由することもありませんでした。高校や大学にも通わせてもらい、両親には感謝していると言います。
大学卒業後は無事就職し、Cさんも一人の社会人として歩みを進めました。しかし一向に“良い人”と巡り合うことはなく、恋人を家族に紹介することもほとんどありませんでした。
「別に結婚したくない、というわけではないんです。ただ、なんとなくタイミングがなかったというか……無理にすることはないかな、という思いが強かったです」
また勤めている会社が実家から近かったため、転居する必要にも迫られませんでした。加えてCさんは引きこもっているわけでもなく、稼ぎのうち一定の割合を常に実家に納めていたのです。
「だから、当時は引け目とかそういったものはあまり感じませんでした。ですが、両親はやはり時代柄か『結婚せず実家暮らしだなんて半人前だ』という考え方が強かったようです」
そうは言っても、小言をいわれるくらいで家から追い出されるようなことはなかったそうです。
父が亡くなってからは、母の面倒は必然的にCさんが見るようになりました。それを見越して、父の遺産は母が1/2、兄Cさんが2/5、妹D子さんが1/10を相続。その取り決めの際には、特に揉めごとは起きなかったといいます。
「母は健康でしたが、年も年なんで定期的に病院に行くことが多くて。もちろん送迎などは手伝っていましたよ」
しかし高齢の母は次第に足腰が弱くなっていきました。最後には自ら望んで介護施設に入所したそうです。その際の手続きや施設探しには、Cさんももちろん尽力しました。介護施設へのお見舞いなども頻繁に行い、差し入れも欠かさなかったとCさんは振り返ります。
「実家は今まさに僕が住んでいるので、お金に換えることなんてできません」
Cさんは静かに首を振りました。
「母の面倒だって長らく見てきたんです。それなのに、現金が一銭も入らないなんて、さすがにおかしいと思いませんか?」
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