日本では年間約130万人の方が亡くなっています。つまり相続税の課税対象になろうが、なかろうが、130万通りの相続が発生しているのです。お金が絡むと、人はとんでもない行動にでるもの。トラブルに巻き込まれないためにも、実際のトラブル事例から対策を学ぶことが大切です。今回は、編集部に届いた事例のなかから、別居中の夫婦に訪れたトラブル事例をご紹介。円満相続税理士法人の橘慶太税理士に解説いただきました。

妻と子供が出ていって10年…その理由は?

「別居して10年ですね……」と力なく話すAさん。妻が子供を連れて出ていってから、長い年月が経っていました。

 

Aさんとその妻は、「何で2人は結婚したんだろう?」と疑問をもたれるような夫婦でした。Aさんは堅実で真面目、付き合いの悪いタイプ。一方の妻は社交的で派手好き、人たらしとよくいわれるタイプ。正反対の2人でしたが、結婚したとき、妻は「結婚するなら真面目で堅実な人がいいのよ。浮気の心配もないし」と吹聴していました。

 

結婚後、妻は仕事をやめ、家事に専念。子宝にも恵まれ、家族3人、幸せな生活が続いていくものと思われました。しかし、結婚して10年。妻は突然子供を連れて出ていったのです。

 

「退屈でもう無理! あの人と一緒にいるなんて、耐えられない!」

 

表向きは生活の不一致。しかしAさんは知っていました。実は、ずいぶんと前から妻は不倫をしていたことを……。

 

「自分といても退屈なんだろうな、と諦めていました。家のことも、子育ても、きちんとしてくれていたので、目をつぶるしかないと思っていましたが……」

 

そんな諦めの境地にいるAさんに対して、「普通、怒るでしょ、不倫なんて知ったら。でも怒らないのよ、あの人。結婚してからずっと、あの人は、私に興味がないのよ」と妻。そんなことをいっていると耳に入っても、Aさんは何もいうことはありませんでした。そればかりか、別居中の妻と子のために、生活費を出していたといいます。

 

別居を始めてからしばらく経つと、どうやら妻は不倫関係を解消したらしいことをAさんは耳にしました。しかし妻はAさんのところに戻ることもありませんでした。「いまさら戻りたくない」という妻に対し、「子供が成人するまでは、僕が面倒を見ないと」とやはり生活費を出し続けるAさん。

 

そんな姿を、歯がゆく見ている人がいました。Aさんの姉と妹です。「不倫をして、勝手に家を出ていった人に、なんでお金を払い続けているのよ!」と、Aさんは何度も怒られたといいます。しかしそれでもAさんは別居中の妻を金銭面で支え続けたのです。

 

 

次ページ麻痺の残ったAさんを、姉と妹が支えたが…

※本記事は、編集部に届いた相続に関する経験談をもとに構成しています。個人情報保護の観点で、家族構成や居住地などを変えています。

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