電力会社の位置指定承諾がなく、あわや無道路地に
【トラブル例1】位置指定があっても安心できない
埼玉県下のある市での話です(図表1)。位置指定道路の中に高圧線の鉄塔の基礎が存在しており、電力会社の道路位置指定※承諾がなかったので、瑕疵ある無効な位置指定となっていたケースがあります。このままでは無道路地ということになり、接する土地の価値が下がってしまいます。
※ 道路位置指定・・・特定行政庁が、私道の位置を指定すること。「道路位置指定」を受けることによって、私道は「建築基準法上の道路」となることができる。
そこでちょうど電力会社が高圧線のための地役権設定登記をしていなかったこともあって、電力会社で位置指定の承諾印をもらうことと、こちらで地役権設定登記をすることを交換条件として、道路にすることができました。
このトラブルからわかるのは見た目だけで「道路だろう」と決めつけてかかったり、図面を鵜呑みにしたりすることは危険だということです。万全を期して調べるということが、実は大きな意味を持つのです。
道路の所有権が「元の地主」に残されているケースも
【トラブル例2】公道となっていたはずが…
都市計画法に基づいて作られた開発道路は、原則として開発がなされた市町村の管理となります。ところが、たまに開発道路であるにもかかわらず、道路の所有権が開発業者や元の地主のものとして残っているケースが散見されます(図表2)。
筆者が仲介したある土地でも、道路の所有権が元の地主に残されていることがあって、地主から道路の通行掘削承諾書を取り受けたことがあります。
悪質な場合だと、その開発道路の上下水道工事等をやりたい人がでてきたときに、開発業者や地主が判子代を請求してくる場合があります。
この開発道路では道路の帰属について、開発業者と市が最高裁まで争って、市が勝訴しました。
検査済証の交付がないと、銀行融資を断られる可能性
ここで検査済証についても説明しておきます。検査検証とは、その建物が建築基準法に違反していないことの証明書です。検査済証の交付を建築確認した役所から受けていないと不都合なことが多々生じます。まず、検査済証のない建物について、銀行にローンの申し込みをすると、違法建築ということで融資を断られることがあります。
また、検査済証の交付を受けていないと、中古住宅としても売却する場合も買手からも敬遠され売りづらくなり、売却価格も下がります。
このような不都合があるにもかかわらず、検査済証交付率は平成10年度時点で36%に留まっていました(国土交通省資料より)。その後、建築基準法の改正や平成15年に国土交通省から各金融機関に対して「新築建築物向け融資にあたって、検査済証を活用すること」を要請したこと等もあり、現在では検査済証の交付率は90%程度となっています。
建物を新築した場合、検査済証の交付を受けることは不可欠です。建築会社によっては、手間を省いて検査済証の交付を受けることを省略しようとする会社もあるので、強く交付を要求することが肝心です。
土屋 忠昭
株式会社共信トラスティ 代表取締役
不動産鑑定士