「3密極まっている」「高齢者の事故もある」…医療現場の声

東京大学を卒業した杉山宗志氏は、福島県いわき市を中心に展開する「ときわ会グループ」にて、病院の事務方として働いている。新型コロナウイルス感染拡大によって不安が広がるなか、現場からの声を聞いた。※「医師×お金」の総特集。GGO For Doctorはコチラ

「医療不足」叫ばれる福島県いわき市…患者が溢れる

「ときわ会グループ」は、福島県いわき市を中心に、医療機関や介護施設、教育施設などを運営しています。筆者の主な勤務先は病院です。新卒でときわ会に入り、今年で5年目になりました。

 

病院の仕事と聞くと、医師や看護師、薬剤師、技師といった職がまず思い浮かびますよね。たとえば「事務スタッフもいますよ」といわれたら、受付や会計を窓口で行う人を想像するのではないでしょうか。「診療報酬の計算をしている人たちでしょ」という方もいらっしゃるかもしれません。

 

筆者の職は、上記のどれにも当てはまりません。病院の運営を裏で支える仕事です。現在は院長の秘書を担当しつつ、法人の運営に関わる各種プロジェクトにも取り組んでいます。医師や看護師を、パイロットやキャビンクルーに例えるならば、事務方はグランドスタッフです。メディカルスタッフは芸能人、事務方は芸能事務所スタッフ、ともいえるかもしれません。

 

事務方は、経理、庶務といった総務的な仕事から秘書業務、総合案内業務に至るまで幅広く担当しています。患者さんが病院に来てスムーズに帰れるよう、そしてメディカルスタッフが専門業務に集中して患者さんに向き合えるよう、様々な面から環境作りをしています。一般的な会社でも似た仕事はもちろんありますが、本記事では、病院ならではの部分を、現場目線から紹介していきます。

 

まず、駐車場の問題を挙げてみましょう。

 

筆者の病院では、立地の関係上、駐車場に十分なスペースを確保することができていません。「医療不足」を叫ばれる福島県いわき市の病院では、患者さんが溢れてしまい、長い時間お待たせしてしまうこともあるため、どうしても駐車場が混み合ってしまいます。

 

さらに、付き添いのご家族や入院患者さんのお見舞いに来た方も利用されるため、混雑をどう緩和させるか、事故などにどう対応するかといったことが課題になっています。

 

患者さんにも様々な受診パターンがあります。ときわ会が提供している医療の1つの軸は人工透析ですが、透析患者さんは、基本的には週3回、一度に4時間から5時間、病院で過ごすことになります。病院に来てから5時間以上は動けないので、その間、車を動かすこともできません。また、「病院を受診しに来たら緊急入院になってしまった」ということもあります。その場合、入院期間中は患者さんの車が駐車場に停められたままとなります。

 

医療現場、現状は
医療現場、現状は

高齢者が運転せざるを得ない状況…病院での事故も

駐車場内で起こる事案の対応も様々です。

 

病院に来る患者さんの多くは高齢者です。心許ない運転だとしても、生活するために車がどうしても必要という方はいます。正直なところ、駐車場内での事故は珍しくなく、その度に事務方が対応しています。また、車を駐車場から出せないといった事態も起こります。このような場合は、運転を代わることはせず、誘導によって患者さんの運転をフォローします。

 

患者さん用の駐車場だけでなく、スタッフ用の駐車場の運用についても難儀です。駐車場の全体の数は、利用する職員数の3分の2強ほどです。病院のほとんどのスタッフが車で通勤していますが、病院のすぐ裏にある職員用の駐車場だけでは不足してしまいます。離れた土地を職員駐車場として確保し、ピストンバスを運行して対応しています。

 

 

なぜこのような状況になってしまうのかというと、メディカルスタッフのほとんどはシフト制の勤務であるため、利用する職員の人数通りに確保すると供給過剰になってしまうのです。

 

夜勤なら病院近くの駐車場を利用する、日中の時間帯の勤務なら離れた駐車場を利用するなど、シフトに合わせて駐車場をうまく回すことで、少ない枠で間に合うようにしています。昼間のシフトを終えたスタッフと夜勤スタッフの入れ替わりの時間帯は混み合いますが、仕方ありません。

 

また、救急車はスムーズに入ってこられるか、業者さんの駐車スペースは問題なく確保できるかといったことも重要な課題です。これらのようなことを前提として、運用や誘導を考えなければなりません。病院の構造をなかなか変えられない以上、患者さんや職員の駐車場をどのように運用するのか、最適な方法を模索しています。

病院の送迎サービスは「3密」極まる…どう対応するか

最後に、患者さんの送迎サービスの運用について紹介します。
 

いわき市は面積が広く、自宅から病院まで、直接でも30分以上かかるような場所から通う患者さんもいます。患者さんの体調やストレスを考え、効率的に短時間で患者さんを送迎することが重要になります。

 

新型コロナウイルスの影響が深刻ななか、送迎サービスはまさに「3密」の場です。必要に迫られて「3密」の送迎サービスを利用しているのは、リスクの高い透析患者さんです。病院の事務方も、患者さんを守るため、こういった面から戦っています。

 

透析の送迎サービスでは、多くの場合1人ずつを送迎するのではなく、数人の患者さんを一度に送迎します。

 

なかには車椅子を利用しており、通常の座席がついた送迎車両には乗ることができない患者さんもいます。そのため、車椅子のまま乗ることのできる車両が必要となるのです。どの患者さんを、どういった順番でどの車に乗せ、どのルートを回るかを考える必要が出てきます。

 

車に乗り込むまでの待ち時間も重要です。全体の業務効率化のため、何人もの患者さんの透析を同じ時間帯に開始していますが、患者さんによって透析の時間は異なり、終わる時間はまちまちです。患者さんの出入りが集中する時間が、どうしても発生してしまいます。

 

透析後は体調が優れない方もいますので、透析が終わって送迎車両が到着するまで、院内でどのように待ってもらうかが重要になります。当然、待ち時間は極力短くしなければいけません。玄関先で待っている看護補助さんとの連携も必要になります。乗り降りの際の介助も考えなければなりません。

 

病院に来る患者さんの負担が少しでも軽くなるよう、また、スタッフの勤務の負担にならないよう、そして誰もが安全に利用できるよう、改善を重ねています。

 

杉山 宗志

ときわ会グループ

 

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ときわ会グループ 

静岡県伊豆出身。静岡県立韮山高等学校、東京大学工学部建築学科卒業、同大学院工学系研究科建築学専攻修士課程終了。東京大学エグゼクティブ・マネジメント・プログラム修了。東京大学在学中は運動会剣道部に所属。現在は福島県いわき市を中心に医療、介護、教育を軸に事業展開する『ときわ会』にて勤務。

著者紹介

医療と社会の間に生じる諸問題をガバナンスという視点から研究し、その成果を社会に発信していく特定非営利活動法人「医療ガバナンス研究所」による学会。「官でない公」を体現する次世代の研究者の育成を目的とし、全国の医療従事者が会員として名を連ねている。

著者紹介

連載医療従事者が本音で語る「日本社会」の現状~GGO For Doctor

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