税務調査官の「通帳を見ながらの質問」にどう答えるべきか?

税金逃れの意図はなくとも実質的には申告漏れになっていたというケースが珍しくありません。税務調査を受ける前に確認すべきポイントを紹介します。本記事は、『[改訂二版]相続税の税務調査を完璧に切り抜ける方法』(幻冬舎MC)から抜粋・再編集したものです。

過去の預金の流れ…死亡前「10年間」は把握しておく

前回の記事『税務調査官は「通帳や印鑑の周辺」から何を見つけるのか?』では、税務調査当日の午後に行われる「現物確認」においてチェックされるものを紹介しました。

 

ではこれらの現物のどこが問題になるのでしょうか。順番にご説明しましょう。

 

過去の預金について

 

調査官は過去の預金の流れについて、あらかじめ金融機関で情報を入手しています。期間はおよそ死亡前10年間くらいで、「ここがあやしい」というところに印をつけ、そこを重点的に確認してきます。家族に流れているお金はないか、財産となるものを購入していないか、ちゃんと生活費として使われているものかなど、踏み込んだ質問をされるので、きちんと説明できるようにこちらも預金の動きを確認して答えを準備しておきます。

生前に引き出した預金の未計上がないか、必ず確認を

生前の預金の引き出しについて

 

預金者が亡くなると銀行口座が凍結され、お金が引き出せなくなってしまうので、生前に葬儀費に充てるお金を引き出しておくというのはよくあることです。

 

このこと自体は何ら問題はありません。問題になるのは、申告書にこのときに引き出したお金をきちんと財産として計上しているか、その上で葬式費用として引いているかどうかということです。

 

ついうっかりやってしまいがちなのが、引き出した現金を財産として計上せずに、債務や葬式費用だけを債務控除として引いてしまうということです。

 

これは必ず指摘される部分です。生前に引き出した現金については、まずはその使途を確認し、未使用のお金は相続財産として計上されているかどうか、事前にチェックしておきましょう。

 

なお、令和元年7月1日以降は、死亡後でも一定額までは、遺産分割協議成立前に被相続人の預金の一部を引き出すことができるようになっています。

 

 

生前に引き出した預金を相続財産に計上し忘れるというミスが起こりがち
生前に引き出したあと、未使用のまま申告し忘れるというミスが多い

専業主婦名義の生活費口座は「名義預金」容疑の的

亡くなった人の通帳から生活費が引き出されているか

 

調査官は故人の通帳がきちんと生活費の口座として使われているかどうか、公共料金の引き落としなどがなされているかどうかを確認してきます。

 

もし、それらしい形跡がなければ、配偶者(奥さん)の通帳を見ます。そこに公共料金等の支払いが認められると「これは実質的にはご主人の通帳ですね。奥さんの名義を借りた、名義預金ではないですか」ということになるのです。

 

もちろんやっている方は、税金逃れをしているつもりは毛頭ありません。ただ、日頃、お財布を握っている奥さんが管理しやすいよう、自分名義の口座を作ってそこから引き落とすようにしているだけの話なのですが、こと相続に関しては「便利だからそうしたんですね」と物わかりのいいことはいってくれません。

 

実質的には亡き夫の通帳であり、その分がそっくり申告漏れになっているということになるのです。配偶者の税額軽減の特例の枠を使って、きちんと申告するようにしましょう。できれば生前に、夫の口座からの引き落としにするなど、対策をしておきたいものです。

預金額が少ない場合は「明快な理由」が必要

年収と預金の関係について

 

普通に考えれば、多くの場合、年収と預金額は比例しているものです。年収が高ければ預金に回せる金額が多く、年収が少なければ預金にまでなかなか手が回らないというのが一般的な傾向です。調査官もそのような目で故人の通帳をチェックします。

 

年収に比べて預金が少ない場合は要注意。年収が何千万円もあるのに、預金があまりに少ないときは「これだけ収入があったわりに預金がそれほどでもないのはなぜですか? このお金はどこに行ったんですか?」と突っ込まれます。預金が少ない場合には少ない理由を説明できるようにしておきましょう。

「貸金庫」は必ず事前整理し、申告漏れの誤解を防ぐ

貸金庫の有無について

 

お金に関するものは、自宅ではなく銀行の貸金庫などに保管しているという人もいます。税務調査の際に「全部、貸金庫の中です」と答えると、調査官はその日のうちに行き、中にどんなものが入っているか現物を見て確認します。

 

筆者もお客さまには打ち合わせの段階で貸金庫を利用しているかどうかを確認し、もし利用しているようであれば、中身を確認していただき、誤解を与えるようなものがないかを整理しておくようお願いしています。

 

現金や宝石、金貨があれば、調査官は直ちに申告漏れと結び付けて考えてしまいます。みなさん貸金庫までは頭が回らないようで、手つかずのまま放置しているというケースが多いですが、確実にチェックが入るところなので気をつけるようにしましょう。

 

なお、貸金庫を利用しているかいないかは、金融機関の記録や口座からの利用料引き落とし状況で調査官にはわかってしまいますので、利用している人は正直にその旨、答えるようにしてください。

就労状況に見合わない多額の預金には、「説明」が必要

家族の通帳

 

本連載で繰り返しご説明してきましたが、家族の預金は名義預金として申告漏れの疑いを掛けられやすいものの筆頭です。無職無収入の妻に多額の預金があったり、小さい子どもや孫の名義で不相応の預金がある場合は、要注意です。

 

調査官は家族それぞれの名義の預金通帳を見ながら、その預金がどんなふうにでき上がったものなのかを尋ねてきます。残高が多い場合や、大きなお金の動きがある場合は、しっかりと説明できるようにしておきたいものです。

 

特に故人の妻の預金が多い場合は、自分の親からの相続財産や自分自身の収入を上手に運用してここまで増やしました、と主張できるといいでしょう。

 

 

服部 誠
税理士法人レガート 代表社員/税理士

 

 

税理士法人レガート 代表社員・税理士

昭和34年1月生まれ。中央大学商学部卒。昭和58年6月税理士登録。
人と人とのつながりを大切にした「誠実な対応」「迅速な対応」「正確な対応」をモットーに、税・財務の専門家として、個人の資産運用や相続・事業承継に関するコンサルティング、相続申告業務において多数の実績を持つ。相続申告・贈与申告・譲渡申告等の関与件数は1,200件を超え、その経験を基に全国での講演活動や書籍などの執筆活動も行っている。

著者紹介

連載資産税専門税理士が教える「税務調査対策」の要諦

相続税の税務調査を 完璧に切り抜ける方法[改訂二版]

相続税の税務調査を 完璧に切り抜ける方法[改訂二版]

服部 誠

幻冬舎メディアコンサルティング

ある日突然訪れる「税務調査」にどう対処したらよいのか。 資産税に強いベテラン税理士に学ぶ、相続税と税務調査対策。 資産の多寡にかかわらず税務調査は訪れる。そんなとき、何を準備しどう対処したらよいのか? 相続税対…

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