3月9日のNYダウは過去最大の下げ幅に
3月9日の米国市場では、NYダウは前営業日比-2013.76ドル安の23851.02ドルと、大きく下げました。-7.79%の大幅安で、過去最大の下げ幅とのことです。急激な変動のため、サーキットブレーカーが発動し、15分間取引が停止されました。
サーキットブレーカーとは、株式市場などで価格が一定以上の変動を起こした場合に、強制的に取引を止める措置をとる制度です。そう頻繁にあることではありません。このような状況では、パニック的になりやすいです。いったん取引を止めて、投資家に冷静になってもらう目的で設定されています。
NYダウ暴落の理由は2つあり、1つめは新型コロナウイルスの影響への懸念で、2つめが原油価格の急落です。
前者の新型コロナについては、震源地ともいえる中国では落ち着きつつあり、いろいろ言っても日本国内の広がりは「限定的」となっていますが、イタリアをはじめとする欧州各国、そして何よりも北米において、広がりの兆しが出てきています。カナダでは新型コロナで、初の死者が出ました。
また、WHO(世界保健機関)から「新型肺炎、パンデミックの脅威に現実味」とのコメントが公表されたことも、投資家の不安心理に拍車をかけたようです。
原油価格の急落がNYダウを大きく押し下げた
ただ、新型コロナだけでは、ここまで米国株が大きく下げることはなかったと思います。むしろ、2つめの理由である原油価格の急落が、この日のNYダウを大きく押し下げたと考えられます。石油輸出国機構(OPEC)加盟国とロシアなどの非加盟国で構成する「OPECプラス」の協調減産をめぐる交渉が決裂し、サウジアラビアが価格競争を開始したためです。
この原油価格の値動きは、やっかいな話です。原油価格の下落という材料は、日本国内だけを見れば、むしろプラスのニュースです。
言うまでもなく、日本はほぼすべてを輸入に頼っており、原油価格が下がると安く仕入れられます。そうなると、ガソリン価格が下がって運送業者の負担が減ったり、マイカーを持つ家計にも恩恵があります。東日本大震災以降、電力会社は火力発電に頼っており、電力料金の引き下げから、ひいては工場などでの企業活動にも好影響があります。
しかし、世界的に見れば、そうはいきません。米国で見ると石油(オイル)関連が国内産業において大きな比重を占めています。NYダウで言えば、シェブロンやエクソンモービルといったオイル関連の企業の株価が指数に大きく寄与するため、この2銘柄の株価急落は、NYダウという株価指数自体も大きく押し下げます。NYダウが下落すれば、日本株も下落するといった悪循環になります。
ロシアも原油やLNGといった資源(コモディティ)の輸出で経済を支えており、中東や中南米、東南アジアの国の中にも、国策としているところが多いです。これらの国では、原油価格の急落はまさに「国家の一大事」です。
格付け会社のフィッチ・レーティングスは9日、原油価格の崩壊で湾岸産油国の財政は圧迫されると警告するレポートを公表しています。これが何を意味するのかと深読みすれば、産油国からファンドなどを通じて行われている投資資金が引き上げられる可能性があるということです。
ソフトバンクGの株価はしばらくさえない展開か
日本のソフトバンクグループの株価の下げがきついと話題になっています。多額の資金を借り入れ、レバレッジを利かせて投資を行うビジネスモデルであり、世界的な経済の失速懸念は確かに逆風です。
もう1つ見逃がせないのが、同社が運営する「ソフトバンク・ビジョン・ファンド」への出資先に、中東の政府系ファンドやオイルマネーがかなり入っていて、それが逃げ出すのではとの「思惑」です。
なぜ「思惑」かと言えば、実態がつかめないからです。マーケットが正しいかもしれないし、間違えているかもしれません。「ソフトバンク・ビジョン・ファンド」については、具体的な出資先、投資先が会社側から示されておらず、イマイチ中身がよくわからないと、しばしば投資家の声などが新聞報道などで見受けられます。これが背景です。
投資資金は不透明感や「よくわからない」を敬遠しがちです。投資家がリスクを取りにくい状況であり、ソフトバンクグループのように投資事業を主力とするような企業では、株価はしばらく上値の重い展開になりそうです。
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