3月度外食産業の売上高は前年同月比17.3%減
日本フードサービス協会が4月27日に発表した3月度「外食産業市場動向調査」によると、新型コロナウイルスの影響が直撃し、売上高は前年同月比17.3%減と大幅に下回りました。
2月最終週の政府による大規模イベントなどの自粛要請以降、店内飲食の客数が繁華街立地、ディナー時間帯、土日祝日で顕著に減少しています。居酒屋など飲酒業態のほか、大型商業施設のフードコートなども大きな打撃を受けました。特に、東京都から「週末の外出自粛」要請が出された3月下旬に一段と客足が落ち、3月の外食全体売上高は東日本大震災の減少幅(前年同月比10.3%減)を上回りました。
業態別の概況は、以下のとおりです。
◆ファストフード業態
•引き続き、テイクアウト、宅配、ドライブスルーなど、「持ち帰り」需要が下支えしたが、商業施設のフードコートをはじめ店内飲食の客数が振るわず、全体売上高は前年同月比6.9%減と前年を下回った。
• 「洋風」、「和風」、「その他」は店内飲食の減少を持ち帰りが下支えし、それぞれ売上高は0.9%減、7.2%減、9.3%減。「麺類」は商業施設立地の落ち込みが大きく、売上高18.6%減。「持ち帰り米飯・回転寿司」は弁当・惣菜、回転ずしのテイクアウトなどの持ち帰り部分の下支えがあったものの、「回転寿司」の店内落ち込みが大きく、売上高は11.7%減となった。
◆ファミリーレストラン業態
• 全体売上高は同21.2%減と前年を大幅に下回った。
• 「洋風」と「和風」は月後半にかけて客数が一段と下がり、売上高はそれぞれ25.0%減、30.4%減。「中華」は餃子などのテイクアウト・デリバリーが下支えとなり、売上高は9.6%減。これまで好調を続けてきた「焼き肉」も前年を下回り、売上高は6.7%減となった。
◆パブ・居酒屋業態
• 飲酒業態は、本来は送迎会シーズンの宴会需要が大きいはずだが、今年はキャンセルが相次いだ。郊外立地や地域密着店などでは当初比較的下げ幅が小さい店も一部あったが、2月最終週の政府の自粛要請のよる落ち込みと、3月下旬の東京都の「週末の外出自粛」要請による2段階の落ち込みで、軒並み売上は下がり、「パブ・ビアホール」は前年の半分にとどかず、売上高53.5%減、「居酒屋」は売上高41.4%減となった。
◆ディナーレストラン業態
• ディナーレストランは繁華街立地の店の一部では集客がほとんどない日があるなど、休業や時間短縮を余儀なくされる店も増えて、売上高は同40.5%減となった。
◆喫茶業態
• 新型コロナの影響で商業施設立地店の落ち込みが大きかったうえ、路面店でも客足が落ち、売上高は同24.7%減となった。
新型コロナウイルスの感染拡大が国民生活に与える影響は2月、3月と日を追うごとに大きくなっており、外出が大幅に減ることで、外食各社では集客が見込めない状況が続いています。
東京都では、飲食店(テイクアウトを除く)には営業時間の短縮(5時〜20時での営業、酒類の提供は19時まで)を要請しました。この動きが全国の多くの自治体に広がったことで、全国的に営業時間短縮や休業に踏み切るところが増加しました。日本フードサービス協会では、4月はさらに大幅な売上減少を予想しているようです。
ファミレスの既存店売上高は大手各社ともに2ケタ減
どの業態も悪化していますが、この中からファミリーレストラン業態について、各社別に前年同月比のデータをみてみます。
●すかいらーく
3月:既存店売上高23.9%減、全店売上高22.2%減
2月:既存店売上高0.4%減、全店売上高1.8%増
1月:既存店売上高2.4%減、全店売上高0.0%増
●サイゼリヤ
3月:既存店売上高21.5%減、全店売上高21.6%減
2月:既存店売上高6.6%増、全店売上高6.4%増
1月:既存店売上高5.1%増、全店売上高5.0%増
●セブン&アイ・フードシステムズ(デニーズ)
3月:既存店売上高25.9%減、全店売上高26.1%減
2月:既存店売上高1.2%減、全店売上高1.3%減
1月:既存店売上高4.4%減、全店売上高5.2%減
●ロイヤルホールディングス(ロイヤルホスト)
3月:既存店売上高20.3%減
2月:既存店売上高3.9%増
1月:既存店売上高3.8%増
●ジョイフル
3月:既存店売上高16.1%減、全店売上高17.5%減
2月:既存店売上高3.1%増、全店売上高1.9%増
1月:既存店売上高2.3%増、全店売上高1.2%増
いずれも3月は2ケタの減少幅となっており、厳しい事業環境であるとうかがえます。
一方、すかいらーくの月次データによると、次のような記述がニュースリリースの中にあります。
「新型コロナウイルス感染拡大影響により、特にイートインの売上高・客数は大きく減少。前年より土曜が1日少ないこともマイナスに作用した。」
「外出自粛による宅配・テイクアウトの需要増を見込み、両サービスの販促強化・露出拡大・注文サイトの改善を実施。結果、テイクアウト売上高は大きく伸長。宅配売上高も前年を上回った。」
新聞報道などからも、新型コロナウイルスの感染拡大前からテイクアウトに注力していた会社はイートインの減少分をある程度吸収できているようです。外食でその典型はマクドナルドであり、イートインコーナーを閉鎖しても、テイクアウトや「ウーバーイーツ」などによる宅配で「コロナショック」の影響をあまり受けていません。
商店街の定食屋なども続々とテイクアウトに力を入れ始めていますが、後発組は苦戦が否めません。弁当を店先でテーブルを出して売っても売れ残り、かえって経営にマイナスという話も聞かれます。
外出自粛ムードが和らぐまで、外食産業にとって厳しい状況は続きそうです。
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