日本証券業協会が公表した2019年12月31日時点のNISA口座開設・利用状況調査の結果によると、口座数は順調に積み上がっているようです。株高などを背景に、残高も増加していました。同データを考察します。

19年12月末の証券会社のNISAは798万口座に

日本証券業協会はこのほど、2019年12月31日時点のNISA口座開設・利用状況調査の結果を公表しました。

 

NISAとは、株や投資信託などの運用益や配当金を、一定額非課税にする制度です。具体的には、毎年120万円までの投資が可能で、投資で得た収益が最長5年間非課税になる制度のことです。通常は利益に対して20.315%の税金がかかるため、節税という面で大きなメリットを受けられます。

 

NISAとは、株や投資信託などの運用益や配当金を一定額非課税にする制度。
NISAとは、株や投資信託などの運用益や配当金を一定額非課税にする制度。

 

まず、証券会社におけるNISA口座数の推移をみると、2019年12月末の証券会社のNISA口座数は798万口座であり、同年9月末と比較して2.0%増加しました。

 

内訳をみると、一般NISA口座数は703万口座であり、同年9月末の697万口座と比較して0.8%増加しました。つみたてNISA口座数は95万口座であり、同年9月末の85万口座から12.0%増加しました。

 

【出典】日本証券業協会
【出典】日本証券業協会

 

NISA口座開設者で投資未経験者は、どのくらいいるのでしょうか。

 

2019年12月末の証券会社の一般NISA口座における投資未経験者の割合は38.4%であり、同年9月末の37.8%と比較して0.6ポイント増加しました。つみたてNISA口座における投資未経験者の割合は70.7%であり、同年9月末の68.6%と比較して2.1ポイント増加しました。

 

【出典】日本証券業協会
【出典】日本証券業協会

 

一般NISAおよびつみたてNISA口座数の年齢別内訳をみてみます。

 

2019年12月末の証券会社の一般NISA口座における20歳代~40歳代の割合は合計で30.3%であり、同年9月末の30.3%と比較して、増減はありませんでした。他方、同月末のつみたてNISA口座における20歳代~40歳代の割合は合計で74.6%であり、同年9月末の73.8%と比較して、0.8ポイント増加しました。

 

【出典】日本証券業協会
【出典】日本証券業協会

一般NISA・つみたてNISAの買付・購入額は伸びている

証券会社の一般NISA口座における買付額の推移をみてみます。

 

2019年勘定における証券会社の一般NISA口座での買付額は、2019年12月末時点で1兆8,531億円でした。累計購入額は12兆0,278億円であり、同年9月末と比較して2.9%増加しました。

 

【出典】日本証券業協会
【出典】日本証券業協会

 

2019年勘定における証券会社のつみたてNISA口座での購入額は、2019年12月末時点では1,136.5億円でした。累計購入額は1,699.4億円であり、同年9月末と比較して27.8%増加しました。

 

【出典】日本証券業協会
【出典】日本証券業協会

 

2019年12月末時点における証券会社の一般NISA口座の残高は、5兆3,450億円でした。

 

【出典】日本証券業協会
【出典】日本証券業協会

 

2019年12月末時点における証券会社の一般NISA口座の残高 5兆3,450億円のうち、20歳代~40歳代の割合は24.1%を占めました。一般NISA口座の残高を商品別にみると、上場株式が60.0%を占めました。

 

【出典】日本証券業協会
【出典】日本証券業協会

 

ここまで、NISA口座開設・利用状況調査の内容をみてきましたが、一般NISA口座、つみたてNISA口座ともに口座数は伸びており、かつ買付額や購入額も増えていることから、「口座をつくっただけ」ではなく「口座をつくり、資金も入れている」とわかります。

 

証券会社やFX(外国為替証拠金取引)会社では「口座開設キャンペーン」を行っているところが多く、「口座開設だけで〇〇をプレゼント!」というところも見受けられます。つまり、口座を開設しただけで取引を行わず「放置状態」というケースは少なくありません。

 

この点で、NISA口座は「口座開設キャンペーン」のようなものはあまり見当たらず、老後資金への備えなどで、投資についてしっかり考えている人が多いのかもしれません。

 

なお、2019年12月末時点までは口座残高が順調に積み上がっていますが、2020年に入って個別株の株価や投資信託の基準価額の多くは下落しており、2020年3月分のデータは口座残高が減少する可能性があります。次回の発表に注目しましょう。

 

※本連載に記載された情報に関しては万全を期していますが、内容を保証するものではありません。また、本連載の内容は筆者の個人的な見解を示したものであり、筆者が所属する機関、組織、グループ等の意見を反映したものではありません。本連載の情報を利用した結果による損害、損失についても、著者ならびに本連載制作関係者は一切の責任を負いません。投資の判断はご自身の責任でお願いいたします。

 

 

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