米国株の大幅高が好感され、日経平均は2万円台を回復
祝日明けとなる4月30日(木)の東京株式市場では、日経平均株価は大幅高となっており、2万円台に乗せてきました。新型コロナウイルスをめぐるニュースなどで、東京市場が休場の間に悪材料が特に出なかったことにより、投資家の間に買い安心感が広がっているようです。29日(水)発表の米国の1~3月期GDPは-4.8%となり、確かに悪い数字ですが、織り込み済みのようです。
日本では本格的な決算シーズンに入っていますが、今年は新型コロナウイルスの感染拡大防止でトレーダーなど市場関係者の多くは休暇をとったり、在宅勤務(自宅待機)となっていて、年末年始と変わらないくらい相場に厚みがありません。したがって、値が飛びやすい状況であるとみられ、寄り付きからあっさりと2万円の「壁」をブレイクしたと考えられます。
また、30日(木)はカレンダー上の月末、売買最終日です。3月末の日経平均株価が18,917.01円であり、月足で陽線となることは間違いないのですが、いわゆる「お化粧買い」の要素もあるのかもしれません。企業や年金基金などの機関投資家が、決算期末や月末において保有する株式の評価額を恣意的に上げる目的で買い注文を入れることです。
29日(水)のNYダウは24,633.86ドル(+532.31ドル)で取引を終えました。米国内における新型コロナウイルスの感染者数ピークアウトや、経済再開への期待が背景にあります。この日はFOMC(連邦公開市場委員会)の結果が公表されましたが特にサプライズはなく、事前の報道(観測)どおりとなったことで、マーケットに対するマイナスのインパクトはありませんでした。
FOMCとは、日本では日銀金融政策決定会合に当たります。実質ゼロ金利政策の維持が決められ、「必要なだけ国債などの購入を継続する」ことも声明に入れられました。FOMC後のパウエルFRB(連邦準備制度理事会)議長の会見では引き続き厳しい見通しが示されましたが、一方で、新型コロナウイルスの感染拡大に一服感が見られれば4~6月期がボトム、7~9月期から回復との見通しも示されており、これもマーケットに安心感を与えたとみられます。
しかし、懸念材料もあります。毎週水曜日に公表されている米国の週間石油在庫統計では、原油は前週比+899.1万バレル(在庫総量5億2,763万バレル)となり、NY原油先物6月限(WTI)は1バレル=12.34ドル(前日比-0.44ドル)となりました。3.44%の下落です。原油価格の下落リスクは消えていないと言えます。
「強気相場」に移行できるか重要な局面に
節目の2万円をブレイクしたことで、マーケットのムードは悪くはありません。足もとで発表の続く3月期企業の決算についても、悪いことは事前に想定されていた話です。
ただ、午前の日経平均株価は寄り付き直後につけた20,316.96円を高値に、上値の重さも意識されます。2万円台では戻り待ちの売りが出やすいほか、連休前のポジション整理に伴う売り物も出ているのかもしれません。
また、先物主導での指数の上昇であって、日経平均株価の上げ幅の割りに、現物株に対してさほど買い物が入っていないとの見方もできます。相場に厚みのないときにみられる傾向で、先物に買いが入ったり、売られたりすることで、連れて現物株も上下に振れます。あらかじめ今日の地合いは良いと予想されたことから、早朝から先物に売り方の買い戻しが入っていました。その動きが一巡したことから、上昇一服になっているとの解説が正しいのかもしれません。
実は、日経平均株価の20,250円前後という水準は、今後の値動きを見通すうえでテクニカル的に重要です。
日足チャートをみると、4月に入ってからの株価の横ばい推移により、一目均衡表の雲の中に潜り込んでいました。20,230円台に横たわる雲の上限のラインがレジスタンス(上値抵抗線)になっていましたが、30日(木)の急騰によってブレイクした格好になっています。
これをしっかりと上抜けて、終値ベースでも雲の上限のラインよりも上に位置していれば、テクニカル面でも「強気相場」に移行したと解釈できそうです。一方で、終値ベースでこのラインよりも下になれば、逆に上値の重さが意識され、戻り売り圧力はより強まると考えられます。
連休前のポジション整理、先物主導での指数の上昇、さらに「お化粧買い」による株価急騰という印象は強く、現物株にしっかり買い物が入ってこなければ、せっかく日経平均株価2万円台を回復しても、一時的なものに終わる可能性があります。2万円が「砂のお城」となってしまうのか、「頑丈なお城」となるのかを見極める、重要な局面にあります。
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