今回は、相続対策のスタートとなる「財産の棚卸し」とは何かをお伝えします。 ※本連載は、不動産コンサルタントとして活躍し、自身も賃貸経営を行っている山口智輝氏の新刊で、2015年11月に刊行された『大家業を引き継ぐあなたへ』(セルバ出版)の中から一部を抜粋し、大家業の引き継ぎを成功させるノウハウなどをご紹介します。

財産の現状を把握することで対策も見えてくる

相続対策のスタートは、「財産の棚卸し」からです。現状把握することにより、対策も見えてきます。正確な課税遺産総額を税理士に試算してもらってもいいですが、路線価は毎年変わりますし、税制も変わりますので、毎年厳密な試算してもらうにはかなりの費用がかかります。

 

また、税理士に相続税を試算してもらったら、すぐに大手ハウスメーカーが営業に来たというのは、よく聞く話です。信頼できる税理士に、ざっくりとした課税遺産総額を算出してもらう、または自分で算出してみることから始めましょう。

 

そのときに、父親とコミュニケーションを図ることにより、もしものときに売るつもりの土地が境界が不明確だったり、隣地の地主と揉めている、または見た目は普通の更地だが以前あった工場の杭が埋まっている、所有する建物にアスベストが使用されており高額な解体費用がかかってくる等、後々問題になりそうなことが、わかる可能性があります。

兄弟姉妹の不動産の共有相続は、百害あって一利なし

不動産を、自宅等の「子や孫に遺す資産」、貸駐車場等の「相続税を納税するための資産」、そして賃貸アパート等の「活用し収益を上げる資産」に分類します。

 

「活用し収益を上げる資産」とは、交通の便がよい、幹線道路沿い、商業地、容積率が高い土地などです。相続対策をしても、相続税がゼロにならないことも多いので、納税資金対策を考えないといけません。現金で払えるのか、払えない場合は売却する資産を換金しやすい状態で残しておくことが大事です。

 

兄弟姉妹の不動産の共有相続は、百害あって一利なしです。どんな小さな持ち分でも、所有権がその不動産全体に及び、遺産分割の先送りと同じ結果になります。兄弟姉妹の不動産の共有は絶対に避けるべきです。1棟のマンションを共有してしまうと、話がまとまらないので、売却はもちろん、入居対策のためのリフォームですらできなくなります。揉めているうちに、空室期間がどんどん延び、不良債権化してしまいます。

 

もちろん土地も同じで、長男の希望は土地活用、次男は売却、長女は賃貸などと話がまとまりません。不動産業者も、最初はよい話を持って行っても、結局決められない家というレッテルを貼り、よい情報も入らなくなります。機会損失をし、さらにランニングコストを払い続ける、「負債」「死産」ができあがるだけなので、不動産は共有にしてはいけません(親子、夫婦は、状況により必要性がある場合があります)。

 

さらに、相続を重ねる度に、権利関係が複雑になっていくというリスクも抱えます。土地を分割し、各相続人の独立した所有権にしておくことが理想です。また、アパート、マンションを1棟だけ所有している場合、複数の相続人に分割することができませんが、同じ工事金額でも、戸建賃貸もしくはテラスハウスが複数棟あれば、分割することが可能になります。

 

そして、それぞれの相続人が、賃貸として貸してもいいですし、売却したい方は単独で売却することも可能です。また、自らの自宅として住むことも可能と、相続人それぞれが単独で選択して、行動に移すことが可能になります。どのように分けるかも意識して、土地活用することが大事です。

リスクに対するリカバリー方法は様々だが・・・

リスクに対する抵抗力は、人それぞれです。少しの借入でも不安で眠れなかったり、数億円の借入をしても何とも感じなかったり・・・。しかし、根本的には、リスクに向き合って、その対策(完全ではなくても)を具体的に考えているのか、目を背け何となく不安なのかの違いかもしれません。

 

リスクに対して、例えば団体信用生命保険等の保険に加入したり、フルローンにするのではなく、返済比率を考慮した借入金額にするのか、他の土地を売却し繰上げ返済する等、リスクに対するリカバリー方法を考えている人は、リスクを取り、収益も上げ、資産を維持、増加しているように感じます。

 

逆に、そのリスク対策を考えずに、不安で仕方ない人もいます。おそらく夜も眠れないほど不安なのだと思います。いろいろな場所でその不安を、関係する人に長時間に渡ってぶつける人もいます。精神の状態をコントロールできていない状況です。これでは、相続対策として成功しても、その方は幸せな時間を過ごすことができていません。その家族も同じでしょう。個人的には、賃貸アパートを売却し、借入を返済することにより、健康な状態を取り戻したほうが、はるかに幸せなのではないかと思います。

 

もちろん、相続税でたくさん不動産を売却することになると思いますが、健康を害し、病気になるよりはいいのではないでしょうか。また、賃貸アパートの4000万円の借入は不安で反対でも、住宅ローンの4000万円の借入は不安に感じない人もいます。おそらく土地神話が生きでた親の代からの刷り込みだと思います。もっとも、負債でしかない住宅に何も考えずに高額のローンを組むほうが、よほどリスクが高いと思うのですが・・・。

本連載は、2015年11月20日刊行の書籍『大家業を引き継ぐあなたへ』から抜粋したものです。その後の税制改正等、最新の内容には対応していない可能性もございますので、あらかじめご了承ください。

大家業を引き継ぐあなたへ

大家業を引き継ぐあなたへ

山口 智輝

セルバ出版

「この本は、大家業を引継ぐ2代目、3代目大家さんが、大家業を通じて明るい未来を描ける本です」 大都市を中心に、元々地主でない不動産大家、サラリーマン大家といった不動産投資家が増加しているが、地方では、元々地主の…

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