築古アパートの贈与で相続税が軽減できる理由と具体例

今回は、築古アパートを贈与することで、相続税が軽減できる仕組みをお伝えします。 ※本連載は、不動産コンサルタントとして活躍し、自身も賃貸経営を行っている山口智輝氏の新刊で、2015年11月に刊行された『大家業を引き継ぐあなたへ』(セルバ出版)の中から一部を抜粋し、大家業の引き継ぎを成功させるノウハウなどをご紹介します。

貸家建付評価を左右する「賃貸割合」とは?

自分が所有する土地にアパートやマンションを建て、それを他人に貸した場合、貸家建付地評価になります。あくまでも、借りている人がいることが前提になります。

 

賃貸割合とは、入居率のことで、10部屋中8部屋がうまっていれば、80%です。100%の賃貸割合を認めてもらいたいばかりに、家賃をかなり下げて募集される方がいますが、空室があっても、継続して入居募集が続けられていれば、基本的に賃貸割合100%として認めてもらえます。

建物の固定資産税評価額が低いことを利用

築古アパートの建物部分を子どもに生前贈与することで、親の相続財産を減らすことができます。また、建物が子どもに移ることで、そこから発生する家賃収入は子どもの所得となるので、築古アパートの家賃収入による親の財産が増えることはなくなります。

 

さらに、所得分散が図れるので、毎年の所得税、住民税軽減にもなります。築古アパートなら、建物の固定資産税評価額もかなり低くなっているので、暦年課税による贈与でも少ない贈与税で移すことが可能です。

 

アパートと一緒にローンまで子どもに引き継いでしまうと、「負担付贈与」になり、かなり少なくなった固定資産税評価ではなく、時価評価になるので、極力ローンが完済したアパートのほうがいいです。

 

また、入居者からの敷金(預かり金)がある場合は、アパート贈与時に敷金も同時に移しておかないと、「負担付贈与」になります。子どもは、毎年、親に土地の固定資産税相当額だけを払うことにより、借地権課税等は発生せず、土地の使用貸借とみなされます。

1563万円の相続税を軽減したケース

●設例

建物の固定資産税評価額:1500万円

毎年の家賃収入手取り額:300万円

土地の路線価:10万円/㎡

土地の面積:300㎡

借地権割合:60%

借家権割合:30%

相続発生時期(贈与後):10年後

 

A.何もしない場合

建物の相続税評価額=1500万円×(1-借家権割合0.3)=1050万円・・・①

土地の相続税評価額=300㎡×10万円/㎡(1-借地権割合0.6×借地権割合0.3×賃貸割合1.0)=2460万円・・・②

相続までの家賃収入=300万円×10年=3000万円・・・③

①+②+③=6510万円

 

B.アパート(建物)を子どもに生前贈与した場合

建物の相続税評価額=0・・・①

(すでに建物は、子ども名義になっているため)

土地の相続税評価額=300㎡×10万円/㎡=3000万円・・・②

(子どもに使用貸借しているため、自用地評価)

①+②=3000万円

 

相続税評価額の減額効果

A-B=3510万円

 

相続税の減額効果(相続税率50%場合)

3510万円×50%=1755万円・・・④

 

建物の贈与税=192万円(贈与額1050万円、平成27年の税率による・・・⑤

 

④-⑤=1563万円

 

親の相続税評価額を、3510万円減らすことができ、それに伴い相続税額を1755万円減額することができます(相続税率50%の場合)。

 

アパート(建物)を贈与するときに、192万円の贈与税が発生しますが、それを引いても合計で1563万円相続税を軽減することができます。

 

相続時精算課税制度を使うと、借家権割合を控除した後の建物評価額が2500万円までなら贈与税はかかりません。ただし、親の相続時にその金額が親の相続財産に計算上加えられるため、相続税の節税効果はありません。なお、これらの方法を実行される場合には、必ず税理士等の専門家にご相談ください。

 

また、新築アパートを現金で建て、贈与する場合も、同様に評価が下がりますので、単純に土地代とアパートを建てる現金をそのまま贈与するのではなく、評価の低いものに変えて、加工して渡すことで節税になります。

アセットクリエイションズ 代表取締役 一般財団法人日本不動産コミュニティー 福井支部長

アセットクリエイションズ代表。一般財団法人日本不動産コミュニティー福井支部長。福井大家塾理事。J-REC公認不動産コンサルタント。相続診断士。相続アドバイザー協議会認定会員。
大学卒業後、建設会社で土地活用の飛込み営業を行う。仕事を通じたさまざまな経験から、アパマン経営の事を本当に相談できる窓口になるべく賃貸経営専門の不動産コンサルタントとして独立。また、不動産コンサルタントなら賃貸経営をするべきとの考えに至り、競売で全室空室物件を落札。3か月で満室にし、現在も満室を継続中。不動産コンサル個人実績 30億円。
2015年11月に刊行された書籍「大家業を引き継ぐあなたへ」はamazonランキング1位(株主総会、取締役会、会社継承部門)を獲得。

著者紹介

連載大家業の「引継ぎ」を成功させる方法

本連載は、2015年11月20日刊行の書籍『大家業を引き継ぐあなたへ』から抜粋したものです。その後の税制改正等、最新の内容には対応していない可能性もございますので、あらかじめご了承ください。

大家業を引き継ぐあなたへ

大家業を引き継ぐあなたへ

山口 智輝

セルバ出版

「この本は、大家業を引継ぐ2代目、3代目大家さんが、大家業を通じて明るい未来を描ける本です」 大都市を中心に、元々地主でない不動産大家、サラリーマン大家といった不動産投資家が増加しているが、地方では、元々地主の…

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