貸家建付評価を左右する「賃貸割合」とは?
自分が所有する土地にアパートやマンションを建て、それを他人に貸した場合、貸家建付地評価になります。あくまでも、借りている人がいることが前提になります。
賃貸割合とは、入居率のことで、10部屋中8部屋がうまっていれば、80%です。100%の賃貸割合を認めてもらいたいばかりに、家賃をかなり下げて募集される方がいますが、空室があっても、継続して入居募集が続けられていれば、基本的に賃貸割合100%として認めてもらえます。
建物の固定資産税評価額が低いことを利用
築古アパートの建物部分を子どもに生前贈与することで、親の相続財産を減らすことができます。また、建物が子どもに移ることで、そこから発生する家賃収入は子どもの所得となるので、築古アパートの家賃収入による親の財産が増えることはなくなります。
さらに、所得分散が図れるので、毎年の所得税、住民税軽減にもなります。築古アパートなら、建物の固定資産税評価額もかなり低くなっているので、暦年課税による贈与でも少ない贈与税で移すことが可能です。
アパートと一緒にローンまで子どもに引き継いでしまうと、「負担付贈与」になり、かなり少なくなった固定資産税評価ではなく、時価評価になるので、極力ローンが完済したアパートのほうがいいです。
また、入居者からの敷金(預かり金)がある場合は、アパート贈与時に敷金も同時に移しておかないと、「負担付贈与」になります。子どもは、毎年、親に土地の固定資産税相当額だけを払うことにより、借地権課税等は発生せず、土地の使用貸借とみなされます。
1563万円の相続税を軽減したケース
●設例
建物の固定資産税評価額:1500万円
毎年の家賃収入手取り額:300万円
土地の路線価:10万円/㎡
土地の面積:300㎡
借地権割合:60%
借家権割合:30%
相続発生時期(贈与後):10年後
【A.何もしない場合】
建物の相続税評価額=1500万円×(1-借家権割合0.3)=1050万円・・・①
土地の相続税評価額=300㎡×10万円/㎡(1-借地権割合0.6×借地権割合0.3×賃貸割合1.0)=2460万円・・・②
相続までの家賃収入=300万円×10年=3000万円・・・③
①+②+③=6510万円
【B.アパート(建物)を子どもに生前贈与した場合】
建物の相続税評価額=0・・・①
(すでに建物は、子ども名義になっているため)
土地の相続税評価額=300㎡×10万円/㎡=3000万円・・・②
(子どもに使用貸借しているため、自用地評価)
①+②=3000万円
相続税評価額の減額効果
A-B=3510万円
相続税の減額効果(相続税率50%場合)
3510万円×50%=1755万円・・・④
建物の贈与税=192万円(贈与額1050万円、平成27年の税率による・・・⑤
④-⑤=1563万円
親の相続税評価額を、3510万円減らすことができ、それに伴い相続税額を1755万円減額することができます(相続税率50%の場合)。
アパート(建物)を贈与するときに、192万円の贈与税が発生しますが、それを引いても合計で1563万円相続税を軽減することができます。
相続時精算課税制度を使うと、借家権割合を控除した後の建物評価額が2500万円までなら贈与税はかかりません。ただし、親の相続時にその金額が親の相続財産に計算上加えられるため、相続税の節税効果はありません。なお、これらの方法を実行される場合には、必ず税理士等の専門家にご相談ください。
また、新築アパートを現金で建て、贈与する場合も、同様に評価が下がりますので、単純に土地代とアパートを建てる現金をそのまま贈与するのではなく、評価の低いものに変えて、加工して渡すことで節税になります。