賃貸経営で成果を上げられる「チーム」を作る
父親が賃貸経営をしていると、不動産会社であったり、税理士であったり、内装業者であったりいろいろな繋がりがあると思います。それぞれのパートナーがしっかり機能していれば、そのままよい関係を続けていけばいいと思います。
しかし、地方に行くほど顕著ですが、今の時代にあった仕事、成果を出す仕事をしていないのに、惰性で付き合っている方が多いです。長い付合いだから、長期間空室でも、不動産会社に何も言えない。インターネットに弱く、物件名で検索しない限り自分の物件に辿り着けない。もちろん、大手ポータルサイト(スーモ、ホームズ、アットホーム)では、見つけることができません。
また、時代にあったリノベーション工事ができない内装業者とつながっていたのでは、空室は埋まりません。いまだに手書きの税理士などは、いろいろなシミュレーションができないので、どれがベストの選択か判断できません。
今までの付合いがあるから何も言えない、不動産会社を変えることもできない――それが、検討した結論であれば、その方の価値観なのでいいと思います。でも、問題の先送りでしかないのであれば、相続する方が不幸です。何もせずに、物件が新しくなり、満室になることはあり得ないのですから。
親子で賃貸経営にかかわり、お子さんが客観的に見てどうなのか、想いを共有し、努力してくれる協力業者なのか、賃貸経営のパートナーとしてふさわしい士業なのか、成果を上げるためのチームを早くつくり上げていかないと、時間が経てば経つほど、リカバリーするために費用と労力が必要になります。
そして、そのチームをつくるための人のつながりがすでにある人は問題ないですが、そうでない場合、同じ状況の大家のコミュニティー、大家塾や大家の会に参加してみることをぜひともおすすめします。それぞれのコミュニティーごとに理念やビジョンも違いますので、自分にあったところに所属し、お互い成長できるようなつながりを持つといいと思います。
また、全体を体系的に学ぶために適しているのが、筆者も所属している一般財団法人日本不動産コミュニティーです。
健全な不動産市場の醸成のため、実際の経営に活かせる知識・ノウハウを「いつでも」「どこでも」「誰でも」学べるようにし、スキルを身につけた人たちが、そのスキルを活かし、社会全体に大きく貢献していく人と不動産のコミュニティーを実現することを基本理念に活動しているコミュニティーです。
机上の空論ではなく、実際に実践した実務を積み重ねたノウハウを学ぶことができ、また全国の意識の高い人のつながりを持つことができます。
大家さんが持つ影響力は地域を変えることも可能
大家さんの地元に与える影響力は、大きいと思います。
例えば、ファミリー物件100戸のオーナーさんであれば、仮に平均4人家族だとすると、4人×100戸で、400人です。生活の基盤になる住居を400人に提供しているわけです。その物件に愛着を持てず、清掃もされず、古びた汚い物件に住んでいただくのか、400人の感情に大きな影響を与えるのではないでしょうか。
日々の生活に疲れるのか、大変な中でも、ほっとしたり、癒されたりして、暖かい気持ちを持って、職場、学校、地域に出かけるのかによって、周りに与える影響力、笑顔が広がっていくのではないでしょうか。
また、そのような思いを共有できる大家さんが、例えば同じ地域で、5人つながることにより、400人×5倍=2000人です。その人が前向きになれる住環境を提供できれば、地域の雰囲気は変わります。案外、地域活性化の鍵は、大家さんなのかもしれません。
アパートに最新の設備が付いているかいないか、新築なのか、築30年なのか、家賃がどっちのほうが安いのか、といった条件検索で、部屋が選ばれるのではなく、あの大家さんの物件に住みたいと思ってもらえるのが、本当の空室対策なのかもしれません。
また、現在は、どこにでもあるような地域なのかもしれません。駅から何分が判断基準なのかもしれません。しかし、前向きな大家さんがつながり、いろいろなチャレンジをする中で、地域が変われば住みたい地域になります。
少子高齢化、人口減少により、今は、下りのエスカレーターに乗っている状況です。何もせずに、立ち止まっていたのでは、どんどん下り続けていきます。前に進むことによってやっと現状維持ができるような状況です。
下りのエスカレーターを駆け上がるための変化を起こすためには、将来、引き継ぐ予定の2代目、3代目大家さんが、将来ではなく、今から、親と一緒にチャレンジすることが、大事なのではないでしょうか。
土地に縛られず資産を少しでも増やすことを考える
先祖代々の土地を守ることが目的の人はそれでもいいかと思いますが、家族、子孫の繁栄、そして幸せを願うのであれば、土地に縛られるのではなく、それぞれの土地を分類し、土地の広さを判断基準にするのではなく、資産価値を判断基準とすべきです。
資産を維持し、そして少しでも増やすことを考えるべきです。草ぼうぼうで、土地の管理すらできない土地、固定資産税だけを払う負債の土地を、いつ吹くかわからない神風を待つよりは、相場より安くても、その土地を活用し、価値を創れる方、価値を感じていただける方、喜んでいただける方に、バトンを渡したほうが、地主さんにとっても、買った方にとっても、地域にとっても、幸せなことではないでしょうか。
すべての不動産を今と同じ形で維持することは、日本の税制度から考えて、ほぼ無理なのではないでしょうか。
地主さんも、選択と集中が大事です。そして親の思い、子どもの思いをお互い伝え、コミュニケーションを図る中で、物質的なものだけでなく、その家族の文化を継承することが大事なのではないでしょうか。