今回は、不動産投資として人気のある「新築ワンルームマンション投資」「タワーマンション投資」の留意点について見ていきます。※本連載は、不動産コンサルタントとして活躍し、自身も賃貸経営を行っている山口智輝氏の新刊で、2015年11月に刊行された『大家業を引き継ぐあなたへ』(セルバ出版)の中から一部を抜粋し、大家業の引き継ぎを成功させるノウハウなどをご紹介します。

借入金の減少より物件価値の減少のほうが早い!?

「将来の年金代わりに東京の新築ワンルーム区分マンションを買いませんか」――地方にいても、営業の電話がかかってきます。即答でお断りしますが、結構買っている人がいるみたいです。借入で購入するので、キャッシュフローがマイナスになり、自己資金すら返済が終わる30年後にしか回収できないので、投資として成り立っていません。

 

「損益通算して、所得税の節税になり、完済後には年金代わりになります」ということですが、30年間持出しを続けると、かなりのマイナスになっています。さらに、借入金の減少より物件価値の減少のほうが早い傾向があるので、売却しても残債が残る可能性があります。

 

また、複数の部屋を所有していればいいですが、1戸だけだと、空室になるとマイナスがさらに拡がります。それに、家賃を維持し、満室を続けるためには、古くなったときに、室内の修繕、リノベーションが必要になります。

 

しかし、元々マイナスなのに、さらに持出ししてリノベーション工事しても、回収することもできません。建設会社、不動産会社へのチャリティーならいいですが、そうでなければ、新築ワンルーム区分マンションは、すべきでないでしょう。

景気悪化で売却金額が下がる可能性もあるタワマン

相続対策として、都心のタワーマンションによる節税が大人気です。

 

タワーマンションは、何十戸、もしくは何百戸の部屋がありますので、1戸当たりの土地面積はわずかになり、購入金額のほとんどは建物になります。

 

建物の相続税評価額は、固定資産税評価額になり、さらに賃貸にすることにより、借家権割合分を減額することができます。加えて、基本的には最上階と低層階では、販売価格がかなり違いますが、固定資産税評価額は、面積が同じなら評価額も同じになります。この販売価格と相続税評価額の差が、評価を下げることになり、相続税対策として人気の理由です。

 

実際に、相続税の節税効果はありますが、ただ下がった評価を戻すことは可能なのでしょうか。平時であれば、問題ないと思いますが、現在の東京は、東京オリンピックを直前に控え、バブルの状況です。もちろん、タワーマンションもバブルを考慮した販売価格です。

 

そして、そのタワーマンションを買っている多くの方が、実際に住むのではなく、相続対策の方とキャピタルゲイン狙いの投資家です。特に、中国を中心とした海外の方が多いようです。その方が、東京オリンピックの終了、もしくはそれ以前に、中国の景気悪化によりバブルが弾けたらどうなるのでしょうか。相続税対策にはなりますが、その節税金額以上に、売却金額が下がったらどうでしょうか。 

 

タイミングを間違うとババを引きそうですが、バブル崩壊前のタイミングと、コントロールできない相続のタイミングを合わせることが、できるのでしょうか。

 

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本連載は、2015年11月20日刊行の書籍『大家業を引き継ぐあなたへ』から抜粋したものです。その後の税制改正等、最新の内容には対応していない可能性もございますので、あらかじめご了承ください。

大家業を引き継ぐあなたへ

大家業を引き継ぐあなたへ

山口 智輝

セルバ出版

「この本は、大家業を引継ぐ2代目、3代目大家さんが、大家業を通じて明るい未来を描ける本です」 大都市を中心に、元々地主でない不動産大家、サラリーマン大家といった不動産投資家が増加しているが、地方では、元々地主の…

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