●日経平均構成企業225社で新型肺炎の感染が拡大した先週来株価が下落したのは197社に。
●下落率の大きかった業種は鉄鋼、小売業、機械などで、中国経済減速への警戒が強くうかがえる。
●上昇率の大きかった企業は不動産業など、なお、自立反発の場面では下げた業種の動きに注目。
日経平均構成企業225社で新型肺炎の感染が拡大した先週来株価が下落したのは197社に
今回のレポートでは、新型肺炎の感染が拡大し、株式市場に動揺が広がった先週以降、日本株はどのような銘柄が下落し、また、どのような銘柄が上昇したのか、検証を行います。具体的には、日経平均株価を構成する225社について、2020年1月17日から28日までの騰落率を算出します。なお、この期間における日経平均株価の騰落率は、マイナス3.43%でした。
日経平均株価を構成する225社のうち、前述の期間中に株価が下落した企業は197社と、全体の約87.6%に達しました。これに対し、上昇した企業は27社と、全体のわずか約12.0%にとどまりました(株価が変わらなかった企業は1社)。下落率の大きかった企業10社と、上昇率の大きかった企業10社は図表1の通りで、業種は東証33業種の分類に基づいています。
下落率の大きかった業種は鉄鋼、小売業、機械などで、中国経済減速への警戒が強くうかがえる
図表1で下落率の大きかった企業の業種をみると、鉄鋼、小売業、機械が目立ち、記載はされていませんが、11位以降には非鉄金属が続きます。これは、「新型肺炎の感染拡大」→「中国経済の減速」→「世界経済への影響拡大」「鉄や非鉄金属、設備投資に対する世界的な需要減少」、「中国人によるインバウンド消費の減少」という連想が強く働いた結果と推測されます。
なお、インバウンド消費については、関連する銘柄の騰落率を図表2にまとめました。昨日付けレポート「動揺が続く金融市場と日経平均株価の下値目途」でも指摘しましたが、小売業(主に百貨店、ドラッグストア)、サービス業(主にレジャー、旅行)、化学(主に化粧品メーカー)、繊維製品(主にアパレル)、空運業(主に航空)、陸運業(主に鉄道)などに、広く売りがみられます。
上昇率の大きかった企業は不動産業など、なお、自立反発の場面では下げた業種の動きに注目
一方、図表1で上昇率の大きかった企業の業種をみると、不動産業が多く、このほかにも食料品や情報・通信業など、総じて内需の業種が目立っています。これは、新型肺炎の感染拡大の影響を受けにくい業種として選好された結果と思われます。なお、5Gやスマホ向けの半導体需要の増加期待を背景に、一部の半導体製造装置および電子部品メーカーの株価は相対的に底堅く推移しています(アドバンテスト+0.8%、TDK-0.2%など)。
以上、短期間の分析ではありますが、足元の日本株はかなりの部分、新型肺炎の感染拡大を材料に動いていることが明らかになりました。ただ先週来、この材料の織り込みは相当程度、進んだと思われますので、感染状況に目立った改善がないなかでも、日本株が一時的に自立反発することも見込まれます。その場合、すでに大きく下げている業種や銘柄を中心に、見直しが入りやすくなる展開も想定されます。
※個別銘柄に言及していますが、当該銘柄を推奨するものではありません。
※当レポートの閲覧に当たっては【ご注意】をご参照ください(見当たらない場合は関連記事『新型肺炎の感染拡大で「下がった銘柄」「上がった銘柄」』を参照)。
(2020年1月29日)
市川雅浩
三井住友DSアセットマネジメント シニアストラテジスト