●今回は追加利上げの見送りを予想、植田総裁の記者会見では経済・物価に関する発言に注目。
●日米経済状況や賃上げが、経済・物価見通しの実現度合いに与える影響の判断は重要ポイント。
●発言は副総裁講演とほぼ同じ内容で、踏み込んだ情報発信は回避、従来の政策スタンス継続か。
今回は追加利上げの見送りを予想、植田総裁の記者会見では経済・物価に関する発言に注目
日銀は3月18日、19日に金融政策決定会合を開催します。今回、無担保コール翌日物金利の誘導目標(現行0.50%程度)の据え置きは、ほぼ織り込み済みとなっており(図表1)、弊社も今会合での追加利上げは見送りを予想しています。市場では引き続き、「次の利上げ時期」や「利上げペース」、「利上げの最終到達点(ターミナルレート)」が焦点となっており、植田和男日銀総裁の記者会見における発言が注目されます。
そこで今回のレポートでは、植田総裁の発言について、どのような点に注意すべきかを考えます。まず、日銀は基本的な金融政策の運営スタンスとして、「経済・物価情勢の展望(展望レポート)で示している経済・物価の見通しが実現していくとすれば、それに応じて、引き続き政策金利を引き上げ、金融緩和の度合いを調整していく」方針を明示しています。そのため、会合ごとに「経済」と「物価」に関する発言を丁寧に分析することが必要です。
日米経済状況や賃上げが、経済・物価見通しの実現度合いに与える影響の判断は重要ポイント
経済について、米国では足元、トランプ関税発動の対象国や対象品目が拡大しており、米景気の先行き不透明感が強まっている状況です。また、日本国内では、1月の家計調査報告における実質消費支出が低調で、2月の景気ウォッチャー調査もさえない内容となっています。これらを踏まえ、植田総裁が経済見通しの実現度合いをどのように述べるかが、重要なポイントと考えます。
次に、物価については、3月14日に労働団体の「連合」が、春季労使交渉(春闘)の第1回集計結果を公表します。3月12日は春闘の集中回答日でしたが、主要製造業の6割が賃上げ要求に対して満額以上の回答をし、多くの企業で連合の要求方針である賃上げ率5%以上を上回ったと報じられています。植田総裁が、第1回集計結果を受け、賃上げのモメンタム(勢い)と物価見通しの実現度合いをどう判断するかも、注目点です。
発言は副総裁講演とほぼ同じ内容で、踏み込んだ情報発信は回避、従来の政策スタンス継続か
なお、会合の直前に行われる日銀政策委員の講演も重要な手掛かりです。今回は3月5日に内田真一日銀副総裁が講演を行いましたが、主な発言は図表2の通りです。植田総裁の記者会見での発言も、おおむね同じ内容となると思われ、タカ派過ぎずハト派過ぎず、バランスに配慮しつつ踏み込んだ情報発信は避け、前述の基本的な金融政策の運営スタンスを繰り返し述べる可能性が高いとみています。
弊社は引き続き、2025年7月と2026年1月に25ベーシスポイント(bp、1bp=0.01%)ずつ利上げを行い、政策金利は日銀が中立金利(景気を熱しも冷ましもしない金利水準)の下限とみる1%に達したところで時間を置き、次の25bpの利上げは2027年1月との見方を維持しています。今回の会合では、見通しの変更を必要とする材料が確認される公算は小さいと考えています。
※当レポートの閲覧にあたっては【ご注意】をご参照ください(見当たらない場合は関連記事『25年3月「日銀会合」の注目点【解説:三井住友DSアセットマネジメント・チーフマーケットストラテジスト】』)。
市川 雅浩
三井住友DSアセットマネジメント株式会社
チーフマーケットストラテジスト
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