本連載は、三井住友DSアセットマネジメント株式会社が提供する「市川レポート」を転載したものです。

 

●金融政策を議論し決定するFOMCでは7名の理事と5名の地区連銀総裁が投票権を持っている。
●2020年に投票権を持つFOMCメンバーの多くは中立姿勢で、金融政策は当面現状維持を予想。
●今年最初のFOMCは無風通過、米長期金利低下の反応は単に新型肺炎を警戒した動きとみる。

金融政策を議論し決定するFOMCでは7名の理事と5名の地区連銀総裁が投票権を持っている

米国の連邦準備制度(The Federal Reserve System)は、1913年の連邦準備法によって設立された中央銀行制度です。その最高意思決定機関が、ワシントンにある連邦準備制度理事会(The Board of Governors of the Federal Reserve System)で、一般的にFRB(The Federal Reserve Board)という略称で呼ばれています。FRBは連邦政府の1機関であり、7名の理事(うち議長1名、副議長1名)で構成されています。

 

FRBは、その下に12の地区連邦準備銀行(地区連銀)を抱え、業務に関する広範な監督権限を付与されています。なお、金融政策の決定に関する議論は、連邦公開市場委員会(FOMC)で行われ、7名の理事(現在2名空席)と5名の地区連銀総裁が投票権を持ちます。理事とニューヨーク地区連銀総裁は常任ですが、4名の地区連銀総裁は輪番制により1年の任期となります。

2020年に投票権を持つFOMCメンバーの多くは中立姿勢で、金融政策は当面現状維持を予想

つまり、投票権を持つ5名の地区連銀総裁のうち、ニューヨーク地区連銀総裁を除き、4名が毎年入れ替わることになります。2019年は、シカゴ、ボストン、セントルイス、カンザスシティの各地区連銀総裁がメンバーでした。2020年は、クリーブランド、フィラデルフィア、ダラス、ミネアポリスの各地区連銀総裁が、新たに投票権を持つメンバーとなります。そこで以下、この4名の金融政策スタンスを確認します。

 

弊社では、クリーブランド地区連銀のメスター総裁は、物価を重視する「タカ派」、ミネアポリス地区連銀のカシュカリ総裁は、景気を重視する「ハト派」とみています(図表1)。そして、フィラデルフィア地区連銀のハーカー総裁と、ダラス地区連銀のカプラン総裁は、「中立」と考えています。なお、常任メンバーの金融政策スタンスは全員「中立」とみられ、これを踏まえると、2020年の金融政策は当面現状維持の可能性が高いと思われます。

今年最初のFOMCは無風通過、米長期金利低下の反応は単に新型肺炎を警戒した動きとみる

新メンバーによる最初のFOMCが、2020年1月28日、29日に開催され、大方の予想通り、フェデラルファンド(FF)金利の誘導目標は年1.50%~1.75%で据え置かれました。FOMC声明では、家計支出の表現が、「力強いペースで拡大」から「緩やかなペースで拡大」に下方修正され、また、「現在の政策スタンスは物価上昇率が2%前後近くで推移するのを支えるために適切」という文言は、「2%前後に戻るのを支えるために適切」と、一部修正されました。

 

これに加え、パウエルFRB議長が記者会見で、新型肺炎の影響は不確実性が大きいとし、また、2%以下の物価上昇率が長く続くことは好ましくないと述べたことで、市場では米利下げの織り込みが進み、米長期金利は低下しました(図表2)。ただ、今回のFOMCからは、早期利下げのメッセージは読み取れず、これらは、単に新型肺炎の感染拡大を警戒した動きと思われます。前述の通り、FOMCの新メンバーはしばらく先行きを見守り、政策金利を当面据え置くと予想します。

 

(注)2020年のFOMCで投票権を持つ。 (出所)各種資料を基に三井住友DSアセットマネジメント作成
[図表1]FOMCメンバーの金融政策スタンス (注)2020年のFOMCで投票権を持つ。
(出所)各種資料を基に三井住友DSアセットマネジメント作成

(注)データは2019年12月2日から2020年1月29日。2020年の利下げ回数はFF金利先物 市場が織り込む利上げ回数。 (出所)Bloomberg L.P.のデータを基に三井住友DSアセットマネジメント作成
[図表2]米利下げの織り込みと米長期金利 (注)データは2019年12月2日から2020年1月29日。2020年の利下げ回数はFF金利先物
市場が織り込む利上げ回数。
(出所)Bloomberg L.P.のデータを基に三井住友DSアセットマネジメント作成

 

※当レポートの閲覧に当たっては【ご注意】をご参照ください(見当たらない場合は関連記事『2020年最初の「FOMC」開催…政策金利は当面据え置きか?』を参照)。

 

(2020年1月30日)

 

 

市川雅浩

三井住友DSアセットマネジメント シニアストラテジスト

 

【ご注意】
●当資料は、情報提供を目的として、三井住友DSアセットマネジメントが作成したものです。特定の投資信託、生命保険、株式、債券等の売買を推奨・勧誘するものではありません。
●当資料に基づいて取られた投資行動の結果については、三井住友DSアセットマネジメント、幻冬舎グループは責任を負いません。
●当資料の内容は作成基準日現在のものであり、将来予告なく変更されることがあります。
●当資料に市場環境等についてのデータ・分析等が含まれる場合、それらは過去の実績及び将来の予想であり、今後の市場環境等を保証するものではありません。
●当資料は三井住友DSアセットマネジメントが信頼性が高いと判断した情報等に基づき作成しておりますが、その正確性・完全性を保証するものではありません。
●当資料にインデックス・統計資料等が記載される場合、それらの知的所有権その他の一切の権利は、その発行者および許諾者に帰属します。
●当資料に掲載されている写真がある場合、写真はイメージであり、本文とは関係ない場合があります。

人気記事ランキング

  • デイリー
  • 週間
  • 月間

メルマガ会員登録者の
ご案内

メルマガ会員限定記事をお読みいただける他、新着記事の一覧をメールで配信。カメハメハ倶楽部主催の各種セミナー案内等、知的武装をし、行動するための情報を厳選してお届けします。

メルマガ登録
会員向けセミナーの一覧