●新型肺炎の感染拡大で世界の金融市場はリスクオフに傾斜、ただしパニックには陥っていない模様。
●市場は当面、新型肺炎の報道に神経質となろう、日本株はすでにインバウンド関連が幅広く下落。
●日経平均株価が23,000円を割り込めば22,700円近辺、22,200円近辺が下値目途になろう。
新型肺炎の感染拡大で世界の金融市場はリスクオフに傾斜、ただしパニックには陥っていない模様
新型肺炎の感染が広がるなか、世界的に金融市場の動揺が続いています。1月17日から27日までの期間における主要アセットクラスの動きを確認すると、株価が下落し、国債価格が上昇(利回りは低下)するなど、リスクオフ(回避)の反応が顕著にみられます(図表1)。ただ、長期金利の低下などを背景に、日米ともにリート指数が相対的に底堅く推移しており、市場全体がパニックに陥っている訳ではないように思われます。
一方、為替市場に目を向けると、同期間では日本円、米ドルなどが対主要通貨で上昇するなど、こちらもリスクオフの傾向がうかがえます。対米ドルで1%以上下落した通貨は、ロシアルーブル(-2.24%)、オーストラリアドル(-1.72%)、オフショア人民元(-1.71%)、タイバーツ(-1.04%)などです。しかしながら、欧州通貨は相対的に底堅く、対米ドルでユーロは0.66%の下落にとどまり、英ポンドは0.31%の上昇となっています。
市場は当面、新型肺炎の報道に神経質となろう、日本株はすでにインバウンド関連が幅広く下落
新型肺炎の感染がこの先どの程度拡大するのか、または、いつ頃終息宣言が出されるのかについて、正確な予測は困難です。感染拡大が長期化すれば、中国経済が減速し、①各国経済への影響、②中国進出企業への影響、③中国人によるインバウンド消費への影響などが強く懸念されることになります。そのため、市場は当面、新型肺炎に関するニュースに対し、神経質にならざるをえません。
日本株については、春節(旧正月)休暇中の中国からの訪日客が減少し、インバウンド消費に影響が出るとの思惑から、関連する銘柄が大きく下落しています。業種でみると、小売業(主に百貨店、量販家電、ドラッグストア)、サービス業(主にレジャー、旅行)、化学(主に化粧品メーカー)、繊維製品(主にアパレル)、空運業、陸運業などに、広く売りがみられます。
日経平均株価が23,000円を割り込めば22,700円近辺、22,200円近辺が下値目途になろう
新型肺炎の感染拡大が続く間は、日経平均株価も下値を試す動きが予想されます。そこで以下、チャート分析を用いて、下値の目途として意識されやすい水準を確認します。まずは節目の23,000円で、ここでのサポートの成否が目先の焦点です。23,000円を割り込むと、日足の一目均衡表の雲下限が、2月5日まで22,700円近辺に位置していますので、ここが次の下値目途と考えます(図表2)。
雲下限を下抜けた場合、2019年10月15日と16日に開けた窓を埋める流れとなり、15日につけた高値22,219円63銭が視野に入る恐れもあります。現時点で過度に悲観することはありませんが、市場が新型肺炎を材料視している以上、引き続き関連の報道には注意が必要です。なお、感染が沈静化する兆しがみえた場合、株価などは急反発することも想定され、この点も考慮しておくことが大切です。
※当レポートの閲覧に当たっては【ご注意】をご参照ください(見当たらない場合は関連記事『「新型肺炎の感染拡大」…混乱続く金融市場の行方は?』を参照)。
(2020年1月28日)
市川雅浩
三井住友DSアセットマネジメント シニアストラテジスト