厳しかった父が、会社を残し50代で急死
今回登場するのは、長男、長女、次女の3兄妹です。3人が生まれたのは、小さいながらも、地元では有名な建築会社。父が一代で大きくした会社でした。
父は「男は強くないといけない!」と口癖のようにいい、Aさんは幼少の頃から武道を習っていました。
一方で父は「跡取りとして、いい大学に入れ!」と口癖のようにいい、Aさんは家庭教師のもと、夜遅くまで勉強をしなければなりませんでした。
また妹ふたりにも、厳しかった父。幼少の頃から、ピアノやバイオリン、バレーなどを習い、勉強も家庭教師のもと、夜遅くまでしなければなりませんでした。
「この子たちは、いずれこの家を出ていかなければならない。頭が良くて、気立てがよくないと、いい人と結婚など、できないだろう」
二人の妹に対して、父は口癖のようにいっていました。
言い方、考え方に違いはあれ、子どもに厳しかった父。それは妻に対しても同じでした。
「きちんと掃除をしておけ!」
「早く飯にしろ!」
3人が思い出すのは、何かにつけて母を怒る父の姿でした。こんな夫婦生活に嫌気がさしたのでしょう。母は、次女が成人になったのを機に、家を出ていってしまいました。
「あなたたちは、どこにいても、私の子どもであることに、変わりはないわ」と晴れ晴れとした表情で家を出ていった母が印象的でした。
一方、成人を迎えた3人の子どもたちは、それぞれの道へ。長男は、大学卒業後、一般企業に就職し、30歳を前に結婚し、父の会社に転職。いまは会社のナンバー2として、忙しい日々を過ごしています。長女は、大学卒業後、就職した会社の同期と26歳で結婚。いまは仕事をやめ、二人の子どもの母親として、忙しい毎日を過ごしています。次女は大学卒業後、海外に留学。3年を経て帰国し、いまは外資系企業でキャリアを積んでいます。近いうちに、フィアンセと結婚をするそうです。
三人がそれぞれの道で充実した毎日を過ごしていたある日、不幸が訪れました。
「父さんが倒れた」