年間約130万人の方が亡くなり、このうち相続税の課税対象になるのは1/10といわれています。しかし課税対象であろうが、なかろうが、1年で130万通りの相続が発生し、多くのトラブルが生じています。当事者にならないためには、実際のトラブル事例から対策を学ぶことが肝心です。今回は、長男が相続放棄を妹たちにお願いしたことで始まった相続トラブルについて、円満相続税理士法人の橘慶太税理士に解説いただきました。
長男「実は、父さんの相続のことでお願いがあるんだ」
次女「急なことで、父さんの遺産がどれくらいの額になるかわからないから、兄さんが整理するといっていたけど、何かまずいことでもあった?」
すると、突然、長男はその場で土下座を始めたのです。
長女・次女「なっ、なに?」
長男「……父さんの遺産をすべて放棄してほしいんだ」
長女・次女「えっ、放棄!?」
長男「会社の経営が、まずいんだ。このままだと、倒産してしまう。だから父さんの遺産で、なんとかできないかと考えている」
言葉をなくす妹2人。何かと問題のある父親ではあったが、会社が倒産する、というのは受け入れ難い……しかし、何かが引っかかる。
長女「ちなみに、遺産はどれくらいあったの?」
長男「会社の株式が……」
次女「会社の株式はいいわ。私たちがもらっても仕方がないもの。そのほかの遺産は?」
長男「貯金が2,000万円ほどで、株式とかが1,000万円、不動産が……」
長女「とにかく、結構な額があって、それをすべて会社の立て直しのために使いたい、ということね」
長男「そうなんだ、なんとかしたいんだ、親父がつくった会社だし」
長女「ちょっと考えさせて。でもできるだけ早く、結論は出すから」
そう言って、二人の妹は実家を後にしました。
次女「お姉ちゃん、どう思う?」
長女「何か、引っかかるのよね」
円満相続税理士法人
代表 税理士
大学受験の失敗から一念発起し税理士を志す。大学在学中に税理士試験に4科目合格(法人税法の公開模試では全国1位)し、大学卒業前から国内最大手の税理士法人に正社員として入社する。
勤務税理士時代は相続専門の部署で6年間、相続税に専念。これまで手掛けた相続税申告は、上場企業の創業家や芸能人を含め、通算400件以上。また、銀行や証券会社を中心に、年間130回以上の相続税セミナーの講師を務め、27歳という若さで管理職に抜擢される。
2017年1月に独立開業し、現在7名の相続専門税理士が在籍する円満相続税理士法人の代表を務める。週刊ポストや日本経済新聞、幻冬舎、女性自身など、様々メディアから取材を受けている。また、自身で運営しているYouTubeのチャンネル登録者は6万人を超えており、相続分野では日本一のチャンネルに成長している。
円満相続税理士法人:https://osd-souzoku.jp/
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