長男「実は、父さんの相続のことでお願いがあるんだ」
次女「急なことで、父さんの遺産がどれくらいの額になるかわからないから、兄さんが整理するといっていたけど、何かまずいことでもあった?」
すると、突然、長男はその場で土下座を始めたのです。
長女・次女「なっ、なに?」
長男「……父さんの遺産をすべて放棄してほしいんだ」
長女・次女「えっ、放棄!?」
長男「会社の経営が、まずいんだ。このままだと、倒産してしまう。だから父さんの遺産で、なんとかできないかと考えている」
言葉をなくす妹2人。何かと問題のある父親ではあったが、会社が倒産する、というのは受け入れ難い……しかし、何かが引っかかる。
長女「ちなみに、遺産はどれくらいあったの?」
長男「会社の株式が……」
次女「会社の株式はいいわ。私たちがもらっても仕方がないもの。そのほかの遺産は?」
長男「貯金が2,000万円ほどで、株式とかが1,000万円、不動産が……」
長女「とにかく、結構な額があって、それをすべて会社の立て直しのために使いたい、ということね」
長男「そうなんだ、なんとかしたいんだ、親父がつくった会社だし」
長女「ちょっと考えさせて。でもできるだけ早く、結論は出すから」
そう言って、二人の妹は実家を後にしました。
次女「お姉ちゃん、どう思う?」
長女「何か、引っかかるのよね」