仕事中にゲームでクビの社員「解雇無効と賃金支払い」を求める

少子高齢化が進み、人手不足が深刻化するばかりの昨今。この空前の売り手市場に、企業は現社員の囲い込みに必死だが、なかには抱えていたくないような問題社員も。職場で問題児となっている問題社員を解雇したい場合、どういった対応が正解なのだろうか。本記事では、勤務態度に問題がある社員を解雇した事例を紹介する。

勤務中にゲームや旅行の手配をする社員を解雇したが…

依頼者となる会社は、上場を目指しており、即戦力となる人材の採用に尽力していました。そこで採用面接に来たAは、理化学機器を製造する会社に勤務しており、同社の株式を上場させるべく管理部長を務めたという経験がありました。会社側は、Aのその経験を買い、採用を決めたのです。

 

しかし採用後、Aには会社側が考えてほどのスキルがないことが判明しました。さらに、勤務時間中にゲームや私的な旅行の手配をしたり、転職活動を行っていたり、また、業務用パソコンに私的なデータを大量に保存していることが判明したため、会社側はAを解雇しました。

 

その後、Aは、解雇無効と毎月の賃金の支払いを求めて労働審判申立を行い、私たちは、会社側の代理人となりました。

 

労働審判制度とは、労働審判官(裁判官)と労働関係の専門家である労働審判員2名で組織された労働審判委員会が、個別労働紛争を原則3回以内の期日で審理し、適宜調停を試み、調停がまとまらなければ、事案の実情に応じた柔軟な解決を図るための判断(労働審判)を行うという紛争解決制度です。平成18年4月から始まった比較的新しい制度ですが、実務的には非常に多く使われており、労働審判の申立をきっかけとして解決する労働問題は多数に及びます。

 

労働審判手続きは、おおむね以下のような流れで行われます。

 

①トラブル発生

(例えば、解雇や給料・退職金の支払いなどに関するもの)

 

②地方裁判所に申立て

権利・利益に関わる労働問題であれば、権利・利益の大小関わらず労働審判を申し立てることができます。

 

③期日における審理

事実関係や法律論に関する双方の言い分を聞いて、争いになっている点を整理し、必要に応じて証拠調べを行います。話し合いによる解決の見込みがあれば、いつでも調停の試みがなされ、話し合いで解決することも多いです。

 

④労働審判

 

⑤労働審判に異議がなければ確定する

異議を申し立てた場合には、労働審判は失効し、訴訟手続に移行します。

 

裁判所を利用する手続きですが、通常の民事裁判とは異なり、簡易・迅速・柔軟な解決を目指すものとして、調停の要素を持っています。

 

特徴としては、以下の点が挙げられます。

 

●原則として申立から40日以内に第1回期日が開かれる

 

●3回以内に終結する (労働問題の民事訴訟になると1年程度の期間を要し、労力を必要としますが、労働審判の審理に要する期間は平均で約2ヵ月半です)

 

●紛争に応じた柔軟な解決が図れる

 

●確定した労働審判や成立した調停の内容は、裁判上の和解と同じ効力があり、強制執行を申し立てることも可能である

解雇無効と賃金の支払いを求め、労働審判を申し立て

本件では、解雇無効と賃金の支払いを求めて、Aが労働審判を申し立ててきたわけです。Aの主張は、会社側が指摘するような事実はない、給料の減額を要請されたことから、一度だけ転職先となるかもしれない会社の情報を求めたことはあるというものでした。

 

裁判所は審理の結果、下記の事実があると認めました。

 

①Aがゲームをしているところを目撃した社員がおり、Aのコンピューターには、ゲームの攻略法を調べていたデータがある。また、Aのコンピューターには、旅行手配のためと思われるインターネットのショートカット、個人的な写真もかなりの数が保存されていた。

 

②会社側はAと、「損益管理を徹底し、相手方の利益を増やす」という内容で雇用契約をした。しかし、退職した社員の代わりに派遣社員を雇い、200万円相当の高額なソフトを購入した上、ソフトを使うためにオペレーターを雇い、更なる経費を会社側に負担させた。

 

しかし裁判所は、このような事実があっても、解雇を正当化するまでの理由になるかどうかは疑問の余地があるという態度でした。そのため結局、会社側は賃金の4ヵ月分を支払う、Aは解雇が有効であることを認めるという和解をしました。

 

最悪の結果は、解雇が無効となってAが職場復帰し、また、解雇から職場復帰までの賃金を会社側が支払うということですから、4ヵ月分の賃金支払いで和解できたことは成功だったと思います。

 

解雇するには正当な理由が必要です。しかし、この判断は厳しく、上記の①②のような事実があっても、判決になると、なかなか解雇までは認めないということが多いです。実際には、上記の①はもっと酷かったという推測はできますが、それを証明する証拠を集めることは、通常は非常に困難なのです。

 

グリーンリーフ法律事務所 弁護士

昭和55年 早稲田大学法学部卒
昭和59年 弁護士登録
著書に「決定版原状回復 その考え方とトラブル対処法」(にじゅういち出版)、「誰にもわかる借地借家の手引」(新日本法規出版、共著)など。論文に「相続税の負担減少を目的とした養子縁組の効力とその対応策」(月刊税理)、「相続が発生した場合の預貯金の取扱い」(月刊不動産フォーラム21)など。

著者紹介

連載トラブル事例から法律問題の最新事情まで!法律事務所こぼれ話&耳より情報

本連載は、「弁護士法人グリーンリーフ法律事務所」掲載の記事を転載・再編集したものです。

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