上司と対立ばかりしていた従業員を解雇したら…
A社は、職場のルールを軽視し、ことあるごとに上司と対立していた従業員を勤務態度不良として解雇しました。その数日後、元従業員の代理人弁護士から、解雇無効を主張する内容証明郵便が届きました。その後、復職と解雇期間中の賃金請求を求める労働審判が申し立てられたということです。
労働審判制度とは、労働審判官(裁判官)と労働関係の専門家である労働審判員2名で組織された労働審判委員会が、個別労働紛争を原則3回以内の期日で審理し、適宜調停を試み、調停がまとまらなければ、事案の実情に応じた柔軟な解決を図るための判断(労働審判)を行うという紛争解決制度です。2006年4月から始まった比較的新しい制度ですが、実務的には非常に多く使われており、労働審判の申立てをきっかけとして解決する労働問題は多数に及びます。
労働審判事件では、会社側の準備の猶予があまりないため、早速、当該従業員の上司等から当時の状況の聴き取りを行いました。
その聴取結果を踏まえ、反論書面を作成しました。当該従業員が自己の都合のよいように会社のルールを解釈し、それに対する指摘を受けると声を荒げ上司に食って掛かっていた等の具体的な事情を指摘。当該従業員を雇用し続けたのでは、他の従業員に悪影響が及び、職場環境を維持できないため解雇としたものであり、解雇は有効である旨の主張を行いました。
条件が折り合えば、会社側は早期解決を希望
他方、会社としては条件が折り合うのであれば、早期の解決をしたいという希望も有していました。元従業員側も必ずしも復職を望むわけではないということであったため、労働審判期日では、主として和解条件の調整がなされました。
当初、元従業員は1年間の賃金支払いを求めていました。しかし、労働審判委員会を介した交渉の結果、6ヵ月分の賃金支払いを行うことを条件に退職を認める旨の和解が成立し、当該和解成立により事件終了となりました。
会社が従業員を解雇することは容易には認められませんので、解雇に伴い、その有効性を争うケースが多くなっています。解雇の有効性を支える事情が多くないという場合、早期解決のため、一定の金銭を支払うことにより労働関係を解消するということも合理的な選択肢の1つになるものと思います。