少子高齢化が進み、人手不足が深刻化するばかりの昨今。この空前の売り手市場に、企業は現社員の囲い込みに必死だが、なかには抱えていたくないような問題社員も。思いも寄らない理由で、社員から金銭を請求されることも。本記事では、弁護士事務所に寄せられた、従業員から慰謝料の支払いを求められた事例を紹介する。

従業員から届いた内容証明郵便

在職中の従業員の代理人弁護士から、「店長から嫌がらせを受けている。嫌がらせをやめるよう店長に指導することを求めるともに、嫌がらせに基づく精神的苦痛に対する慰謝料の支払いを求める」旨の内容証明郵便が届いたとのご相談でした。

 

事情を確認したところ、当該従業員は新人の従業員に対する態度が悪く、その影響で新人従業員がすぐに辞めてしまうため、店長が当該従業員の勤務状況を確認できる体制をとった、そのことを捉えて嫌がらせと主張しているのではないか、とのことでしたので、交渉事件の代理人として受任しました。

 

店長は当該従業員に対して嫌がらせを行っているわけではないため、慰謝料の請求等には応じられない旨の回答書面を送付し、その後、何度か書面のやり取りを行いましたが、当該従業員の理解を得ることはできませんでした。

 

「店長から嫌がらせを受けた」
「店長から嫌がらせを受けた」

主張は平行線を辿り、従業員は退職したが・・・

主張が平行線を辿るなかで当該従業員は退職し、それからしばらくした後に、当該従業員から250万円の慰謝料支払いを求める訴訟が提起されました。

 

訴訟においては、店長の措置の正当性を改めて主張し、当該従業員の請求を棄却するよう求めました。

 

双方ともに和解の意向はなかったため、判決での決着となりました。

 

判決は、当該従業員の主張を全面的に退ける内容であり、当該従業員は控訴(不服申立て)をしなかったため、慰謝料支払いを行う必要はないという第1審判決が確定し、事件終了となりました。

 

会社が従業員から謂れのない理由で金銭請求を受けることはままあります。

 

その場合には、従業員の主張に理由がないということについて反論を行わなければなりませんが、当時の状況に関する資料が残っていない場合には言った言わないの水掛け論に発展することになります。会社として、なぜそのような措置をとったかの経緯を記録化しておくことが重要です。

 

本連載は、「弁護士法人グリーンリーフ法律事務所」掲載の記事を転載・再編集したものです。

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