人生100年時代といわれ久しい昨今、定年後も働き続けるのが一般的となりつつある。定年まで勤め上げた会社に残るという選択をする人も多いが、不当な給与の引下げや、思わぬタイミングでの雇止めにあうことも。本記事では、法律事務所に寄せられた、有期雇用の雇止めにまつわる事例を紹介する。

「雇止めは無効」「就労の継続」を主張する元従業員

依頼者となるA社は、運営する施設の管理人として、雇用期間1年の有期雇用従業員B氏を雇っていました。

 

しかし、当該施設の管理については、従業員の安全面を主眼に、以前から外部移管が検討されており、B氏の初回更新後、外部への移管が決定しました。そのため、B氏については次回の更新を行わず、雇用期間満了に伴う雇用関係終了としました。

 

するとB氏から、雇止めは無効であり、継続就労を求める旨を記載した書面が届いたという事案でした。

会社から「給料を返せ」の一言
継続就労を求める元従業員

 

A社から話を聞き、書面対応の段階から受任をしました。会社側として、施設管理の外部移管の必要性が高かったこと及び、元従業員の雇用期間満了に伴い代替職種を提案したこと等の事情が存在したことから、元従業員の要求には一切応じられない旨の回答を行いました。

 

そうしたところB氏は、雇止めは無効であるため、自身が現在も従業員たる地位を有することの確認及び、従業員たる地位に基づく賃金請求を内容とする、労働審判手続の申立てを行いました。

元従業員の言い分には理由がない旨を主張

労働審判期日において、労働審判委員会に対して上記の事情を説明し、B氏の言い分には理由がない旨を主張しました。

 

労働審判委員会からは、雇用期間満了に先立つ会社側の説明が不十分であったのではないかとして、和解に応じるよう説得を受けました。

 

しかし、B氏との間で和解条件が折り合わなかったため、労働審判委員会による審判が下されました。審判内容は、会社側はB氏に対して30万円を支払え、その他のB氏の請求は認めない、というものでした。

 

B氏の請求を認める審判ではなかったため、会社側として異議を出すことはしませんでした。B氏も異議を出さずに審判が確定したため、審判で命じられた金員をB氏に支払うことで本件は終了となりました。

 

労働審判手続は、労使間の紛争を原則的に3回の期日で解決しようとするものですので、大まかな事実認定をもとに、柔軟な解決方法が模索されます。そのため、本件のように申立人の請求は認めないが、相手方に幾許かの金銭支払いを求めるという審判もあり得るのです。

 

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    本連載は、「弁護士法人グリーンリーフ法律事務所」掲載の記事を転載・再編集したものです。

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