一方、高齢者医療は、1982年に施行された「老人保健法」に基づき、自己負担額は所得に関係なく一定でした。誰もが等しく医療を受けられるという利点がありましたが、過剰受診や、高齢者の療養入院によりベッドが埋まってしまい、急性期の病気やけがなどで、治療を急ぐべき人のベッドが足りなくなるなどの問題が発生しました。加えて、急激に進む高齢化による要介護人口の増加、核家族化の進行による介護者不在や介護の長期化などで、ますます社会保障費が増大することが懸念されていました。
そこで、介護福祉費をすべて公費で負担するのをやめ、民間に市場を開放し、社会全体で介護を担う仕組みをつくることにしたのです。
こうして2000年4月に施行された介護保険制度は、自治体が保険者(介護保険の運営者)となり、国や市区町村の公費に加え、40歳以上の国民のすべてで高齢者を支えようというシステムです。40歳以上の国民が被保険者になって保険料を納入することで財源を確保し、高齢者の要介護状態の軽減や悪化防止、医療との連携、ケアマネジャーによる介護支援サービスの提供、居宅サービス・施設サービスなどが利用できるようになったのです。2000年以前の、医療保険制度と老人福祉制度のゆがみを正し、再編したといえるでしょう。