都心のワンルームマンション投資は、今後も安定的か?
「老後の年金代わりに」「給料以外の安定した収入源に」などと、会社員の間でも人気が高まりつつある不動産投資。なかでも、ワンルームマンションは物件価格が1,000万円程度からと初心者や自己資金の少ない人には始めやすく、経験を積み、実績を作るうえで最適な投資対象といわれてきました。
しかし不動産投資は投資であると同時に、「賃貸ビジネス」という側面のあり、必ずしもすべての投資家が成功するとは限りません。またワンルームマンション投資、特有のリスクもあり、それを知っておかないと、投資をしてから後悔したり、期待外れになったりしかねません。なかには、経営が立ち行かなくなり、破綻するサラリーマン大家も存在します。
まずはワンルーム投資を始める前に、どのような仕組みの投資なのか見ていきましょう。
そもそもワンルームマンションは、単身者向けの25平方メートル前後の物件のことをいいます。物件価格が比較的安いのでローンを組みやすく、自己資金が少なくて済むことはメリットといえます。
立地がよければ需要が高いため、売りやすいことも魅力です。また都心部であれば若者が集まりやすく、近年は晩婚化が進んで独身男女の割合が増えているため、長期的に安定した需要が見込まれます。
来るべき高齢化社会で独居老人も増加傾向にありますし、外国人労働者が増えるだろうという予測もあります。また住居としてではなく仕事用やセカンドハウス用としても使われるため、今後も都心部に限れば、ワンルームマンションの需要は途切れない可能性が高いといえます。
また空室リスクが低いこともメリットの一つです。都心部であれば入居者ニーズは高く、また近隣に大学があったり、大きな企業があったりすれば、一定期間で入居者は入れ替わりますが、退去者が出てもすぐに入居者が見込めます。
単身者がターゲットになるので、入退去の頻度は高く、そのたびにクリーニングやリフォームなどの出費がありますが、賃貸需要の高いエリアでは敷金や礼金が入ってきます。空室リスクが低いことは、不動産投資において重要なことです。
空室、家賃下落、減価償却……破綻するきっかけ
しかし、どんな投資でも強みと弱みがあります。ワンルームマンション投資の場合、大きく3つの弱点があります。まず最大の弱点は家賃収入が0か100かという点です。
1棟マンションなら1部屋が空室になっても他の部屋でカバーできますが、ワンルームマンション1部屋だけの投資では、空室が出た瞬間に収入がゼロになってしまいます。一方でローンや管理費、修繕積立金などの支払いは空室になったとしても待ってくれません。多くの場合、つまり別の収入や蓄えから経費を支払えないと破綻することになるでしょう。
またワンルームマンションは建物割合が大きく、そのことが弱点となる場合があります。
マンション価格は土地価格と建物価格の合計です。ただしワンルームは土地面積が少ないため、積算評価における価格のほとんどが建物価格です。建物部分の資産価値は、時間の経過とともに目減りしていきます。このため土地の割合が大きいファミリータイプと比べると長期的には資産価値が減価しがちである点がデメリットと言えるかもしれません。
特に新築マンションの場合は、1人でも入居者が入るとその瞬間に中古マンションとなり「新築プレミアム」と呼ばれる価値がなくなってしまうため、エリアによっては価格が2割程度一気に下落してしまうのです。
また空室が発生しないようにするために、経年とともに家賃を下げざるを得なくなります。近隣のマンション物件の人気が低下するとワンルームマンションに投資しているオーナーとの間で入居者確保のために、「値下げ合戦」が起きるかもしれません。
そのときローンの返済に耐えられるかどうかも考えておかなければなりません。また家賃を下げない工夫も必要になってくるでしょう。たとえば中古のワンルームマンションを時代のニーズに合うようにリノベーションし、新築と同様の機能やデザイン性を持たせることで資産価値を上げれば、家賃を下げることもなく空室のリスクを防ぐことができるでしょう。
さらに「節税」の宣伝文句に惹かれて、不動産投資を検討している方もいると思いますが、この文句を何も理解せずにうのみにしてはいけません。
不動産投資では初年度に諸経費が発生します。また当面の間は、減価償却費が計上でできるので、会計上は赤字となり、所得税や住民税を減らすことも可能でしょう。
しかし建物の償却期間が過ぎてしまえば、税額は元に戻ります。節税効果が限定的なのも、ワンルームマンション投資の弱点のひとつです。
ワンルームマンション投資の宣伝文句として「節税になる」とよくいわれますが、その仕組みを理解すれば、それが「永遠に続くものではない」ことが理解できるでしょう。
このように失敗しないためには、ワンルームマンション投資の仕組みとリスクをよく理解してから始めることが賢明だと言えるのではないでしょうか。