来年、五輪というビッグイベントを控えた東京では不動産価格が上昇を続け、期待感から不動産投資を始める会社員が増えています。一方で、人口減少、少子高齢化など、不動産経営においてはネガティブなニュースが流れ、サラリーマン大家の間でも不安感が広がりつつあります。本記事では、不動産会社で資産コンサルタントとして活躍する髙木弘美氏が、昨今のマンション価格の推移から今度の不動産投資戦略についてを解説いただきました。

右肩上がりで推移、下落の兆候は今のところ見られず

昨今は老後資金問題が取りざたされ、会社員の間でも資産形成に対する関心が高まり、なかには不動産投資を始める方も多くいます。

 

そもそも不動産投資の成否は、収益物件をいかに安く購入し家賃収入を得た後に出口でどれだけ高く売却できるかにかかっていますが、「不動産バブル」という声も聞かれ、どうすべきか、不安感が広がっているのも事実です。

 

将来、売るタイミングを間違えないためには、常に不動産市況について把握しておくことが必要ですが、2019年までにマンション価格はどのように推移し、今後はどのようになりそうなのでしょうか。

 

2008年のリーマンショック後に底を打った国内の不動産価格は、2018年まで右肩上がりで推移してきました。マンション価格も同様です。東京23区の新築マンション平均価格は、2016年に6,629万円だったのが、翌年には7,000万円を突破し、2019年上半期は7,644万円でした。さらに新築マンションの値動きに引っ張られるように中古マンションの価格相場も上昇しています。

 

首都圏の中古マンションの価格は2016年4~6月に2,973万円だったのが、2019年4~6月は3,365万円になりました。実は「2019年に不動産価格は下落する」と予測されていました。「国立社会保障・人口問題研究所」の予測データでは、日本の世帯総数が2019年に5,307万世帯となり、ピークアウトしてそれ以降は減少の一途をたどるため、需給バランスが崩れて不動産価格が下がるというのです。

 

2019年10月には10%への消費増税、翌年には東京オリンピックを控えて「不動産価格がピークアウトする」というのも、その理由の一つのようです。「価格が下がる可能性があるので今のうちに売っておいたほうがいい」と営業する不動産会社があったり、「2019年は危険がいっぱいだから、2018年のうちに売ったほうがいい」とセミナーで話したりする専門家もいたのです。

 

ただ2019年9月時点では、そのような兆候は現れていません。東京23区の中古マンションの成約価格は、2018年10~12月よりも2019年1~3月は上昇しています。2019年4~6月は同年1~3月より微減ですが、ほぼ横ばいといっていいでしょう。

 

弾けそうで弾けない、東京の不動産バブル
弾けそうで弾けない、東京の不動産バブル

東京五輪が与える価格変動は限定的⁉

2020年夏は、いよいよ東京五輪です。ただ開催前には、施設の工事や建築などが終了し全般的に需要が減少することが懸念材料となります。2008年に五輪を開催した中国がそうだったように、景気が後退し「不動産価格が暴落するのではないか」という声もあるのです。一方で、以下のように影響は限定的と予測するシンクタンクもあります。

 

「2020年東京五輪後に日本経済が失速するとの懸念は根強いが、過去の夏季オリンピック開催国の状況をみる限り、五輪大会終了が主因となって景気が後退、もしくは減速する可能性は低い」(みずほ総合研究所のリポート「みずほインサイト」 2018年12月5日より)

 

しかしこのように相反する景気予測が飛び交うなか、そもそも実際に不動産投資をしている人たちにとって景気による価格変動は、それほど憂うべき問題なのでしょうか。不動産投資で購入するべきなのは、「立地が良い」「利便性が高い」「需要が途切れない」というリスクコントロールしやすく、投資対象として安定した物件です。つまり景気動向に影響を受けやすいような物件を選ばない限り、巷の景気予測論に右往左往せずにすむのです。

安く仕入れられるのは「買い」のタイミング

2019年9月時点では、不動産市況に大きな変化はありません。しかし「不動産価格が下落していく」とメディアなどで騒がれると、これから不動産投資を考えている人は「本当に始めていいのだろうか」と不安になるでしょう。また現在不動産投資を行っている人も「今、持っている物件をさっさと売却してしまったほうがいいのではないだろうか」と不安になるかもしれません。

 

しかし成功している投資家は「価格が下がっているということは、安く仕入れられるチャンス」「今こそ『買い』のタイミングだ」という一面もあります。ある有名な個人投資家は、リーマンショックの影響で不況のどん底にあった2011年のアメリカで、ピークから4割程度も下がっていたフロリダのコンドミニアムを購入しました。

 

周囲の人たちは「何と無謀な投資をするのか」と否定的でしたが、その後アメリカの経済は回復し、為替が大幅な円安になったことで購入した物件の価格は、円ベースで約2倍にまで上昇。その後も満室経営が続いて家賃収入が増え続けたそうです。このように不動産価格が下がったタイミングこそ“買い”のタイミングという考え方が成功する例もあります。

 

タイミングを見極めるには不動産価格の動向に加えて金利の動きも気になるところです。不動産投資において借り入れは非常に大きな要素となります。しかも現在は歴史的な低金利が続いています。これは不動産投資の好機とも言えるのではないでしょうか。今後の不動産価格の下落論に流され一喜一憂するよりも、低金利が続く現在の投資環境を利用できるうちに利用するという考え方が一番賢明で確実な方法なのかもしれません。

 

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    本連載は、リズム株式会社が発信する「不動産コラム」の記事を転載・再編集したものです。

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