そもそも「サブリース」の仕組みとは?
一般的な賃貸物件の場合、直接オーナーと入居者が賃貸契約を結びます。しかしサブリース方式では、オーナーと入居者の間に不動産管理会社(サブリースの運営を行う不動産会社)が入ることが特徴です。オーナーは入居者ではなくサブリース契約をした不動産管理会社と所有物件全体の賃貸契約を結び、不動産管理会社はオーナーから一括で借りた物件の入居者を募集し入居者との間で賃貸契約を結びます。
この仕組みは「又貸し」方式といったほうがイメージしやすいかもしれません。オーナーと管理会社の賃貸契約をマスターリース、そのマスターリースで借り入れた物件を管理会社が入居者に賃貸する契約をサブリースと呼びます。
このマスターリースとサブリースを組み合わせたモデルを一般に「サブリース」と呼んでいるのです。
サブリース契約の「メリットとデメリット」
サブリース契約ではオーナーには直接の賃借人である不動産管理会社から空室の有無にかかわらず毎月定額の家賃収入が支払われるのが一般的です。オーナーにとっては、空室の発生を恐れることなく安定収入を見込めるメリットがあります。
たとえば、家賃5万円で10室のマンションを運営する場合、満室であれば月50万円の家賃収入を得られますが、もし3部屋が空室だと毎月の収入は35万円です。仮に賃料収入の90%を受け取れるサブリース契約を結んでいれば、空室があったとしても月50万円×90%の月45万円の収入が安定して得られます。
サブリース契約において不動産管理会社は、自ら募集した入居者からの家賃の一部を運用手数料として収入にします。満室時の家賃収入の約80~90%をオーナーに支払い、残りを手数料として受け取るといった契約が一般的です。そのため、満室であればオーナー自身が得られたはずの手数料分の家賃収入が管理会社に渡ってしまい、その分収入が少なくなるという点についてはデメリットと言えるかもしれません。
また、サブリース契約であっても家賃が下がる可能性があることにも注意が必要です。契約更新のたびに家賃の見直しが行われ、市場の状況や物件の劣化状態によって下がり方も変わってきますので、サブリース契約を結ぶ場合にも物件選びが重要であると言えるでしょう。
さらに、賃貸物件の管理運営に必須となる定期的な修繕において、修繕費自体は必要経費となりますが、サブリース方式では修繕に関してオーナーにとって自由度が少なくなるケースもあります。物件購入の際には過去の修繕実績や費用、また今後の長期修繕計画についてもしっかりと確認しておくようにしましょう。
サブリースでは入居者の募集や物件の管理、トラブル対応なども不動産管理会社が行ってくれるため運用の手間がほとんどかかりません。オーナーの仕事は管理会社からのメールや書類をチェックする程度でしょう。尚、このメリットはサブリースだけでなく通常の賃貸管理のみの委託契約にも当てはまりますが、両者の大きな違いはその手数料にあると言えるでしょう。
オーナーに代わり入居者とのやり取りを全て引き受けるサブリースの方が、当然ながら手数料も高くなりますが、それは「安心」を買うための代価と言えます。オーナー自身に不動産管理のノウハウがあれば別ですが、そうでない場合は手数料を払ってでも信頼できるプロのサブリース会社の手を借りることには大きな意味があるでしょう。
トラブル事例「かぼちゃの馬車」事件とは?
近年のサブリース関連のトラブルで最も大きな事件は、女性専用シェアハウス「かぼちゃの馬車」でしょう。「かぼちゃの馬車」を運営していたスマートデイズ社は、高年収の会社員などに「利回り8~9%」といった高収益性をうたっていました。高額な融資を前提にシェアハウスを建てさせオーナーとサブリース契約を結ぶというものです。
融資を受けても利回りが8~9%もあるなら返済ができると考えて、多くの人が同社と契約しオーナーとなりました。しかしシェアハウスの集客力不足により空室が多発。やがてスマートデイズ社はオーナーに家賃収入を支払うことができなくなり2018年4月9日に民事再生法の適用を申請にいたります。オーナーには銀行から融資を受けたローンの残債だけが残ることになったのです。
その後オーナーたちが「被害者の会」を結成し、融資を実行した金融機関を相手取り裁判を起こします。同金融機関のトップは責任を取って退任しました。
サブリースを検討するときに最初に考えること
サブリース自体は家賃保証や物件管理の省力化などオーナーにとってメリットの多い制度ですが、まずオーナー自身が賃貸経営にどの程度関わりたいのか、どのような運用スタイルを目指すのかを明確にすることが必要になってきます。毎月手数料もかかりますので費用対効果についての判断も求められます。
資産形成を考える時は情報収集と意思決定は慎重に行うのが鉄則です。不動産投資の初心者やこれからスタートしたいと考えている人は、まず専門家である不動産会社に相談しながら自分に合った投資スタイルを見つけることから始めてみてはいかがでしょうか。