家庭を持てば、当然気になる「住まい」の話。特に注文住宅などの一軒家は、「中堅」と呼ばれる世代のサラリーマンにとって、いつかは掴み取りたい夢でもあります。しかし、妻にも勧められ、意気揚々と大企業の説明会に足を運んでみたところ、あまりの金額の高さに途方にくれる…。ちょっと待って、諦めるのは尚早かもしれません。大企業には、消費者が気づかず支払っている「ムダ金」が多く隠れているのです。「ローコスト住宅」を提供するフォーライフ株式会社・奧本健二代表取締役社長が解説します。

東京都「土地付き注文住宅」購入資金は5千万円超え

「いつかは一国一城の主になる!」これをモチベーションに日々仕事に打ち込んでいる人は多いはずです。それもできれば「都心」の「注文住宅」であれば理想的ではないでしょうか。都心であれば通勤・通学時間を短縮できますし、買い物やレジャーへ行くにも便利です。また、注文住宅であれば、家族の生活スタイルやデザインの好みに合わせた建物が実現できます。

 

ところがこれらの条件を満たすには、大きなハードルがあります。そう、それはお金です。住宅金融支援機構が行った「2016年度 フラット35利用者調査」によると、東京都の土地付き注文住宅の平均購入資金は5629万円でした。ほとんど人の人生において、これほど高い商品を買う機会はないはずです。それゆえ「家は人生でもっとも高額な買い物」といわれているのです。

 

これでも十分に高額ですが、一般的にはさらなる支払いが必要となります。なぜなら多くの人はローンを組んで住宅を買うので、利息も払わなければならないからです。

 

仮に5600万円を金利1%、返済期間35年、元利均等、ボーナス払いなし、という条件で借りたとしましょう。その場合の総返済額は6640万円(毎月の返済額は15万9000円)になります。利息として1000万円以上も上乗せされるのです。

 

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年収の「16倍」の金額にも……

 

サラリーマンの平均年収が約420万円(国税庁「平成28年分民間給与実態統計調査」)ですから、6600万円は約16倍。こんなに高額では一般的なサラリーマンでは手が出ないのは当たり前です。では、「都心」の「注文住宅」は、一般的なサラリーマンにとって夢のまた夢、決して手に入らないものなのでしょうか。

同質の家でも坪単価で「30万円」もの差額が発生する

ここで都心の建売住宅が高額になる理由を考えてみましょう。そもそも土地付き建売住宅の価格は、「土地代」と「建築費」によって決まります。土地代は駅に近く、形が正方形に近いほど高くなる傾向があります。一方で建物の建築費の根拠は、土地ほど明確ではありません。

 

建築費は建てる会社によってかなり差があります。多くの場合、大手企業になるほど高くなる。その理由としては、広告費や人件費などが上乗せされていることが挙げられるでしょう。

 

大手企業ほどテレビCMや住宅展示場などにお金を掛けます。「テレビはともかく住宅展示場にそんなにお金が掛かるのか」と思う人もいるかもしれませんが、住宅展示場の出展料の相場は年間3000万円以上です。さらに出展するには数千万円掛けて立派なモデルハウスを建てなければなりません。また、豪華なパンフレット代も決して安くはないでしょう。これらがすべてお客様の建築費に上乗せされているのです。

 

このような経費によって、たとえ同じような品質の家を建てたとしても坪単価30万円以上の差が出ることもあります。30万円ということは30坪の家なら900万円の差です。建物自体の品質が同等ならば、安い方を選ぶのが当然ながら賢い買い物といえます。

もっとも無駄なのは「下請け会社への費用」

注文住宅を建てる際の大体の費用をご存じでしょうか。大手ハウスメーカーの場合のおおよその坪単価は80万円前後になります。ローコスト住宅の場合は、大体坪単価40万円から50万円です。例えば、30坪の家を建てるとすると、大手ハウスメーカーは2400万円前後、ローコスト住宅ならば1400万円前後となります。

 

その差額は1000万円。それだけあれば高級車を2台買えますし、家族全員で世界旅行へも行けます。ほかにも「あれもできる」「これもできる」とワクワクしてしまう人も多いでしょう。

 

また、実際にはほとんどの人が住宅ローンを組んで家を建てます。1000万円を金利1%、元利均等、35年ローンで借りた場合、毎月の返済額は2万9000円です。毎月約3万円も家計に余裕があったらどんなことに利用できるでしょうか。それこそ車を買うこともできますし、子どもの教育プランもワンランクアップできるかもしれません。

 

数年前、私たちの会社へ転職してきた施工担当者は、数年前に大手ハウスメーカーで約4000万円かけて二世帯住宅を建てたそうです。彼が私たちの手掛ける家を見て最初に言った言葉がこれです。「ここの会社なら同じ家が2500万円で建てられたのですね……」彼は肩をがっくり落として、そうつぶやきました。

 

なぜ、メーカーの間でこんなにも価格差があるのでしょう。その理由には前述のように広告費があります。しかし、さらに大きいものがあります。それは下請け会社への支払いです。

 

多くの大手メーカーでは、工事現場で働く社員は現場監督くらいです。実際に建物を建てる大工さんや電気・水道・ガスなどの工事を行う職人さんはすべて下請けの会社を通じて来ています。つまり、大手メーカーの価格には、2つの会社を維持させるための経費が乗っているのです。一方でローコスト住宅を手掛ける会社は、下請け会社を通さず直接職人さんたちを手配して工事を行っています。だからリーズナブルな住宅を提供できるのです。

「規定のサイズなので」大手企業ならではの不親切

繰り返しになりますが、家が高くなる主な理由は、広告費や人件費などさまざまな経費が上乗せされているからです。特に大手企業になるほどその傾向は顕著です。大手だからこその目に見えない無駄な経費が発生しているのです。

 

先日おもしろい昔話を聞きました。かつてイギリスの船は、港に停泊していると1年に1インチずつ沈んだそうです。なぜなら船員が私物を少しずつ持ち込むからだそうです。多くの大手企業も同じような状況です。なにかはっきりしないけれど年々無駄なものが積み重なっていく――。その根拠として社員一人あたりの売上高があります。

 

ほとんどの大手ハウスメーカーの金額は一人あたり1億円以下になっています。一方で、中小規模の住宅会社では一人あたり1億5000万円を超えるところも珍しくありません。おそらくそれらの会社よりも大手のほうがいくらか給与は高いはずです。でも稼いでいない。大企業病としかいいようがありません。

 

大手ハウスメーカーの多くは、外壁材などを工場生産しています。正確に、早く、大量に生産するには効率的な方法ですが、一方でそれぞれの土地に柔軟に対応できないというデメリットも生まれます。部材を工場生産するということは、規格サイズのものしかありません。それゆえ、お客様からよくこのような話を聞きます。

 

「大手に設計をお願いしたところ、妙に無駄なスペースがありました。そんな場所はいらないから安くしてほしい、と依頼したら、これが規定のサイズなので変更できない、と言われました」

 

これでは好きな部材で好きなように建てられる、という注文住宅の醍醐味が味わえません。また、いらないスペースができる分だけ無駄なコストも掛かってしまいます。結局このお客様は私たちの会社へ相談に来て、大手が90㎡で設計した家を84㎡に効率よく縮小して建てました。もちろん、費用も安くなりました。

 

このような業者でも人気があるのは、知名度の高いブランドへの憧れがあるからではないでしょうか。

 

しかしながら私は、企業規模は小さければ小さいほどいいと思っているわけでもありません。ある程度の規模の会社で安定した仕事があるからこそ、質のいい職人さんが定着してくれるというものです。また、部材もある程度の量を仕入れることで、コストダウンが可能になります。つまり、質の高いローコスト住宅を供給するうえで一定以上の企業規模は必須といえるのです。

 

だからといって業界トップクラスの規模である必要はありません。例えば、年間着工棟数300棟程度の会社でも、部材の仕入れ価格を年間3万棟以上の業界トップと同等まで抑えている例もあります。年間300棟あれば交渉力によっては全国規模の会社と十分勝負できるのです。

大手に注文したほうがハイセンスな気もするが…

「それでも大手メーカーの住宅とローコスト住宅では品質は違うはず」そう思う人も多いでしょう。ところが、それは間違いです。

 

そもそも住宅の建築で使用する設備や建具のメーカーはそれほど多くはありません。たとえ商品自体にハウスメーカー名が入っていたとしてもそれはOEM(Original Equipment Manufacturing・・・製造メーカーが他社ブランドの製品を製造すること)で、製造自体はローコスト住宅が使用する部材と同じメーカーということが多々あります。したがって、大手メーカーの住宅とローコスト住宅で使用する部材の品質は、ほとんど同じということになります。

 

たしかに大手の家のほうが、ハイセンスで高い質感を持つように見えるかもしれません。それはオリジナルのデザインで発注していたり、同じメーカーのなかでも高グレードの部材を使用しているからです。しかし、違うのは見た目だけで中身は同じなので品質は変わりません。

 

また、耐震性や断熱性などの住宅性能も差がない、というのが実状です。これは法律や金融機関が一定以上の性能がない家は建てられないようにしているからです。

 

例えば、住宅のさまざまな基準を定めている建築基準法では、1981年に大地震でも倒壊しないことを目的として、必要な壁の量や筋交いの強度などを定めました。2000年には、地盤沈下などの対策のために建築前の地盤調査が事実上義務付けられ、くわえて構造体の強化を目的に補強金物の使用や壁の配置もルール化されました。

 

その結果、現在建てられるすべての住宅は、少なくとも震度6強程度の地震による力に対して倒壊、崩壊しない耐震性を持っています。この法律はいくらローコストな建物でも、住宅である限り適用されます(独立行政法人都市再生機構ホームページより)。

 

さらに断熱性に関しては、家を買う多くの人が利用する長期固定金利の住宅ローン「フラット35」で規定があり、住宅品質確保促進法(品確法)の断熱等性能等級2相当でないとローン審査が通らないことになっています。そのため、大手、中小問わずほとんどの住宅会社では、施主が何も言わなくてもこれ以上の断熱性能がある家を建てるようにしています。

 

品確法とは、住宅の品質確保と消費者保護を目的とした法律です。そのなかに住宅性能表示制度があり、これは耐震性、省エネ性(断熱等性能等級含む)のほかに劣化の軽減など、10分野の住宅性能を任意で第三者機関が評価するものです。

 

この制度の各基準は明確に公開されているので、施主がリクエストすればどの住宅会社でもクリアすることができます。例えば、耐震性の最高等級は「3」ですが、これをクリアする仕様で建てた家ならば、価格が高い家でも安い家でも同等の耐震性を持っているといえるのです。また、品確法では、建築した住宅会社に対して10年間の瑕疵(かし)担保責任を義務付けています。

 

これは建物を引き渡してから最低10年間は、基礎や柱などの構造部分と雨水の侵入に対して保証をしなければならない、というものです。これもすべての新築住宅に適用されます。要するに「高い家=特別に性能・アフターフォローの優れた家」ではないということです。

年収400万円で建てる 都心の注文住宅

年収400万円で建てる 都心の注文住宅

奧本 健二

幻冬舎メディアコンサルティング

お買い得な土地に賢く建てて最高のマイホームを手に入れる! 割安な土地を見抜くポイントと理想の家を建てる設計の秘訣を実績1000棟のプロが徹底解説! 家を建てるということは、多くの人にとって一生に一度のイベントであ…

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