神社を「タワーマンション」に…定期借地プロジェクトの実態

本記事では、不動産投資アドバイザーでCFPファイナンシャルプランナーの大林弘道氏の著書、『儲ける不動産ビジネス 7つの新規事業アイディア』より一部を抜粋し、投資をはじめとした不動産ビジネスをめぐる課題を解決するための具体的なアイデアを提案していきます。

定期借地権を設定、その「権利金」を収益とする

土地は保有していて、マンションを建てたいと思っているものの、建設資金はなし、借入もおこしたくないという場合に、よく等価交換という手法がとられます。デベロッパーや建設会社と共同事業でマンションを建築し、土地の価値と等価になる分だけ、完成したマンションの住戸を譲渡(土地と交換)してもらう手法です。

 

デベロッパーは残った住戸を一般向けに販売して収益を得ていきます。マンションの敷地は区分所有者全体での共有敷地となるため、もとの土地所有者は、実質土地を手放すことになります。先代からの土地を子どもに残しておきたいというような場合には不向きとなります。

 

保有している広めの土地があって、次世代のために土地を手放すわけにはいかないが、何かの有効活用を考えたいというような場合に、その土地に定期借地権を設定、その権利金を収益とするケースがあります。

 

その相手方、つまり権利金を支払い、土地を借りる事業者はもっぱらデベロッパーで、彼らは定期借地権付分譲マンション(定借マンション)を建設してエンドユーザーに販売していきます。

 

定期借地権は所有権ではなく、あくまでも借地権であり、50年(案件によっては60年、70年のものもある)で土地所有者に返還しなければならないため、分譲マンションの購入者は未来永劫ずっと住み(使い)続けることができません。ただ、それが都心の好立地で、割安な価格でマンションを取得できるのであれば魅力的です。50年も経てばいずれ建物は老朽化するし、次世代への承継資産として位置づけないのであれば、好立地で外観上もハイエンドなマンションに住めることは自身が50年にわたって享受する効用として悪くないのです。

意外に多い、定期借地権を活用した大型プロジェクト

このとき保有する土地が十分に広ければ、一部の土地にだけ定期借地権を設定、その対価(権利金)を活用して、残りの部分の土地に自らの建物を建設するということが可能です。建設資金をすべて定期借地権設定の権利金で賄えてしまえば、完成する建物はすべて自身の保有物件となります。

 

有名なところでは広尾の日本赤十字医療センターの建替えにこの手法が採用されました。土地の一部は三井不動産らが定期借地権を取得し、広尾ガーデンフォレストというハイグレード定借マンションが建設され、定期借地権設定の権利金を得た日赤の場合は、隣接の保有地に病院を再開発、病棟や施設を一新したのです。

 

この手法はフランス大使館やフィリピン大使館の建替えにも用いられました。広尾同様、この定期借地プロジェクトには大手デベロッパーが参画、ハイグレードの定借マンションが建設、分譲されていきました。いずれも、麻布や六本木といった都心の一等地、由緒ある場所であるので、定借マンションではあるものの、立地の良さと割安感も手伝って好評のうちに売れていったのです。

 

神社でも同じ手法がとられたことがあります。敷地内に定借タワーマンションを建築する計画です。ただし、これは物議を醸しました。歴史ある風景を侵食する行いであるとして周辺住民の反対運動にあったのです。神社側としては、境内の土地を定期借地として供出する、その対価によって本殿などを改築する計画です。建物の維持管理や、神社の運営にも費用がかかる中、氏子が減り、地域や町会で神社運営を支えていこうという文化も廃れた状況においては、一概に責められるものではないと考えられます。

 

このように定期借地権を活用したプロジェクトはいくつかありますが、それまでのものは、いずれも土地所有者が大使館、医療法人、神社といった、非課税の公益法人などであることが共通点でした。定期借地権は土地の50年の利用価値であり、場所によっては、これを設定する対価=権利金はとても高額となります。

 

大使館や医療法人、宗教法人は法人税等が非課税であるからこそ、このような定期借地プロジェクトが可能となっていたのです。通常の個人が定期借地の権利金を一度に受領してしまうと多額の所得税が課税されてしまうため、同様のプロジェクトは実現しにくかったのですが、個人ベースでもこの課税負担が小さくなるようであれば、十分に新たな展開が生まれるはずです。

 

[図表1]定期借地権活用の例
[図表1]定期借地権活用の例

スター・マイカ・アセット・パートナーズ株式会社代表
不動産投資アドバイザー
CFPファイナンシャルプランナー 

1967年生まれ、岐阜県出身。慶應義塾大学商学部卒業後、三井不動産グループや三菱地所グループを経て、現在はスター・マイカ・アセット・パートナーズ株式会社の代表を務める。不動産仲介や新築分譲戸建ての販売、リフォーム営業、オフィスや商業施設の管理運営、複合施設の開業コンサルに従事。不動産全般にかかわる多様な知識と経験をもつ。宅地建物取引士、ビル経営管理士など多数の資格を持つ。前著に『金融視点で考えるハイブリッド不動産投資法』『節税・年金・相続を考える人のディフェンシブ不動産投資』『資産運用・節税・相続のための新・不動産投資メソッド「じぶんリート®」』(いずれも幻冬舎ルネッサンス刊)がある。

著者紹介

連載新時代を切り開くビジネスアイデアとは? 儲かる「不動産投資」講座

本記事は、筆者の個人的な解釈、見解を踏まえて書かれたもので、情報提供を目的としたものです。各種法規、税制に照らして検証されたものではなく、記載の内容と実際とが異なる場合もございます。筆者ならびに当社関係各社は、これにより生じた損害について一切の責任を負いかねますのでご了承下さいますようお願い申し上げます。

儲ける不動産ビジネス 7つの新規事業アイデア

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大林 弘道

幻冬舎

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