日本の法制度は「入居者」に手厚い!?
日本で賃貸物件オーナーを苦しめているのは、広告料だけではありません。賃貸物件において、入居者(賃借人)に手厚いこの国の法制度も、多くの物件オーナーを悩ませているものの一つです。
第二次大戦後の混乱期で、住宅が不足し、国民の多くが貧しかった時代には、賃貸物件に住む人たちを手厚く保護することには、それなりの根拠があったでしょう。しかし、現在の家余りの時代に、その当時のままの入居者保護が続けられていることには、個人的には釈然としないものを感じます。
実際、私が所有するアパートでも、家賃を滞納する入居者がいました。当然、管理会社の人が何度も電話をかけたり、手紙を出したり、足を運んだりしましたが、一向に連絡が取れず、滞納が続きました。結局、四カ月分もの滞納となってしまいました。
弁護士に頼んで内容証明を送ったりする対応を続け、なんとか四カ月分のうち二カ月分は払ってもらい、以後、毎月分は払ってもらっていますが、二カ月分の滞納はそのまま続きました。
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「どうして連帯保証人に請求しないのだ」と思われる方もいらっしゃるかもしれませんが、実はこの入居者には連帯保証人をつけていなかったのです。というのも、入居審査の段階では、有名な上場企業に勤務しており身元も収入も安心できたので、連帯保証人をつけなくても大丈夫だと思ったのです。それは私の甘いところだったかもしれません。
ところが、後から分かったのですが、私のアパートに入居してしばらく経った後、その会社を辞めてしまっていたらしいのです。詳しい事情は分かりませんが、そこから収入が厳しくなって、家賃を滞納してしまったのでしょう。
しかし、これはあくまで推測でしかありません。なぜなら、管理会社も私も、その入居者に会ったり、電話で話したりといった直接の連絡は、ずっと取れていなかったからです。管理会社の人が何度も足を運んでドアをノックしても、反応がなければどうしようもありません。24時間張り込むわけにもいきませんし、ドアを壊して勝手に入ることもできません。
二カ月遅れながら毎月支払ってもらっているので、そのまま様子を見ていて、もし今後また滞納があったら、そのときは出て行ってもらう他ないと思っていたところ、幸いその入居者から退去の申し出がありました。あとは滞納分をどう払ってもらうかの交渉を残すだけとなり、ほっとしています。
強制退去には「裁判所の判決」が必要
しかし、「出て行ってもらう」と口で言うのは簡単ですが、実行するのは非常に大変です。まず、強制退去をさせるには、裁判所の判決が必要です。ところが、裁判所への訴えができるのは、一般的には三カ月の家賃滞納があってからということになっています。
滞納が一カ月や二カ月の段階でも訴えることはできるのですが、それくらいの滞納期間の場合、強制退去は認められないのが普通です。そこで、三カ月の滞納があり、その間、(連絡がつけば)十分な話し合いや督促をして、それでも払ってもらえなければ、初めて明け渡し請求訴訟を起こすことになります。
明け渡し命令が裁判所から出されれば、入居者は自主的に退去するか、強制執行で出て行ってもらうことになりますが、いずれにしても時間がかかります。だいたい、提訴から強制執行ができるようになるまで六カ月程度かかります。
つまり、滞納が始まってから九カ月です。その後、強制退去となれば後始末も必要です。そういったもろもろを含めると、完全に元に戻すためには、1年近くの時間が必要です。さらに、弁護士費用、強制退去後の片付け費用など数十万円のお金が必要です。
それは入居者に請求できますが、もともとお金がなくて家賃を滞納する人ですから、請求しても支払ってもらえる可能性はほぼなく、オーナーの持ち出しとなります。賃料が払ってもらえない上にさらに持ち出し……、「泣きっ面に蜂」とは、まさにこのことではないでしょうか。しかし、これが日本における、賃貸物件オーナーの現状なのです。