森ビル株式会社は22日、『虎ノ門・麻布台地区第一種市街地再開発事業』(以下、虎ノ門・麻布台プロジェクト)の始動を改めて発表した。先立って5日に着工が公表されていた。目玉は『あべのハルカス』(300m)を超え、日本一の高さ(325m)となる超高層ビル(A街区・複合棟)である。54階から64階の高層階はレジデンスとなっており、「いくらになるのか? 誰が住むのか?」と話題だが、富裕層の注目は、隣のB-1街区、B-2街区に建設されるタワーマンションに集まっている。

タワマンを使った「節税」は未だに人気?

富裕層には企業オーナーや地主など「お金」に詳しい人物が多く、ファイナンスにも詳しい。港区のタワーマンションと聞くと、豪奢なイメージが先行するが、相続税の節税という現実的で泥臭い目的で購入されることも多い。いわゆる「タワマン節税」である。

 

高層階ほど、相続税評価額と市場価格の差が出やすい
高層階ほど、相続税評価額と市場価格の差が出やすい

 

基本的に、現金よりも不動産のほうが相続税評価の面では有利となる(不動産業者のセールストークでよく使われるので、知っている人も多いだろう)が、タワマンの場合、土地割合に対して居住者が多く、評価の際に、時価で固定資産税を計算する建物割合を多くできるため、相続税評価額を低くしやすい。また、高層階のほうが市場価格は高額であるのに対し、相続税評価額が低層階とほぼ変わらないため(税制改正前は同じであった)、その差を税メリットと考えるのである。

 

この節税法が問題視され、近年、高層階ほど税率が高くなる法律が施行されたが、それでもメリットはあると言われている。

日本一の高さの超高層ビルにデメリットが?

さて、虎ノ門・麻布台プロジェクトの話に戻るが、富裕層がB-1街区、B-2街区のタワマンに注目するのはなぜか?

 

実は、日本一の高さが話題となっているA街区(64階/325m)は居住フロアが高層階のみのため、居住利用のみのタワマンと比較すると、相続税評価額がそれなりとなる可能性が否定できない。一方で、B-1街区(64階/262m)、B-2街区(54階/237m)に建設予定の住居棟に関しては、いわゆる通常のタワーマンションと捉えられ、こちらは低層階から高層階まで居住フロアとなるため、高層階は特に評価額と市場価格の乖離が期待できると見られているのだ。

 

2023年3月に竣工予定ということで、実際にどうなるかは、そのときの税制も含めてわからないが、港区虎ノ門五丁目、麻布台一丁目、六本木三丁目というエリアの優位性に加え、オフィス地区やインターナショナルスクールの建設も予定されており、賃貸需要も高く、資産価値は落ちにくいと予測される。

 

相続税評価額を低くできても、資産としての価値も低くなれば、それはただの損であり、購入する意味は全くないが、虎ノ門・麻布台プロジェクトのような都心の一等地であれば、まず資産価値は落ちにくいだろう。富裕層は、こういった一等地を有利な方法で購入し、相続税対策をしながらインカムゲイン、キャピタルゲインを得て、また豊かになる。不公平のように感じるが、富裕層以外の人々も「お金」について学ぶようにならなければ、貧富の差は広がる一方である。

 

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