金価格が高騰している。5日、取引価格(税込小売価格/田中貴金属)は1グラムあたり5,751円と今年最高値を更新した。その後は続落し、10日は5,537円まで下がったが、いまだ高値圏であることに変わりはない。「安全資産」とも呼ばれ、他の金融資産のリスクが高まると価格が上昇する傾向のある金には、投資商品として他にはない特徴がある。本記事では、その特徴から金投資の様々な可能性について検証する。

金の売買には「消費税」がかかる

米中貿易摩擦やブレグジットなど、先行き不透明感が漂う(その割にNYダウは高いが)世界経済への不安から、安全資産としての「金」の需要が高まり、価格が高騰している。

 

大恐慌になると、「ただの紙切れ」となってしまうリスクのある金融資産(株券、債券だけでなく、ドルや円などのマネーも)とは違い、現物である「金」は、歴史的にみても価値が落ちないと考える人が多いワケだ。

 

実際、「金」を投資商品としてみると、明らかに他とは違う特徴を有している。例えば、日本で金の売買を行うと、そこには消費税がかかる。これは他の金融資産への投資にはない特徴である。

消費税8%から10%で「儲ける」ことはできるのか?

金を購入するときは消費税込みの価格を支払い、売却するときは消費税分を上乗せした価格を手に入れる。消費税の場合、課税事業者に該当しなければ(詳細は省くが、課税売上高1,000万円が基準となる)売却の際の消費税分は益税となる。

 

ということは、増税前の消費税8%のときに購入し、10%になってから売却すれば、それだけで2%分は得をしていることになる。

 

それならば、絶対に買ったほうが得なのかというと、そうとも言い切れない。金の取引には手数料がそれなりにかかるし、現状価格も高値圏にあるということで、消費税分の得があったとしても、手数料と価値の下落で損をする可能性はもちろんある。

 

本日の田中貴金属の取引価格で計算してみよう。金価格が変わらないと仮定して、消費税が上昇したときに、売買でどのくらいの利益が出せるかを計算してみる。

 

税込小売価格は1グラムあたり5,622円なので、20グラム購入すると、

 

5,622円/グラム × 20グラム = 112,440円 である。

 

税込買取価格は1グラムあたり5,537円なので、税抜きにすると、

 

5,537円/グラム ÷ 1.08 ≒ 5,127円/グラム である。

 

購入した20グラムを売却するときに消費税10%をのせると、

 

5,127円/グラム × 20グラム × 1.10 = 112,794円 となり、

 

売却価格112,794円 − 購入価格112,440円 = 354円 が利益となる。

 

手数料のためか、売却価格のほうが購入価格よりも安くなるため、金の取引価格が変わらなければ、消費税が8%から10%となっても、ほとんど利益が出ないことがわかる。

金には「インカムゲイン」がない

また、他の金融資産と比較したとき、金の大きな特徴のひとつとして、「インカムゲインがない」ことがあげられる。利子や配当がないので、持っているだけで安定して継続的に現金を受け取ることができる仕組みにはなっていないのだ(それどころか、金を安全に管理するために費用が発生する可能性もある)。

 

売却したときにキャピタルゲイン(売却益)を得られる可能性はあるが、他の投資商品と比較すると、これは金の大きな欠点とも言える。

 

とはいえ、「金」に積極的に投資する人というのは、「他の金融資産がまとめて暴落してしまうようなリセッション」を想定していることも多い。もちろん、先行き不透明感が漂う現状では、そういう極端な不況がないとは言い切れないので、自身のポートフォリオに数%組み込んでおくのは間違った判断ではないだろう。

金融危機のときに「自分だけ助かる」ことはできるか?

大きな金融危機が発生し、株券や債券などが「紙切れ」と化したとき、現物であり価値が落ちないとされる「金」を所有していれば、自分は助かる……どころか大儲けできると考えている人もいるかもしれない。

 

金価格は「青天井」で上昇するのか?
金価格は「青天井」で上昇するのか?

 

では、リーマンショック時に金価格はどのように動いたのだろうか。田中貴金属の税抜取引価格を月次平均でみていくと、リーマンショック前月の2008年8月、1グラムあたり2,983円、リーマンショックの起こった2008年9月は2,859円と微減している。その後をみると、10月に2,665円、11月に2,398円、12月に2,433円と、その年は「金価格も下がっている」ことがわかる。

 

そこから、2009年〜2011年にかけて、「有事に備えなくては」という意識が高まった結果からか徐々に上昇し、ドル建てでは2011年9月に1トロイオンスあたり1776.25ドルという高値をつけた(このとき円建てでは1グラムあたり、4,434円。1ドル=77.88円と円高が進んでおり、購入するには割安感はあった)。このように、リーマンショック直後には、金価格も同時に下がっていたことがわかる。

 

リーマンショック時に大きく儲けたのはCDS(クレジット・デフォルト・スワップ)という債券の債務不履行時に保証金を受け取ることができる契約を、大量に購入していた投資家たちだ。これは、もし債務不履行が起きなければ、保証料を払い続けるものであるため、大量に購入するのは一種の投機(ギャンブル)でもあった。

 

市場をみていると、「これは絶対におかしい。続くわけはない」という状況が現れるときがある。史上空前の高値圏で推移する現在のNYダウもそうかもしれない。世の中には色々な金融商品や金融派生商品があるので、「この商品は、どのような状況になったら儲かるか?」から逆算して、市場にくすぶる時限爆弾に賭けておくこともできないことはない。しかし、その答えが「金」かというと、リーマンショックの例をみても、そうではない可能性のほうが高い。

 

金融危機時に儲けられる金融商品がある以上(もちろんそれを目的に作られたという名目にはなっていないことが多いだろうが)、金融資産のすべてが「紙切れ」になるという状況は想定しにくい。たとえ、世界の金融資産の価値が1日で暴落したとしても、人間の数、資源の数、物の数自体に変化はないので、単なる金融という仕組みのアノマリーに過ぎないとも言える。

 

ただ、誰かが(どこかの国や企業かもしれないが)そのなかで隙をついて、大きな資産を吸い上げる瞬間というのはこれからもあるだろう。そのときに自身の資産を守るためにも、普段から情報を得ておくことの重要性は言うまでもない。

 

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