老後資金をシュミレーションしてみると……
ところで、あなたは毎月いくらで生活できていますか? また、その生活レベルは自身が90歳まで生きているとして、ストレスなく生活が続けられる金額ですか?
このように質問をされた時に、明確な金額をすぐに答えられる方は、ごく一部しかいないでしょう。総務省統計局の家計調査よると、独身世帯は約16万円/月、夫婦2人世帯では約28万円/月が平均的な支出だそうです。
次に現在の40歳くらいの方が、将来もらえる厚生年金を10万円(国民年金の配偶者4万円と仮定)とすると、独身世帯では毎月6万円が不足、夫婦世帯だと14万円も不足します。
また、年金受給年齢の引き上げにより、この世代が年金を受給できる年齢を70歳とした場合、年金を受け取れる70歳までに、独身では年間192万円の不足で、夫婦世帯だと336万円が不足という計算になります。
企業では積極的に再雇用を行うようになっていますが、65歳まで働いた方はいくらあれば安心して仕事をやめ、90歳まで過ごせるのかを計算してみます。
独身世帯:2,400万円
夫婦2人世帯:5,880万円
一方、仮に55歳でのセミリタイアをする場合に、必要な老後資金について計算してみましょう。
独身世帯:4,320万円
夫婦2人世帯:9,240万円
いかがでしょうか? ここまでで、退職までに上記の金額を貯蓄して、引退するというのはかなり非現実的な気がした方も多いのではないでしょうか。では、本当にセミリタイアはムリなのでしょうか?
「不動産投資でセミリタイア」の実現性を考える
筆者は老後資金の構築に不動産投資を推奨しているので、不動産投資を行い、セミリタイアが実現するか、考えていきます。上記の例では、夫婦2人だけの世帯の場合は年間336万円(28万円×12ヵ月)があればセミリタイアできることがわかります。
不動産投資だけをやって、本業を退職するためには税引き後年間400万円くらいのキャッシュフローが生み出せれば安心できそうです。そのための最短の方法は、やはり、大きな借り入れをして、一棟物件投資にチャレンジすることです。
過去にお手伝いをした会社員の兼業大家の例から、一棟物件投資であれば1億円の物件で年間100万円の収益を目指すことができるように思います。
もちろん、どんな物件を持つか、どれくらいの自己資金投入金額かにもよっても変化はあります。4億円以上の借り入れをして、しっかりと運用を行うことで、不動産投資のみでセミリタイアを考えることは十分に可能になってくるでしょう。
しかし、この方法でネックになるのは、現在の融資状況では、どんなに年収が高額でもすぐに大きな借り入れは難しいため、5年~10年単位での拡大を目指すことになります。また、自己資金としてもスタート時点で1,000万~2,000万円は必要ですから、この方法のみでセミリタイアできる方はとても限られることがわかります。
一方、区分マンション投資は一棟投資物件よりスタートは比較的に簡単です。自己資金も少なく、年収も400万円代から借り入れをしてのチャレンジ可能です。しかし、毎月のキャッシュフローはほとんど生み出さないものと思ってください。区分マンション投資のメリットは一般的には長く所有することで発揮されます。
まずは、区分マンションを購入することで、生命保険やがん保険の代替となります。現在毎月保険に支払っている数万円の現金を、他の貯蓄や、投資に回すことができるようになります。また、ローンに関しては、自分がセミリタイアしたい年齢に合わせて完済することで、区分マンション投資は年利3~5%の投資商品にすることが出来ます。
投資用マンションのローン返済は35年~と長期に渡りますが、国土交通省によるとRCマンションのこれまでの平均解体年数は60年越えになっているので、完済後の物件はまだまだ利用価値の高い物件である可能性が高いです。
従って、区分マンション投資の長期運用を視野に入れることができれば、ローン返済期間=仕事をしている期間はキャッシュフローを生まないが、引退後に1室当たり毎月数万円の利益は望むことが出きることが魅力です。そのため、実際に不動産投資をスタートする年齢も若ければその分の利益が大きくなるのです。
不動産収入だけを頼りにしたセミリタイアはNG
とはいえ、個人的には不動産投資の収入だけでセミリタイアすることは、おすすめすることはしていません。なぜならば、投資・資産運用は複数の商品でリスク分散するべきもので、当然不動産投資にもいくつかのリスクがあります。
■家賃の下落リスク
まず「その土地で大きな再開発がある」等のビッグイベントがある場合などを除いて、築年数が経過すると家賃は下落します。30年も経過すれば新築時と比較して下落幅は最大50%ということもあり得ます。もちろん、エリアにこだわることで回避できる場合もあるかもしれません。
■天災リスク
また天災によって、不動産自体が滅失する可能性があります。今後の人生設計をするわけですから、万が一ということもリスクとして考えておくべきでしょう。地震保険、火災保険等にしっかりと加入することで最悪の事態は避けられることもあるので、保険はケチらずにしっかりと検討しましょう。
保険とは別でこのような天災の回避策として、所有する物件のエリアを分けて所有することも認識しておきましょう。
■金利上昇リスク
さらに史上最低金利といわれている今、現在の投資用融資の金利は1.6%~4%くらいですが、融資の返済期間中に金利が上昇するリスクは十分にあるといえます。たとえば、資産運用をすべて「借り入れをした」不動産のみで構成すると、金利上昇は大打撃になります。
このリスクは、他の金融投資商品と組み合わせて持つことで回避できると考えられます。今は預金金利も、国債利回りもかなり低いです。「現金をあずけていてもだめですよ」という風潮に対して、借りる金利は住宅ローンをはじめ、投資用のローンも過去最低水準で借り入れできています。
もし借入金利が上昇するという状況になった場合は、逆に国債をはじめ、金融機関による運用金利が上昇しているはずですから、現金運用するという手段をとれるようになります。このように、金利は表裏一体の側面があります。金利が低いときには借り入れをする投資を行い、金利が高くなったら、別の投資方法に重点を置くというのが、いつ変化するかわからない金利上昇リスクの対策といえます。
■修繕リスク
物件の設備が壊れたなど突発的な修繕費用が発生する場合があります。修繕費用については、事前に入念な調べをすることで、大方予想することができます。購入前に必ず調査をし、資金を確保しておきましょう。
自分のポートフォリオを作り、夢の実現へ
投資・資産形成において、どの投資商品にもメリット・デメリットがあるので、1つの投資に集中して成功することは非常にハードルが高いです。短期的に目標達成するのか、長期的に目標を達成するのか、また、その人によって必要な金額(目標)も違えば、年齢、現状の資産も違うことから、投資ごとに考えられるリスクが違います。
色々と考えてしまうと、「投資はわからない。むずかしい」となってしまいがちですが、まずは、3つステップを考えてみてください。
1.今の自分が毎月いくら使っているのかを把握する
2.(収入の増減も含めて)これからどう働いていくのか
3.とりあえず自分にできそうな投資はなにか
資産運用は、まず自分に一番身近なものからスタートしてみることが大切です。貯金、株、投資信託、不動産投資、金など、とりあえず興味があること、ずっと続けられるものを見つけましょう。1つスタートしたら、必ず次にチャレンジするものを見つけます。
筆者がポートフォリオに不動産投資を組み込むことをおすすめする理由は、他の投資商品と違って、借入という他人資本が活用できるからです。長期・分散投資は様々なリスクを解決する有効な手段です。自分の好きな分野から、ちょっとずつ幅を広げながら、自身が退職するときを一つの目安として運用を開始しましょう。
まとめ
不動産投資だけでのセミリタイアは少しハードルは高いですが、できないわけではありません。しかし、リスクヘッジという観点では、やはり不動産投資だけではなく、他の金融商品と組み合わせることが大切です。バランスのいい自分なりのポートフォリオを構築して、夢を実現させてください。