太平洋岸の広域で震度7、最大34mの津波を予想
「南海トラフ」とは静岡県の駿河湾から九州東方沖まで続く深さ約4,000メートルの海底のくぼみ(トラフ)。海側の岩盤が陸側の岩盤の下に沈み込む境界にあり、過去約100~150年の間隔でマグニチュード(M)8前後の地震が繰り返し起きてきました。東日本大震災と同規模レベルの地震で、太平洋側の大陸プレートと海洋プレートの動きによって生じます。
高い津波予想もされている大変危険な地震で、地震による揺れの被害よりも、火災や津波による被害のほうが多く想定されています。
静岡から西側の被害が大きく、沿岸部はほぼ震度7、津波は最大34mと予想され、地震と津波によって多くの被害者、多くの建物損壊が見込まれています。ちなみに東日本大震災の最大津波は福島県富岡町の21.1m、陸地を走る津波の到達最高地点(遡上高)が40mを超える場所もありました。
静岡、愛知、三重、和歌山、徳島、高知、大分、宮崎など、太平洋に面したエリアでアパート経営をされている方は、ある程度の覚悟が必要でしょう。
関東に関しては伊豆の下田で大きな津波は止まりますが、相模湾は10m級の津波被害が想定されています。東京都内を見てみると、東京湾内は囲まれており横浜で震度6弱、東京都内は震度5強となり、最大約2.5mの津波予想となります。
東京湾にはいくつも水門があり、巨大地震発生時には水門を閉じることで、都内への浸水を阻みます。防潮堤は4.6m~8.0mの高さがあり、地震発生から津波到達まで1時間以上あるため、水門を閉じることができ、都内の津波被害想定はほぼ皆無と言えるでしょう。
「東京は地震が来るから怖い」
「東京にも津波がくる」
そんな風に誤解されていた方も多いのではないでしょうか。
もちろん地震が来たら、帰宅難民や食料・燃料問題、液状化(荒川区や江戸川区)など、様々な問題は抱えることになりますが、東海地域や西日本に比べると安全と言えます。それでも東京は活断層があるから大きな地震が起こりやすいと考えている方もいますが、確証のない情報に踊らされているだけです。
地震はプレート型の地震と活断層の活動により断層にずれが生じて発生する地震とに分かれます。そのなかで横揺れになりやすいのがプレート型、縦揺れになりやすいのが活断層型です。
中部近畿地方に断層が集中しているので、建物崩壊の可能性の高い直下型は東京よりも警戒すべき地域はたくさんあります。そもそも世界の地震の8割が集中する日本では、小さな地震も含めると年間2,000回以上あります。関東には関東で一番大きな立川断層という活断層がありますが、直下型は広範囲には広がらないこと、そして最近の研究で数千年に一度しか発生しないため、切迫性はないと発表されました。こうしたことから、直下型やプレート型の地震にも東京はある程度強いことが想定できます。
「木造」と「RC造」…津波と火災に強いのは?
大阪や名古屋の不動産投資に比べても東京での不動産投資は安全性が高いと考えられますが、震度6以上の地震や津波が来た時に、木造住宅(アパート)と鉄筋コンクリート造(RC造)とでは大きな違いがあります。不動産投資をする以上、建物が崩壊してしまう場合や、地震による火事で大正時代の関東大震災のように建物が全焼してしまっては意味がありません。
アパートとマンションで比較をしてみます。まず津波被害の違いですが、以下、(財)日本住宅・木材技術センターの調べをご紹介します。
■津波被害について
– 木造住宅では、基礎、土台を残すのみという壊滅的な被害を受けていた。
– RC造、S造でも、低層建築物では、倒壊は免れているものの、全壊と見做さざるをえない、手ひどい被害を外壁、 開口部に受けていた。
– 木造建築物でも、大断面集成材の建物では、手ひどい被 害を受けながらも倒壊を免れているものがあった。
■津波波力
– 津波波圧到達高さ2.6m程度で、木造住宅の設計用風圧 力と同程度、3m程度で2 2倍程度と推定された 倍程度と推定された。
– 大断面木造では、外壁を破られることで、津波波力を受け難い形状となり、倒壊を免れたと推定された。
つまり、木造住宅は耐久力的に2.6m程の津波でも倒壊する可能性があるということです。一方、RC造に関しては窓や開口部等の崩壊はあっても建物自体の倒壊は見られませんでした。この時点でも地震対策に強いのはマンションであることがわかります。
次に火災被害の違いについてです。消防庁によると、木造住宅が全焼するまでの時間はなんと約20分となっています。これは初期消火をしなかった場合の時間ですが、地震発生時に火事が発生しても消防車が間に合わない可能性も高く、木造住宅はほぼ全焼するということになります。
地震の時間帯は食事時だとしたらかなりの被害になるでしょう。対してマンションの場合は通気性の悪さも影響して、火が回るのが非常に遅いです。さらにコンクリート壁が焼けるより早く窓ガラスが割れます。その際フラッシュオーバーと呼ばれる状態になり、急速に煙は増えますので、早めの避難が重要です。全焼するには1000度の高熱で2時間以上燃え続けるという条件でようやくコンクリートが溶け始めます。今の消防整備状況でマンションが2時間以上燃え続けるという環境は考えにくいことから、全焼する可能性はかなり低くなるということです。ここでもマンションに軍配が上がりました。
結局、震災リスクにも強い「都心」の不動産
ここまでで見えてきたのは、どこでどんな不動産投資をすれば少しでも「地震・津波リスク」と向き合えるのかということです。地震、津波に一番強いのはどのような角度で見たとしても東京都心部のマンションということになります。さらに津波の影響を考えると、2階以上の物件であれば都内の最高津波到達点も超えてくるのでより安心できるでしょう。
最後に重要なのが地震保険です。新耐震基準のマンションは震度7でも建物が倒壊しない想定の作りではありますが、火災が発生する場合があります。コンクリート造であれば、全焼は考えにくいですが、部屋のなかには壁紙を含め、家具など燃えるものはあります。こういった被害があった場合には100万~300万円程度の修繕費用がかかる場合もあるので、地震保険に加入することをおすすめします。