自身に向いている不動産投資商品とは?
一般の投資家ができる不動産投資として、「マンション投資」「アパート経営」「旅館業経営」の3つについて、具体的に見ていきましょう。
まず「マンション投資」に向いているのは、下記のようなタイプの人です。
1.年収400万円以上の公務員・サラリーマン
理由:融資審査の関係上、自営業よりお勤めの方は審査が通りやすい。
2.初めて不動産投資を行う
理由:価格帯が1,000万円台からあり、金額に対する抵抗感が少ない。
3.自己資金が少ない
理由:満額融資をしてくれる金融機関が多くあるため、自己資金が少なくても始めることができる。
4.借り入れが少ない(自宅や車やカードなど)
理由:融資枠が大きくなるので、複数物件に投資できる可能性が高まる。
5.20代~40代(35年以上のローンが組める)
理由:月々の収支が-になるケースが多く、ローン年数が長く組めない年代の方には不向き。
6.利益より安定性や安全性を重視したい
理由:前述の通り、都心部が多く、利回りは必然的に低いが、賃貸需要は高い為、安定感はあるが、インカムゲイン(収益)で儲かることはあまりない。長期的な運用で元を取ることは可能。
次に「アパート経営」に向いているのは、下記のようなタイプの人です。
1.年収700万円以上の公務員・サラリーマン
理由:500万円~でも可能だが、売買金額が大きいため年収が高い方に向いている。
2.学園エリアの駅前の土地を所有している地主
理由:土地から買うアパート経営もあるが、都心部などの土地代金が高いエリアだと利回りが悪くなる。
3.自己資金が潤沢
理由:自己資金がなくてもできるアパート経営はあるが、マンション投資に比べると大規模な修繕などまとまった資金が必要になり、出費が大きくなるケースが多いため。
4.建物や土地の活用を思いのままにしたい
理由:大手の管理会社だとできないことも多いが、他に所有者がいないため、自身の意見を取り入れた注文住宅のように、自由度が高く、オリジナリティを出すことが可能。
5.年金対策よりも、毎月の即収入を求めている
理由:マンション投資に比べると、利回りが高いことが多く、融資の条件によっては、毎月プラスの収支になり、即収入として受け取れるケースが多い
なお、木造アパートなどは特に家賃の下落を考慮する必要があります。長期的という考え方よりは短期的な収入源と考える側面があります。
そして「旅館業経営」には、下記のような方が向いているといえます。
1.年収が低くても、年収が高くてもできる
理由:自分が住んでいた家や、空き家などを活用することもでき、自己所有の物件でも旅館業は始められるケースがある。新規で購入する物件でも始められるケースもある。
2.ある程度の自己資金がある
理由:宿泊者のために、ベッドや、テレビなどの家具や設備(200万円程度)を先に設置する必要などがあるため。
3.マンション投資よりもアパート経営よりも収益を望む
理由:稼働率の高いエリアだと、マンション投資の2~3倍の収益を生み出すケースが多い。
4.空室で困っているオーナー
理由:自己所有の物件を旅館業経営に変更することができることで、収益の改善を図れるため。
5.旅館業の申請業務や宿泊者管理の知識がない、初心者
理由:専門的な知識や対応力(語学力)なども重要になるが、専門業者に任せることができるため、初心者の方でも旅館業経営は可能。
複数の商品を組み合わせる、不動産投資法とは?
上記のように不動産投資には、それぞれ向き・不向きがあります。しかし向いている商品が多いという方は、どうすれば良いのでしょうか? そのような場合、筆者は、複数の商品を組み合わせる手法をお話ししています。それは長期的な視点と短期的な視点を融合するという考え方です。
長期的視点で見た場合、比較的マンション投資が向いております。RC造(鉄筋コンクリート造)であるため、耐久力的に見ても今の新築マンションなら100年はもつといわれています。そのような観点から金融機関によっては「45年ローン」という商品が生まれたりしているくらいです。
短期的視点では二つの考え方があります。短期的に収益を得る方法と短期的に所有して、築浅のうちに売却益を狙う方法です。
短期的に収益を得るものとしては、新築アパート経営と旅館業が適しています。理由は前述の通り、アパートは立地がマンションより駅から遠いケースが多く、新築時は高い賃料で借手も多く存在しますが、古くなるにつれてメンテナンス費用がかかり、賃料の下落、売却の厳しさ(特に融資が付きにくくなる)などの理由から、長期的運用に向いていないという側面があります。
旅館業は、オリンピック効果を中心に都心部は特に需要が旺盛で、今後も収益が見込めるとは期待できますが、毎日のように宿泊者が変わることから賃貸経営よりも綺麗に保つことが重要で、将来的な修繕などを考えていくと、短期的な利益を取ることに向いているといえるでしょう。
このようにマンション投資やアパート経営、旅館業経営のように、目的が違うものを組み合わせることで、短期的な投資の利益で長期的な投資物件を繰り上げ返済し、長期的投資の物件を早くから収入源に変えていくやり方が存在します。
このような意味合いでは、立地の良い物件を購入して、短期的に売却益を狙うというのも地価が極端に上昇しているエリアでは有効です。ただし、こうしたバランス投資は購入していく順番を間違えてしまうと、融資審査の都合で計画が頓挫する場合や、利益を生み出さない場合があるので、注意が必要です。
「頭金づくり」を最優先する、不動産投資の進め方
それぞれの投資商品の良いところを享受するために、一番重要なのは「始める順番」です。意外かもしれまんが、理想は誰にでも始めることができる旅館業経営を一番に始めることです。
外国人観光客の増加という時代の流れに乗り収益を得て、それを元手にマンション投資かアパート投資を始める――。マンション投資やアパート経営を始めるには、年収水準に到達していない方でも、頭金を用意できるようになれば、投資が可能になるケースがあります。もちろん最初からマンション投資やアパート経営ができる属性であれば、旅館業は後からでもスタートできるので、まずは一部屋からという考え方でもいいでしょう。
理想的な不動産投資の流れを、ひとつ記してみます。あくまで一例です。フルローンが厳しい時代ですが、頭金を作れば、下記のような流れも可能になります。
1.旅館業の検討→可能なら旅館業を始めてから自己資金を作る
2.マンション経営に頭金を多く入れて始める(収支が良くなるため)
3.さらに自己資金を貯めて、一棟マンションかビルを建設する
4.旅館業の物件か、マンション投資の物件を売却して、その売却益で一棟マンションの繰り上げ返済をする or もう一棟購入を検討する
まとめ
不動産投資の手法を、色々な側面が見てきましたが、不動産投資は、あくまでも資産運用の手法のひとつであり、他の投資をまったくしなくて良いというものではありません。自身の資産のポートフォリオ(資産構成)をまずは明確にして、将来的なポートフォリオをどうしていきたいのか、計画を立て、実行していくことが重要です。資産は大きく分けて「貨幣性資産」「流動的資産」「固定資産」の3つに分けることができます。
貨幣性資産とは現金や預金のように、現金などの貨幣そのものや、回収できる額が決まっているような資産のことをいい、いわゆる「現金」などになります。こちらはないと生きていけない資本主義国家では、当然必要になります。
流動的資産というものは株やFXなど、日々流動性が激しく、大きく増えることもあれば大きく減ることもあるような流動的な資産を指します。
固定資産とは、土地や建物のようなもので、長期間保有して使用することや、投資を目的として人やテナントに貸すなどの不動産投資のような商品を指します。
特に日本人は預金主義の国民性からか、これらを均等に分散投資することを苦手とする方が多いようです。しかし物価の高騰や消費増税などの影響で、現金の貨幣価値は目減りしていく可能性があり、現金だけに頼る資産形成はリスクを伴います。
しかしFXや不動産投資ばかりして、手元に現金がなくなってしまっている方も多く見られるのも事実です。何事もやりすぎは良くありません。ローンの枠があるからといって、パンパンになるまで、融資を引っ張るやり方も非常に危険です。自身のスピードで、バランスのいいポートフォリオの構築を目指していってください。